シャマル先生とならんでテレビを見ていたリインがやってきて、愛とは何か、と尋ねてくる。
 どうやら観ていた内容がそんなお話だったようだが、なんとも答えがたい問いである。このまま
だとリインに愛を知らぬ男だと思われてしまうので、家人の皆様に解答を求めることにした。とり
あえずはやてに尋ねる。

「はやてよ。愛とは何だ?」
「それを知るのが人生や」

 リインは感銘を受けた表情になった。生粋の詩人ぶりに俺も完敗を悟る。

「キリッ」

 なんか悔しかったのでこの前の仕返しをした。脛を蹴られて非常に痛かったが、多少溜飲は下が
ったような気持ち。

「はぁ、なんやの藪から棒に。今日はいつもに輪をかけて妙なことを」

 リインが愛の何たるかを知りたいそうなのでと報告しつつ、常日頃の俺を奇人認定するはやてに
やるせなさを感じた。戦逃奇人?

「ともあれ、さすがはやて」
「伊達に本読んどらんよー。しかし、愛かぁ。人生ぜんぶ懸けても、理解しきれるかどうか」
「すなわち愛とは、とらえがたいものなのだ。で、どうした。リインは愛に飢えているのか」
「飢えていない」
「そいつはよかった。この家で愛に飢えられてしまっては、愛の伝導師オリーシュの名が廃るぜ」

 はやてが露骨に胡散臭そうな顔をして、さすがのリインも微妙な感じで俺を見た。

「話はすべて聞かせてもらいました! 地球は滅亡します!」

 元気なちっこいの来た。「なっ、なんだってー」とローテンションで答えてやると、それなりに
満足したご様子。

「リインよ。お前に愛が語れるか」
「愛を語らせたら、このリインの右に出るものはないと自負する次第です!」
「リイン妹 愛を騙るの巻」
「い、イントネーションが不穏です! とてつもない悪女に聞こえたような気が……!」
「とてつもないドロンジョ様が何だって?」
「趣味が古いですっ! あ、でももし再放送で知ったのなら、もうこれはにわか乙としか!」
「本日のビックリドッキリメカはやたらうるさいですなぁ」
「本日の!? もももももしや、リインはいつのまにか大量生産されていたのでしょうか!?」

 こんなのが本日のビックリドッキリメカだったら、たぶんドロンジョ様たちはお仕置きを受けず
に済むんだろうなぁ。

「あれも愛のなせる業や。愛は理解することもその一面やし」
「……はやてたちの周りには、愛があふれていることになる」
「うん! ええなぁ、愛にあふれた人生ええなぁ!」

 あちらはあちらで何やら盛り上がっているようだ。はやては愛にあふれた人生をご所望らしい。

「もう額に愛って刺青しとけばいいと思うよ」
「ご心配なさらずとも、八神家はすでに愛であふれとります」
「八神家が愛の巣に! ……な、なんだかいやらしいですねっ!」

 姉とは違い、そっち方面の知識も完備のリイン2だった。

「あたしも混ぜろ。要するにあれだ、お前の髪を愛の字にカットすればいいんだろ?」
「見物させてもらおうか」
「レヴァンティンは貸さんからな」
「ほ、本当にやるんですか? 鏡は用意しましたけど……」

 おっとろしいことをのたまうヴィータからひたすら逃げ回りつつ、この家で言う愛の定義を疑問
に思う俺だった。





「なんで私たちがお前の湿布を……ほら、さっさと脱げ!」
「愛の力で介の字貼りだな。気持ちいいぜ」

 勝手にオチまで持ってきてくれたぬこ姉妹。さすがです。



(続く)

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すずかイベント始まってますが幕間。
「話題をなにかひとつに統一してみよう」の実験。なにこの統一感のない会話……!
リインはこうして成長していくのです。あと一生分くらい愛って書いた気がする。



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