そのころのギンガさん5



「どうしたのはやて、面白そうな顔して……何かあったの?」
「ん? ああ、これな。もうすぐ、ちょっと楽しいことが起こりそうなんよ」

 途中でぱったりと出くわしたフェイトを加え、ギンガと挨拶を交換した後に、はやて・ギンガの
一行はオフィス内通路を真っ直ぐに歩いた。
 これから我らが部隊長の興もため、贄となるとも知らないなのなの初心者――ギンガ・ナカジマ。
何も知らずにはやての後ろについて歩き、未だ見ぬ「なのなのプロフェッショナル」との出会いに
胸を膨らませているばかりである。
 シャリオから習ったなのなの口調マスター法、その予習はまだ完了していない。
 彼女によればレッスン1〜4の四部構成になっていたらしいが、どう考えても時間が足りないと
ギンガは途中で気づいた。いまぐだぐだと思い悩むよりも、なのなのプロの力を間近で見、今後の
習得に活かした方が効率がよさそうだとギンガは思った。
 そういうことには気付くのに、シャリオに騙されているとまだ分からない辺りがなんとも言えな
いところである。

「フェイトちゃんも楽しめると思うんやけど」
「本当? ……あ、でも、午後はシグナムと久しぶりの模擬戦が……」
「大丈夫や。時間のかかるじゃあらへんし……と、着いたわ」

 広い広いオフィス内の移動が終わり、はやてが立ち止ったのは一つのドアの前。
 出撃待機室である。
 屋上にあるヘリポート、その真下に位置するこの部屋は、いつでも出撃できる状態でオフィス内
に残る隊員たちの部屋である。
 もちろん、今は出動要請その他は出ていない。完全に空き部屋の筈だ。

「あの……八神部隊長。今、この部屋は空きのはずじゃあ……」
「せやから、ここに呼んどいたんよ。ちょっと待つかも知れへんから、くつろいどってなー、って」

 そう言って、はやては扉を叩く。

「入ってええー?」
「うん、大丈夫だよー」

 この声って。
 ギンガは思った。扉の中から聞こえてきた声は、彼女にとってよく聞き覚えのあるものだった。
 聞き間違いでなければ、それは。

「ほな、入るで」

 部屋の中、そこに居たのは――。





 続く。



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