なんか例の科学者さん対策とかで、単独で動かないようにとグレアムじいちゃんが。
 でもいま借りぐらしのスカリエッティさんに出てこられても。次の映画もう公開してるし今更感が。

「ええと、あれだ。コクリコ坂は燃えているか」
「コクリコ違いにも程があるよね」
「よく知ってるな。シリーズやりこんだ人ですか?」
「布教した張本人がどうしてそういうこと言えるの」
「うわはは。それはそうとして、ナッパさんや」
「……勝手に人を上裸のスキンヘッドさんにしないでほしいんだけど。なあに?」
「なんでここにいんの? 海鳴の方だと思ってた」
「お目付け役だよっ。ひとりで居ちゃダメって言われてるでしょ?」

 ミッドチルダに八神家で一時的に借りることにしていた控え室。
 休みはここか八神家でということらしいので、こっちは結界でも張ってあるのかと思いきや。

「それもあるけど、ただでさえけーとくんの場合はどこ行っちゃうかわからないんだし」

 単なる監視らしいのにやる気を見せながらなのはは言う。その横で俺は部屋に置いてある本をつらつらと読んでいたところだ。
 帰ってきてさあ新人たちに何を仕込もうかと思っていたのだが、六課の方は朝から夜まで訓練があるらしいし残念ながら俺にも学校がある。
 それでもちょうど明日が休みということで、明日六課内をうろうろするため前日には現地入りしておいたのだ。まあ広い部屋を占領してごろごろしながら、ついでに掃除でもしてやるかーという動機もある。もう夜だし、寝る前に軽く。

「もうちょっとでシャマル先生も来るって言ってたよ。3人で夜食に何か作ろうよ」
「そうするか。ていうか俺そんなに重要人物だったの。もしかしてスカリーさんに今も監視されてたりするの? ひゃっはークワトロさん見てるー?」
「夜10時のテンションとは思えないんだけど……」
「時差ボケみたいなもんだ。向こうではレッドさんに負けまくっててあんまし騒ぐ機会もなかったし。はぐりんたちも大人しかった」
「へえ……あ、もしかして疲れてたの? 今朝新人たちにも紹介したんだけど、まずかったかな……でも訓練に来てもらうのはもう少し先だし……」
「大丈夫でしょ。あいつら結構のり気だったよ」
「……メタル狩りに協力的なはぐれメタルって、今でもちょっと信じ難いんだけど」
「何かを悟ったんだろ。だいぶ前に3人そろって『そういう生き方も……あるのかもしれねえな……』って顔してた」
「どんな顔なの……」

 どうやら想像できないらしく、なのはは何とも言えない表情をした。

「……あっ。けーとくん、その、さっき言ってたレッドさんに負け続けた件について、ちょっと思ったんだけど」
「何かね」
「レッドさんのポケモンたち、メタル狩りしてますます強さに磨きがかかっていったから勝てなかったんじゃあ……」

 あっ。

「その発想でいくと、今レッドさんの手持ちのポケモンってとんでもない強さになってるんじゃない……? ゴールドさんたちは勝てるのかなあ?」
「……俺にだって……分からないことぐらい……ある」
「都合が悪くなるとすぐキバヤシ化するの止めようよ……けーとくん、たまにどうでもいいところで抜けてるよね。えいえい」

 なのはは俺の腕に手を伸ばした。
 かと思うとおもむろに軽くつねって、ちょっかいをかけてきた。
 遊ぼう、遊ぼう。
 という感じ。

「やめてくれ。俺まだパンチ一発で腕もってかれたくない」
「まだナッパ扱いされてたの……!?」
「ナッパさんが嫌ですか。代替案はパラッパラッパーやクッパさんをはじめ、梅干し食べてスッパマンまで豊富な品ぞろえでお待ちしております」
「女の子に提示する要素がかけらも見当たらないよ! そのラインナップぜんぜん統一性ないし!」
「ラインナッパだと!?」

 怒られた。

「なのはも夜10時のテンションじゃないじゃないよねこれ」
「けーとくんがそんなんだからだよ……聞いたよ、シャッハさんに追っかけまわされた話。他所でもこんなだと、そのうち磔にされちゃうよ?」
「それは困る。まあ磔はないにしても、これ以上あの教会にちょっかいかけると衆道院送りにされるからやらないことにしてる」
「えっ、あそこって修道院あるんだ……あれ? 修道院ってそういう罰ゲーム的な場所だっけ。修行する場所だから、逆につまみ出されるんじゃない?」
「いや、衆道院だから放り込まれるので合ってる」
「……?」

 なんだか分かってない様子なので、そこらの紙に漢字を書いて差し上げた。
 はたかれた。

「解せぬ」
「解せぬ、じゃないよ! ……も、もー! もー!」
「ミルク」
「ミルタンクにきのみ食べさせてる場合じゃないから! 何でもかんでもポケモンに直結させるの禁止!」
「きっちり乗ってるじゃないですか」
「うぐぐ……こ、この人本当タチ悪すぎるよ……!」
「楽しいからいいんだ。なのはが楽しくないなら止めるけど」
「……べ、別に、イヤじゃないけど……こういうことしてる間は、なんだか子供に戻ってるような気がするし」
「たたた楽しくなんてないんだからね! かかか勘違いしないでよね!」
「そ、そんなことも言ってないでしょお! もう!」

 日本語は難しいなあと思う俺だった。





(続く)



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