高町家でハイパーバースデーパーティーはじまるよー!

「まさかの二人まとめてとは驚きでござるよ」
「二日違いだしね……ちょっと新鮮だねっ」

 しかし誕生日の近い俺もいっしょに祝われてしまい、予想外で想定外。画材とか調理器具とか、
俺までプレゼントもらっちゃったし。いや死ぬほどうれしいんだけど。

「はやてちゃんのプレゼントがセンスに満ちあふれてるんだけど……これ、どこで買ったの?」
「ん? な、何やこれ、自転車のサドルだけって……あっ。オリーシュ! オリーシュどこ!?」
「さっき『ちょっくらデルムリン島にゴメちゃん探しに行ってくる』って……あ、はやてちゃんあそこ!
 逃げようとしてる!」

 はやてからなのはへのプレゼントを戯れにすり替えた結果、歩行器装備中のはやてに信じられな
い速さで追い回された。
 がらがら迫る車輪の音に恐怖しつつ逃げ回り、最終的にすり替えたプレゼントを返却+今度駅前の
おいしいクレープをおごることで、何とか許してもらう。

「くそう。自転車のサドルは面白いと思ったんだが……」
「……面白いのは認めるが、すり替えられた側の反応としてはあれが正しいと思う」
「なるほどなぁ……しかしもしかすると、補助輪の方が良かったという可能性も!」
「わざと言ってるでしょそれ」

 クロノやユーノとそんなことを話しつつ、おいしいコーヒーでケーキをいただく。俺にとっては
サプライズなパーティーだった(なのはのパーティーだけだとばかり思っていた)のだがそれはそれ。
祝われるのは久し振りなので、とても幸せな気持ちだ。もう思いきり楽しみたい。

「あそこに放置してきたはぐりんたちとちびリインは大丈夫だろうか」

 ふと見ると、ちっこいのを置いてきたお菓子テーブルに人が殺到していた。
 もう今日魔法バレなら連れてきてもいいよね、ということになったのだ。主に女性陣に人気らしく、
わらわらと集まっているのが見える。

「おとなしくしていたよ。みんな、すごく可愛がっている」

 という声に頭上を見上げると、いつの間にやら恭也さんがテーブルに来ていてびっくりした。席
は空いているかと訊かれたので、大丈夫ですと伝えると腰かけてきた。

「こんちあ」
「こんにちは」

 とりあえずコーヒーを皿に戻しつつ、ぺこりと一礼。

「なんかその、すみません。こんな会開いてもらっちゃって……はやてと相談して?」
「かーさんが、ね。『あの子を驚かせてあげよう!』って張り切ってたよ」
「ケーキのサイズを見ると大まかに予想がつきます」

 二人ぶんということもあったのだろうが、ケーキの大きさがホールで普通のサイズの二倍くらい
ある。みんなぱくぱく食べてるから安心だが、桃子さんの気合の入り具合がうかがえよう。

「ところで、あの子たちは……どこから連れてきたんだ? できたら、話を聞きたい」

 恭也さんはそんな感じに問いかけてきた。そりゃあ目の前にはぐれメタルをでんと置かれたら、
まぁこういうことになるだろう。

「それも含めて、なのはから後で話があるかと」
「ん? なのはも絡んでるのか……ああ、もしかしたら、その件なのかな」
「何か」
「なのはの誕生日プレゼントなんだが、『当日話すから待ってて』って両親に言ってたんだ。それ
 と関係があるのかなと思って」

 そんな話を聞いていて、魔法関係のことを話して認めてもらうのがプレゼントなんじゃなかろう
か、と瞬時に察した。そのくらいはお見通しである。

「もしかすると、あの子たちをペットに、という話なんじゃ――」
「残念ですが、あいつらは既にうちの家族ですので」

 ありそうだが無い話なので否定する。恭也さんはのどの奥で唸って、真相はなんぞやというふうに
考え込んでしまった。しかしそれもそう長くは続かずに、なら話を待とうという感じになって、再び
コーヒーを口にした。

「気長に待とうか」
「ほととぎす。ああ、あの、プレゼントありがとうです。食用ハーブの鉢植えとはこれまた」
「料理が好きと聞いていたから……苗は選んでみたが、うまく育たなかったら申し訳ない」
「育ったらまずチャーハンに入れてみることにします」
「……その話をよく聞くんだが、君が20人分を1枚のフライパンで作ったのは本当なのか?」
「はやてのデマかと」
「そ、そうだろうな。さすがにな」

 ぐだぐだと話した結果、恭也さんとちょっと仲良くなりました。調べてくれていたようで、もらっ
た鉢植えの育て方とか教えてもらいました。





 なのはの話はじまった。

「アッー!」

 という間に終わった。というわけではないが、割と早めにカタはついた。
 しっかりした家族会議はパーティーが終わってからということになって、今は高町家の面々はあっ
ちのテーブルでリンディさんとフェイト、エイミィさんにユーノと語らってます。クロノとアルフは
お休み中。
 なのははとりあえずきちんとお話できてよかったね。

「アンタまで地球外生命体だったなんてね。納得だわ」

 一応闇の書の話とか俺の身の上も(アニメ云々は伏せて)教えちまったので、真相を知ったアリ
サがもう遠慮なく失礼なことを言う。地球外じゃなくてちがう地球なのに。

「おのれ小娘! 時空管理局元帥の俺になんという口をきくか!」
「管理局が勘違いされるからやめてくれ」
「いろんな意味でな。楽しい組織にはなりそうだ」
「こんなところで油売ってないで仕事しろよ元帥」

 クロノとシグナムとヴィータあたりは、相変わらず容赦がない。

「すごく……失礼です……」
「あ、あはは……でも、びっくりしたよ。違う世界って、本当にあるんだ」
「今年はいくつ回れることやら」

 しかしすずかと話し始めると何だか和んできたので、とりあえずクロノたちそっちのけで語らう。
横合いからアリサもやってきて、特にはぐりんについて質問されることしばし。

「それにしても、アンタもいろいろやってたのか……魔法なんて、よく捨てられたわね」
「捨てなくちゃ。そりゃ残念だけど、カイザーフェニックス開発ははやてがしてくれるらしいし」
「わけわかんないわよ……まぁ、アンタに魔法なんて使わせたら大変なことになるでしょうけど」

 実は魔法消えたわけじゃなく、リイン2号がだいたい持ってる訳だが。でもって頼んだら、いろんな
魔法を使ってくれるわけだが。
 このツンデレアリサにも一度、イタズラ魔法の数々を味わわせてやろうと思っているのは内緒だ。
 いずれ機会をうかがって、誕生日の時にでもちっこいリインと共謀し、「パーティーメンバー全員
コロ助ボイスでハッピーバースデー斉唱」を試してやろうと思う。腹筋ぶっこわしてやる。

「違う世界って、本当にあるんだ。行ってみたいなぁ」
「俺もまた旅行したい。ピクニックとか」
「そのうち八神家のキャパが限界来そうなんやけど。行く先々でいろんなモンスターに懐かれそうで」

 またまたご冗談を、と言ってみたが割と洒落になってない気がした。しかしそのときが来たら、
クロノがなんとかしてくれるんじゃないかと楽観している。
 実際本当になんとかしてくれることになっちゃうんだけど。

「あの……あのね。どうして、そんなになつかれるの?」

 とか思っているとすずかが、おずおずといった感じに尋ねてきた。

「持って生まれた大徳ゆえ」
「ちょっとトラックに轢かれて玄徳に謝ってこい」

 うちの連中が三国志に詳しいのは主に蒼天航路とKOEIさんのおかげです。はやてのソースはも
っと広いけど。

「だってもう説明できませんから。体質だよこれ」
『おいしいごはんがあるからやー!』

 机の上のスタスタがいきなり喋りだしたから何かと思いきや、実は向かいに座っているはやての声だった。
はぐれメタル(CV.はやて)というのも悪くないかも。

「じゃ、じゃあ。例えば……たとえばだよっ。もし、お友だちが魔物だったら、どうする?」

 しかしすずかは少しして、思いきったように口を開いて訊いてきた。
 しっかり見ると、「『やっつける』とか、『つかまえる』って言われたりしらどうしよう」みたい
な言葉が透けて見える。
 でも別に何もしないので、「どうする」と言われても困る。捕まえなくても仲間になるみたいだし、
嫌いなモノに気を付けるくらいか。吸血鬼ににんにくとか。

「モンスターペアレンツならぬモンスターフレンズ、略してモンフレ。これは流行る!」

 とかそんなことを考える間にも、勝手に動いている俺の口が恨めしい。

「流行らんわ。それは即刻絶交やろ」
「いやいや、そこの凶暴ツンデレの子とか! 確かに人格がモンスター!」
「何というお前が言うな」
「いま、とてつもないブーメランを見た気がしますー!」
「あなたの家のブーメランは、吸引力が落ちていませんか?」

 返答は上からはやて、リイン2、そしてヴィータ。しかしそれよりもなによりも、無言の得意顔で
見下ろしてくるアリサの視線にぐうの音も出なかった。

「こいつら全員爆発しろ」
「そ、そんなつもりじゃなかったんだけど……あの、ごめんね?」
「魔物の方が突っ込み厳しくないわ……」
「あ、ありがとう。うれしいよ、うれしいからっ。ね?」

 俺を慰めようとするあまり、うやむやになった挙げ句なにやら自白のような発言をしていたすずか
だった。幸いはやてもアリサも気付いてないので、今度から苦手なものに気をつけてやろう。



(続く)

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人外限定で勘のいいオリーシュ。



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