度重なる攻撃によりジャケットは傷だらけ。レイジングハートは損傷、自動修復で直る範囲と見
られるが即時回復は不可能。魔力も防御に回したおかげでかなり使ったし肉体的疲労もある。精神
力的にはまだまだ戦えても物理的に厳しい。
 活路を見出そうと分析したなのはが得たのは、現状の厳しさの再確認。ただそれだけであった。
 要するにポルナレフ的三択が頭に浮かぶ状況である。
 諦めや絶望を友にした記憶はないが、目の前にある現実……というより少女が熱烈におすすめし
ているようだ。
 あまりそうされる覚えはないのだけれど。襲ってくる動機もわからないし。

(プリンがどう、って言ってたけど……)

 自分はスマブラだとむしろピカチュウ使うので関係なし。
 というかプリンで思い出したけど、最近よく遊ぶあの子が作ったプリン、お母さんに負けないく
らい美味しかったなぁ。
 そんなふうに思っていると、今までの思い出が、やりたかったことが心の中から次々溢れ出す。
走馬灯っていうのかな、と震える心で思った。
 優しかった両親。愛した兄と姉。フェイトちゃんとは折角友達になれたのに。アリサちゃんやす
ずかちゃんともっと遊びたかったし、ユーノ君やクロノ君やともお喋りしたかった。はやてちゃん
にもまた会いたかった。
 同居人のあの男の子は――

(……ドラゴンボールとかかき集めてくれる気がする)

 何となくだが。
 でもあの騒がしさも、もうすぐ聞こえなくなってしまうのか。
 そう思うと、ふっと寂しさに襲われた……要するに運命を悟っていたのだ。やっぱり諦めたくな
いけれど、現実がどうしようもなくそれを強いていた。
 だからこそ――自分を襲った少女の次の言葉には、吃驚したし困惑もした。





「ごっ、ごご、ご、ごめんなさぁいっ!」
「……え?」





 で、高町家。
 何かいきなり謝りはじめた女の子と相対して、事情を話してもらっているなのはであるが。

「……はぁ。その、つまり。プリン、を食べた……犯人? って紙に書いてあって」

 わけわかんないし。
 つまるところ人違いじゃん。

「『なの』って書いてあっても『なのは』じゃないし」
「そっ、その……ごめんごめんなさいっ! まままま前も食いそびれてあのえとだから」
「……むぅぅ」

 とりあえずほっぺたぷくーってして怒ってみる。そのくらいの権利はあると思う。

「わっ、わ、わわっ! ごっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」

 でもそうするとひたすら平伏してくるので、何か怒る気も失せてきてしまった。

「その……レイジングハート、もごめん。大丈夫か?」

 点滅する赤い宝玉からは損傷軽微、自動修復で大丈夫との言葉と、続いてお叱りの言葉が一言二
言。しゅんとするヴィータ。
 どうやらなのはに代わって怒ってくれているらしい。つくづくいい相棒をもった、と思うなのは
だった。
 そう考えると、何だか優しい気持ちになってきた。もともと怒るのが得意なキャラじゃないし。

「今度からはしっかり確認すること! でもってぼーりょく振るわない! って、約束してねっ」
「え? ……えっ? ゆ、許してくれるのか?」
「うん。怪我してないし……ど、どうしたの? わたし、変なこと言ったっけ」
「だ、だって……その。『怒らせると死神と閻魔とが二人三脚で泣いて逃げ出す』って話が」

 身も蓋も無さすぎて、誰が流したか一目瞭然のデマであった。あのはぐりんマスターとはいつか
タイマンで話し合わねばならない。

「あっ……プリン食べ損ねたなら、うちにもあるよっ。お母さん作の、食べる?」
「えっ……い、いや、そうまでして、えと」
「今なら10%オフだけど、お代金はきちんといただきます」
「ですよね」

 きっちりしているなのはさんだった。





「なのはっ、遅れてごめ……あ、あれ? なのはは?」

 うっかりしているフェイトさんだった。



(続く)

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また脱がし損ねた。

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