両手に翠屋のロゴ入りビニール袋をぶら下げて、八神家に無事帰還したヴィータ。
 五体満足で帰ってきたことを驚きつつ喜びつつ、さっそく桃子さん特製のプリンを皆でぱくつき
ながら報告会。内容は主に、戦闘の経過から帰還までの流れについて。

「……で、釈放か。よく無事に済んだものだ」
「はぁ……優しいんですね、なのはちゃんって」
「こればっかりはアイツに感謝だ。補完計画がなかったら手足引きちぎられてたと思う」
「首から下が砲撃で吹っ飛んでいたのは確実だな」

 
本人が聞いたらぶんぶん首を横に振りそうな台詞だが、もうこれが八神家の常識になっているの
で致し方なし。

「そんでザフィーラ、シャマル、プリンマスターの捜索はどうやったん?」
「……見つかりませんでした。可能性のある場所は全て潰したのですが……」

 日中あの野郎を探し回ったザフィーラとシャマルだったが、結局のところその努力が功を奏する
ことはなかった。
 さらわれたのか。いやいや無理だろう、はぐメタ三匹ごととか神業すぎる。とか考えてみたのだ
が、答えは出ない。護衛の三匹が強力すぎるうえ、そもそもさらっていく理由がこれといって思い
つかないのだ。
 ヴィータのようにすごろくやら何やらで遊んでいる可能性もあるが、その手の施設はザフィーラ
がもう探しているのでどうも可能性が低い、護衛のおかげで身に危険が及ぶことは考えにくいが、
今まで連絡が皆無なので心配だ。

「コーヒー淹れましょっか」

 しばらく皆で知恵を絞っているとシャマルが言った。
 頭が回らなくなってきたので、ちょうどいいとばかりに一服つく。ヴィータは苦味がアレなので
、牛乳と砂糖でカフェオレに。

「ブラック無糖でプリンが美味い!」
「プリン状態!」
「ヘブン状態!」
「プリウマ状態!」
「かっ、カフェオレで悪かったなっ!」

 振ったはやて自身、こうまでノリがいいとは思っていなかったりする。

「ま、天使様と悪魔様から保証されとるし。平穏無事におると思うけどな」
「というよりあの子なら、何があっても何だかんだで安全そうです」
「今ごろドラクエ3の女勇者見つけて追っかけてたりして」
「というか、プリン美味しいなぁ。翠屋のやったっけ」
「うん。アイツのもこんな味なのか……って。プリンの話してる場合じゃねー」

 いつのまにか普通の雑談になっているのに気付き、反省する。

「コア持ちなら探知魔法に引っ掛かるのですが……とりあえず、明日も捜索は続けてみます」
「お願いなー」
「気を付けろ。今回の一件で管理局に我らの存在はバレたかもわからん」
「むしろ海鳴を警戒してくれるなら、あっちの世界のオリーシュ捜索はやりやすそうじゃね?」
「転移魔法さえバレなければな。個人転送で行けるのが幸いだったか」

 皆してカップを傾けるのでした。
 で、しばし。

「じゃあ今日は私が、グラタンとスープ作ってきますねっ」
「ならば、試食役を決めようか。シャマルの料理は、まだ一定確率で舌が死ぬ」
「とりあえずドッグフード食えるザフィーラが適任だな!」
「だが断る」
「あー……シャマル、頑張ってなー」
「……」

 最近はけっこうマシになっているもののまだ信用されていないシャマルが、いいもんいいもんと
拗ねながら台所に向かう。続いて渋々ザフィーラも、監視兼試食係としてシャマルの立つ方へ歩い
ていった。

「マカロニとちくわ間違えんなよー!」
「いや待て、もしかするとうまい棒と間違えるかもしれん」
「むしろドーナツ買ってきて放り込んだりとか」
「もっ、もう! もう! そんなことしませんってば!」

 これ以上やるとぷんすか怒るかも知れないので、シャマルいじりはこのくらいにしておいて。
 残ったシグナムとヴィータ、そしてはやてが、テーブルを挟んで席につく。

「こんなにまったりしてていいのでしょうか……」
「ま、紙に書かれたの見ると安心やしな」

 テーブルの中心には、唯一の手がかりとなった書き置きの紙切れ。
 一部が焦げ付いており、そこには本来書かれていた、こんな文字が炙り出されていた。





「犯人は なの








 P.S. えびせんは二番目の棚です。
 進研ゼミの漫画は読むから捨てないでね」





「確実に無事やしなー……」
「切迫詰まってたら、こんなもの書く暇ねーしな」

 そんな感じなので、あまり心配しすぎない八神家であった。



(続く)

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来るたび来るたび楽しく読んでましたあの漫画。

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