小学校(普通の公立)に行ってきたが、とりわけ何も報告することが無くて困る。どうせなら家
で待ってるはやてに、面白い土産話を持って帰りたかったのに。
 しかし収穫はあった。とりあえず給食の牛乳。先生に頼み込んで特別に貰ってきた(ビンは明日
返す予定)。
 俺の分まで持って帰ってきたから2本ある。小学校でお馴染みのビン入りだ、はやても喜ぶこと
間違いなし。

「そんなわけで帰り道におつかいがてらスーパーに歩いていたのだ」

 ふと見ると向かい側から三人の少女が歩いてきた。
 ウホッ! いい原作キャラ……

「そう思ってると突然その少女たちは、僕の見ている目の前でスカートのホックをはずしはじめたのだ!」
「外しませんッ!」

 ご存知アリサさんとすずかさんに挟まれたなのはが、律儀に反応してくれた。後の大魔王様も、
今はまだいい子だなぁ。

「よかったのかホイホイ突っ込んで。俺は悪魔だろうが魔王だろうが弄くり回す男なんだぜ?」
「……?」

 自分のこととはわからないらしいなのはさんでした。

「ついに出たわね……話は聞いてるわよ」
「風の噂の又三郎。はじめましてこんにちは、形式的にとはいえついに脱ニートしたオリ主です」
「おりしゅ?」

 すずかさんに通じないあたり、実はマイナーな言葉なのかもしれない。オリ主。

「ようツンデレ」
「……こっち見んなっ。誰がツンデレよ」
「くぎゅボイスはツンデレと相場が決まってる。という訳で……あれ? デレる相手居なくね?」

 ツンデレの定義を根底から揺さぶられて、何が何だかわからなくなってきた。

「……えっと、見ての通り、こんな感じの人で」
「噂のあの人です。いつも人生を楽しく過ごしてます」
「初めまして、月村すずかです」
「アリサ・バニングスよ」

 名前を交換して、ぺこりと一礼。

「噂の内容が気になるところですが」
「あ、あはは……学校、決めたんだ」
「相談乗ってくれてありがと。いつまでも待つのはアレなので、結局近くの公立にしました」
「え? あれ、家の方向が……」
「ちょうどお使いで。夕食の材料をちょこちょこと」

 手に持ってた小銭入れを見せると、なのはは納得したような顔になった。

「あの……はやてちゃんって、車椅子で茶髪の子ですよね?」
「です。知ってるの?」
「図書館で見かけるんです。なのはちゃんから聞いて、もしかしてって思ってたんですけど」
「遊んでやって下さい。そんなに外に出ない子なので、話しかけてくれると嬉しいです」
「喜んで!」

 月村さん家のすずかさんはええ子やなぁ。そういえば、アニメでもはやての車椅子押してたよう
な気がするぞ。

「あ。でも中学からだったら、ひょっとして編入するかも。二人して」
「ふうん。でも確か、試験かなり難し……何してるのよ。それ何?」
「残念ながらツンデレの知り合いは居なかったので、珍しさのあまり会話を録音してる」
「すんなっ!」

 アリサさんは久々に弄くり甲斐がありそうだ。こういうストレートっぽさがあるのが普通の反応
だよな。

「最近の八神家は耐性がついてしまったみたいで困る」
「一緒に住んでればそれは……」
「駄目だ。そこは『久々にワロタ』と返すのが正解」
「え、えっと……?」

 反応に困るなのはたちだった。ネタのレベルが高すぎたか。

「ここはやはり初歩、ツナギのホックを外すところから始めざるを得ない。ネタ講習を開始」
「え、遠慮します……」
「嫌な予感が……」
「バレたのか! 講習と称した実習で、冒頭通りスカートのホックを外させる完璧な作戦が!」

 と言った途端、アリサが顔を真っ赤にして追いかけてきたので逃げよう。





「おかえり……どっ、どうしたのっ、汗ダラダラやん!」
「釘宮病が感染して、目眩と高熱で死にそうなんだ」
「明らかに走った後だな。主、心配は無用のようです」
「そ、そっか。ならええんやけど……全く、初日からはしゃぎすぎやよ? 今日はコロッケやから、
 楽しみにしといてな!」
「キャベツはどうした」

 ずるずるとザッフィーに引きずってもらう俺だった。



(続く)


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