大魔王からは逃げられなかった……!
 というわけでなのはに正体がバレてしまい、急きょ敵本拠地(アースラ)に連れて行かれて事情
を聞かれている次第。折角の親睦会だったらしいのに、何か悪いことしちゃったかも。
 数多のデバイス持ちオリ主がその実力を披露した船なんだろうにゃーと思いながら、執務官とか
何とかっていう役職のクロノと話す。

「はぁ。つまり、変な鏡のようなものを通ったら、次の瞬間にはあの世界に?」
「そう。そうそう。そんな感じ」
「……」
「本当、本当! そんな感じだよ! ほんとだよ!」

 何かいかにも訝しそうな視線で見られてどうしよう。そりゃ怪しさ満開なのは否定しませんが!

「ねぇ、どうして最初から名前言わなかったの? すぐ帰れたかもしれないのに」

 と聞いてきたのは、そんな様子を横で見ていたなのはである。こちらは心底心配そうな目を向け
てくるので、だましだまし喋っていることにちょっと罪悪感。

「こっちに知り合いができたし、何か楽しかったし。もうちょっと遊びたかったもので」
「気持ちはわかるけど……でも、心配してるよ、はやtもあっ!」

 出てくるとマズい名前が出てきそうなので、口にゆうぼうとスタスタを貼り付けて黙らせる。

「んー! むー、んむーっ!」
「怪奇、妖怪メタルマスク。鼻から下がメタリックだ! ちょっとかっこいいかも!」
「んんん――っ!!」

 カッコいいのは構わないが、結構重そうだし鼻まで塞がれそうだ。引っぺがす。

「なのはにははぐメタ装備は早かったか」
「装備じゃなくて! そのまま貼り付けただよっ、これ!」
「でも俺の場合実際に防御力が上がったし」
「うそっ、本当? ……レイジングハート、ちょっとジャケットにつけてみよっか」
「つけるなら、肩当てとかだとかっこよく……あれ、クロノ。どうしたの」
「……何だかもうどうでもよくなってきた」

 会話を聞いていたクロノはなんか非常に脱力した感じ。具体的にはもうどうにでもなーれという
雰囲気。

「という訳で。ここにいる皆全員魔法使い?」
「そうだよっ……て、そんなに驚かないんだね」
「はぐりんの火炎とか見たし、それ程は。便利だにゃーってくらいかね」

 本当は原作見て知ってたからだけど、そういうことにしておこう。

「ていうか、その子たち……ついて来ちゃったんだ」
「服にくっついてはがれなかったので。返した方がよかったかね」
「そちらの方が良いと思うが、はがそうとすると空気がパチパチ鳴るからどうしようもあるまい」
「……鳴ってた?」
「ああ。プラズマのような音だった」

 ジゴスパークの片鱗が見えたけど気のせいだと信じよう。

「とにかく! なのはの知り合いということだ。責任を持って現地に送り届けることを約束する」
「ありがとう。とりあえず艦内では大人しく、なのはで遊ぶことにする」
「わっ、わたし、おもちゃじゃないよっ!」
「そうか。じゃあ、フェイトで遊ぶことにする。はぐメタ的な意味で……あ、逃げてる逃げてる」

 金髪の子を探そうと辺りを見回すも、既にはぐりんたちに追いかけられてるし。

「どうしてあんなに懐いてるんだろう……」
「『なんだか遊びやすそう』というスタスタからのお言葉が」
「えっ、言いたいこと分かるの!?」
「だいたいは。雰囲気とかから」
「ふっ、二人とも! 話してないで助けてっ!」

 半泣きになって椅子の上に避難するフェイトさんでした。椅子の足にはぐりんたちがうねうね近
づいてて、ホラー映画の一幕みたいだけど実際はそんなことねーです。





 何とか無事に銀のロザリオを手に入れたヴィータ。
 ほくほく顔でようやく集合場所に戻ってみると、そこに残っていたのは三人分のお弁当、そして
紙切れ一枚であった。周囲に人の気配はどこにもなく、食事用に広げられたシートが風にこすれる
ばかりである。
 少年は何処に消えた。米でも炒めて盛大に投げつける機でも窺っているのだろうか。
 と、最初は楽観視していた守護騎士たちであるが、次第に様子がおかしいことに気付く。余分に
作った弁当の全てが消え失せているのである。少年一人に連れ三匹を計算に入れたとしても、到底
食しきることができるような量では無かった。
 物取りの被害にでも遭ったか。
 少年の身に何らかの災禍が降りかかったのかと、騎士たちは刹那蒼白になった。しかし、その想
像にはいくつかの疑問がある。少年と共に居た魔物には、最初は熟練の騎士たちでさえ苦戦した。
それが三匹も護衛についていた上、物取りならわざわざ人数分の弁当が残されているのは不自然で
ある。
 と、そこでシグナムは初めて、残された紙を手に取った。裏側には色々と多くの書き込みがされ
ており、表面にはわずか五文字が並んでいる紙であった。
 情報の量としては普通、比べるまでもないことであろう。しかし騎士たちは皆、表面の文字に目
を釘づけにされた。守護の騎士たちにとってその一言は、裏に書かれた手紙よりもある意味衝撃的
であったのである。
 紙には、次のように書かれていた。





 プリン 抜き





 騎士たちは絶望した。



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