自分の生活費を稼ぐためにアルバイトをしようと思ったのだが、子供の雇用は禁止されていると
いう恐るべき現実。
「労働基準法に喧嘩を売らざるを得ない」
「国家権力には勝てる気がしない」
「年齢を詐称せざるを得ない」
「身長的にできる気がしない」
はやてにことごとく切り捨てられて、もう諦めざるを得ない。
しかし筋力は落ちても知識はあるので、はやての家庭教師っぽいことをして少しでも恩返しする
ことに。
「『かぷかぷ笑う』ってどうやるんだろうね」
「え? うーん……水の中で口をこう、ぱくぱくさせてやな」
「ぱくぱく」
「ぱくぱく」
やってて思ったけど、全く勉強になってない。
「なんでやろ。不思議やね」
「不思議というか何と言うか。どうしてなのやら」
「いつも変な振り方してくるからやと思うよ?」
すみません。
てな感じな居候ライフに四苦八苦していたのだが、さすがに子供に金銭面でお世話されるのは精
神的にとても辛い。
はやては「同じ子供やのに何言うとんのぉ」とか言って全然気にしていない様子だけど、先述の
通り頭は大人だ。
昔はアルバイトだってしてたんだ。お金の重みは身に沁みて分かっている。情けなさすぎて泣け
てくる。
「別にええやんか。住み込みのホームヘルパー、って思ーとってくれれば」
「でもなぁ」
「車椅子のも楽やし、お皿も洗ってくれるし。感謝しとるんよ? 私、ずっと一人やってん」
「……おばあちゃんがいる。何かこう、超優しいおばあちゃんがいる」
「誰がおばあちゃんや」
子供に「おばあちゃん」は拙かったか、さすがにむっくりとふくれるはやてだった。
「とにかく! 何か引け目に感じるんですよ。そう、引け目! ん? 目って引っ張れるの?」
「引っ張れるんとちゃう? ほら、あの、ペンチみたいなの差し込めば」
「……ごめん、想像したら普通にグロかった」
「……あー、あかん、私も。目の奥が何か痛い」
二人で想像して悶える。
ひとしきり悶え終わると、はやては少し考える素振りをした。
「んー、近くに融通の利くところはあらへんし……せや!」
「何? 何か案ある?」
「私な、知っとんの。待遇よくて子供でも仕事できて、しかもここから近いとこ!」
何だその好条件。最初から言ってくれよ。
「でもな、そこ1年単位とかで動いとるから、もしかしたら……ずっと行かなアカンかも」
「大丈夫じゃね。そこに決めた! 地図ちょーだい。明日行ってみる」
「ホンマ!? せやったらせやったら、お掃除とか洗濯とか家事一般やと思うけど大丈夫!?」
「どんとこい」
「なら今から1年、よろしくお願いします! 報酬は三食と宿で!」
「ん! 俺、頑張るよ!」
「門限は七時、必ず夕飯は一緒に食べること! ええな、約束やで!」
「よっしゃぁああ! みなぎってきたぜぇぇぇえ!」
「あれ?」
「♪」