「まずロコンを捕まえて、炎の石でキュウコンにして皆でもふもふするべき」

 ポケモン世界での今後の計画を立てるはやて。

「断る」

 それをとりあえず却下する俺。

「さあコーヒーを淹れますよ」
「なんでやー! 可愛いやろキュウコン! こんこんこん!」
「ヒヤシンスが何だって?」
「球根ちゃう。キュウコンや」
「いやそれはいいんだけど、炎の石の在庫数にもよるでしょ。石不足でブースターに進化不可とかなったら、シャマル先生死んじゃう」
「あー、せやなぁ。石がデパートに売っとるかもまだ分からんしな、金銀仕様なら」
「いやまぁ一番厄介なのはイーブイ進化させない派のシグナムなんだけどね。赤緑仕様なら」

 うだうだうだと話しながら、久しぶりのコーヒータイム。時刻は真夜中で、現在の担当ははやての時間だ。仕事は昼に
なのはからフェイトに引き継がれていたが、その間俺は向こうでの行動の調査……という体面でヴィータたちに土産話を
させられていた。
 夕方から夜になってそれもようやく一段落したけど、今日はもう疲れたから店じまいだわ。という気持ち。もちろん新
人たちとも最初に挨拶をしたっきりで、それからずっと顔を合わせていない。

「その挨拶やけど、スバルたちの目の前でいきなりヴィータを投げ飛ばしたのはマズかったんちゃう?」
「あれは仕方なかったんだって……リイン妹が俺見ていきなり『せ……せがた三四郎……!』って言いやがるから……」

 そして当の自己紹介だったけど、案の定というか何というか、混沌とした展開になりました。
 自業自得だというのは分かっているんです。でも悪いのはあれでして。勝手に反応してしまうこの身体が悪いんでして。

「おかげで名前は言えずじまいやなぁ。ヴィータはノリノリで投げられたのに、新人らはネタが分からんうえに唖然としとるし」
「せがた三四郎が通じないとか」
「残念やけどフェイトちゃんにも通じへんと思う」
「ええぇ……あ、そういえばここゲーム機は置いてないの? どうせいつもの面子でやってると思ってたけど」
「当直を何だと思っとるのか」
「コーヒータイム」
「……まあ、作業終わったらそうなるんやけど」

 釈然としない様子ではやてはカップに口をつけ、遅れて俺も一口含む。

「ふぅ」
「ふいー」

 飲み込んで息を吐き出したタイミングが被った。
 お互い顔を見合わせて、思わずぷっと噴きだす。

「なはは。……ああ、そういえば、向こうではコーヒーも飲む間もなかったん? レッドさんとの連戦で」
「そうそう。時間がなかったのもそうだし、あと道具袋にその用意もしてなかったのです。久しぶりだけどうまいわ」
「なるほろ。……ふふー。さて、ここにポッキーさんが有ります」
「ああ、チョコレートとかすごい久しぶりだわ。ちょっとくれよ」
「日本語は難しいので、関西弁で言うてみ」

 はやてが俺のキャラに合わないことを吹っかけてきて困る。

「……Open!」
「グリコやないとこのCMやし言語からして違うし、もうどこから突っ込んだらええやら」
「Openだゾイ!」
「とりあえず関西弁が馬鹿にされとるのだけは分かった」

 はやてはポッキーの持ち手の部分だけを差し出した。これだと味のない劣化プリッツに過ぎないため、仕方なくチョコ部
分をねだることにする。

「仕方あらへんなぁ。ほれ、食べれ」
「いやいや、チョコ部分をくれるのはいいけどそこは。ポッキーが。ポッキーが鼻に」
「インド人は右に」
「え、機動六課にインド人いるの? もしかしてヨガフレイムとか使える?」
「するする。手足も超伸びるで」
「ダルビッシュさんですか」
「ダルシムさんです」
「そうか……これはもうその人と結託して、ザンギエフ先生を徹底的に苛めぬくしか!」
「これだからサマーソルト習得者は」
「ソニックブームはいつまでたっても撃てないんですけどね」
「ヤァ! ヤァ!」
「やめてください」

 器用にカップからコーヒーをこぼさないようバランスを取りながら、スト2チックな声とともに百烈脚らしき技を繰り出す
はやてだった。

「ぱんつ見えますよ」
「やかましいわ」

 微妙に顔の紅いはやてにたくさん小パンチ撃たれた。受けた掌がちょっと痛かった。通常攻撃で削られるのは格ゲーとして
どういう仕様なんだろう。

「HPも減らされたことだし、もう寝る」
「あ。じゃあわたしもちょっと休むわ。寝はせんけど……上掛け、上掛けと」
「ひとつしかないんですけど。さっきヴィータたちにパクられたじゃん」
「ここはあれや。地球人を外に」
「うるせえ地球人」

 地球人地球人と言いながら取り合いになった。結局共有した。喋ったぶん喉が渇いただけだった。






「フェイトフェイトフェイト! 新人に浅黒で手足が伸びて火を噴くインド人の隠しキャラが来るって聞いたんだけどどこ!?」
「えっ……ええっ、そ、そうなの!?」

 困惑するフェイトだった。



(続く)



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