「オリーシュ・ヴィ・ブリタニアの名において命ずる!」
「シグナム、そこの鏡取って」
「今夜のコロッケは超豪華カニクリームコロッケにノアアッ-!」
という経緯があって、ギアス能力によって夕飯のクリームコロッケの調理を強制されている次第。小麦粉から作るとかめんどい。
「チャーハン以外の物を作る羽目になってしまいました」
「そこに作り方書いてあるから。ほな、勝手にアレンジとかせんよーに」
「よし。ならプロっぽく、味付けは全てフィーリングでやってみよう」
「その場合、夕食は一人だけ片栗粉のみになるから覚悟するよーに」
ねりワサビを取り出したところ、はやてが脅迫してきた。仕方がないのでちゃんと作ろう。
「ったく。で、学校どうやったん?」
「帰りに主人公+αに会ったのが印象に残った。授業はやっぱ強くてニューゲームな気分で苦痛」
「我慢しー。ぼさっと聞いとったら、意外と足元すくわれるで?」
「あと、小学生の効果音はやっぱり『デュクシ! デュクシ!』だった」
「うわぁ」
はやては何とも言えない顔で天を仰いだ。お前さんも小学生だろうに。
「あと給食が割かし美味い。ので、牛乳を持って帰ってきた。はやてのもあるよ」
「ホンマ!? 飲んでええの?」
「イッキ以外不可」
「アルハラ乙」
とか言って、冷蔵庫に向かうはやて。
とそこに、タオルを肩にかけたヴィータの姿が。
「お。あんだ、帰ってたのか」
「夕飯はおいしいクリームコロッケだけど、ヴィータだけはうまい棒」
「やめろッ! ……ん? はやて、それ何?」
「んー? ビンに入ってるけど、普通の牛乳やよ?」
「残った一本、飲むならあげる……や、普通の牛乳だから。飲んでも耳から出てきたりしないから」
「信用なんねー」
「遣る瀬無し」
でもはやてが安全を保証すると、腰に手を当てて一気に飲みはじめた。
「らめれおじゃるううう! ギニュー隊長ゴクゴクしちゃらめれおじゃるううううう!!」
ヴィータの吹き出した牛乳を頭から被ったのは、きっと自業自得なんだと思う。
「――それで? それで? その後どしたん?」
「効果音が『デュクシ!』だけだとあまりにも語彙が貧弱なので、『メメタァ!』だけ教えた」
「いきなりコアな……」
「高難易度から入ると後が楽なんだ。明日は叫び声に『ポオオオオウ!』を広めたいと思う」
で、夕飯。
しきりにはやてが学校での出来事を聞いてくるので、話しながら熱いコロッケ食ってます。
守護騎士の皆さんも興味があるみたいで、俺の話なのに珍しく耳を傾けていた。
「不思議だ。普段なら無視られると思うのだが」
「日頃の行いが悪いな。お前の話を聞いていると大抵ろくな目にあわん」
「あたしもさっきやられた」
「またか」
最初に反論して他の皆をうんうんと頷かせたザッフィー、珍しく人間フォームである。
初めて食べるメニューに興味があったみたいだ。実は誰よりも食が進んでいる。
「はやても最近はしゃぐようになったし、暇あったら顔出したら?」
「ん? んー……ええわ。階段とかで大変やし」
「シャマル先生、車椅子に二足歩行させる魔法とかないの?」
「えっと、人に見られたらマズいんじゃ……」
「むむ、くそ。出っ歯の亀太郎どもめ」
「それちゃう。公衆の面前や」
とかやりとりしながら、楽しい夕食の時間が過ぎていった。
「ヴィータ」
「ん? あんだよ」
「牛乳あるよ。パックのがほら。飲んでみ」
「……」
「ホントに、ホントに旨いって! 一気に行くとなお旨い! だからさぁ、さぁさぁさぁ!」
まだ何もしてないのに、追いかけてきて逃げざるを得ない。
「ふははは。牛乳ハンマー如きに捕まる我ではないわ」
「てめぇッ!」
しかし結局捕まって、しこたま殴られた。
「メメタァ! メメタァ! ……あかんなぁ、通常打撃音はもっと簡単でないと……」
見てる暇があったら、助けてほしいと思う俺でした。