そのころのギンガさん7
そのあまりの気迫に、ギンガは思わず生唾を飲み込んだ。
圧倒的なプレッシャーであった。ゆらりと立ちあがり、今は目の前で微動だにしない、スターズ
分隊長高町なのは。
実妹スバルの上司であり、ギンガ自身出向先としてお世話になる機動六課の幹部。それがまさか、
自分が相見えんとしていた「なのなのプロ」であったとは。
「おかしいなぁ……私、どうして真似されちゃってるのかな? …………心外、なの」
しかし、臆するわけにはいかない。ここで退いてはいけないのだ。
真のなのなのをマスターするために。
そしてひいてはモテるために。
「まっ……真似なんて、してません、なの! これは正真正銘、私の身につけたものなの!」
唖然としている周囲(なのは以外)の面々に構わず、ギンガは正面から言いきった。その姿を見
て、なのはは思う。
それ、昔のタイトルコールの時の私の口癖なの。
つまり、極大砲撃の味も知らない若造が、私の仕事取ろうとしてるの。
冗談じゃないの。私の仕事取るななの。
「ひっ……人の真似して、恥ずかしいと思わないのッ!? だいたい何の為にそんな話し方するの!」
「ま、真似なんかじゃないです、なの! 私は、これが可愛いって聞いたから……」
「動機が不純! 不純すぎるの! そんなんで私のお仕事取らないでほしいの!」
「い、いいじゃないですか! なのはさんには居るんでしょう、ユーノさんとかユーノさんとか!」
うっ、と珍しく言葉に詰まるなのは。何気に頬が赤い。
「ゆ……ゆ、ユーノ君は関係ないのっ!」
「大アリなのっ! どうせそのなのなの力で、ユーノさん虜にしたに決まってるの!」
「わ、訳わかんないのっ!」
「証拠だってあるのっ! ほら、そこのフェイトさんです、なの!」
「え、わたし?」
呆然と見ていたところに突然話を向けられて、驚きギンガを見るフェイト。
そこに投げかけられた言葉は、彼女の心の傷をざっくりと抉る一言だった。
「まだ彼氏いないじゃないですか! それもきっと、なのなの口調をマスターしない所為に違いないの!」
「盛り上がってまいりました」
「盛り上がりすぎて訳が分からんぞ」
ビデオを回し続けるヴィータと、冷ややかに突っ込むザフィーラだった。