所変わって、某町のすごろく場。

「3! 3出ろ! 3なら上がり……ああぁぁ! 4かよッ!」

 そこには、モンスターからせしめたすごろく券で遊びまくるヴィータの姿が!

「あああああもう! 銀のロザリオまであと一歩だったのに!」
「あの、ヴィータちゃん? そろそろ戻った方が……」
「そろそろ昼食だぞ。あいつも待っているだろう」
「いやだっ! あれは絶対取る! はやてにプレゼントするんだっ!」

 もう一回! と入り口にもどるヴィータだった。先延ばしになる昼食に、はぁと溜め息を吐く二
人だった。





 という守護騎士の現状も知らず、ただ今俺の状況えらいこっちゃ。えらいこっちゃ。

「なのはっ。アルフも、ユーノもっ」
「はぁ、はぁっ……ご、ごめんね。学校終わるの遅くって」
「……フェイト、誰そいつ? 変なカッコだな」
「あ、うん。この人、オリ……」
「おっ、おおお、おっお、オリ・ガミスキーと申しまして候!」
「ん? 先ほどは……」
「ほほ本当の名はお二人に教えてあるのですが、名を教えるのは日に二人までという掟があり!」
「……具体的な掟だな」
「でっでででもホント紙折るのうまいよ! そこのはぐりんの王冠も自作だしほらそのあの」
「え? ……は、はぐれメタル! もしかしてもしかして、ここって、ええっ!?」

 やばいやばいやばい。仮面でまだなのはに顔はバレてないけど! バレてないけど! 残りの四
人が不審物発見の表情で俺を見る!

「ととと取りあえず、プリンどぞ。いやー助かった、こいつらだけじゃ食いきれなかったし!」
「は、はい。どうも」
「あ、これ、美味い! 美味いよ、フェイトっ」
「……ホントだ、すごくおいしいっ。お母さんのとは、また違った感じで……」

 よく見たらこれってフルメンバーだし。クロノにオハナシに脱衣にわんこ。巷で淫獣呼ばわりさ
れてる不運な子もいるぞ!
 ヴォルケン戻って来たら逃げ切れないじゃんか! どう考えても頭数が足らん!

「……あのー……」
「ななな何でしょう」
「すみません、その……どこかで会ったこととか、ありませんか?」
「なのはも……? 僕もそうなんだが」
「ふぇ、クロノ君も?」

 誰か男の人呼んでぇぇぇぇ!! と叫びたい気分だが致し方なし。ヴォルケン戻ってこなさそう
だしどうしようもない。念話が使えるならまだ違ったんだろうけど!
 ここは何とかやり過ごして、最悪でもはち合わせだけは防がないといかん。オリーシュがオリ主
でなくオリーシュたる所以が一、その話術! その一端を今ここで見せつけ……

「ここで隠しデザート、プリン・アラモードの登場ッ! こいつを食うことは至福を意味するッ!」
「……なんだか、どこかで聞いた話し方なんだけど……うーん」

 てはいけなかった。いきなり墓穴掘った。

「とにかく! ユーノにアルフになのは? 仲よさそうだなぁ! 勇者パーティーですか?」
「えっ、やっぱり……勇者、いるんですか! 魔王とかも!」
「うん。ちっこいのなら今ここにも。天地魔闘の構え使えるのが」
「……?」

 だから。そうじゃなくて。

「違くて! 魔王は知らんけど、モンスターはいっぱい。こいつらもそうですが」
「って、本当にはぐれメタルだ……すごいなぁ。この子たち、仲間なんですか?」
「最近懐かれましてどうも。ああこら、そこ。また纏わりついてるし」
「ひゃっ! だっ、だからっ、どうして私にだけっ」
「ふぇ、フェイトちゃん! 大丈夫!?」
「こ、こら! こいつら、フェイトに何してんだッ!」
「遊んでるつもりみたい。でも良い子の目の毒ですので、そろそろ下がって。ね」

 またうねうねぺたぺた絡まれていたので、とりあえず止めさせる。
 2匹で足首手首固定してるとことか転生前なら垂涎ものだったんだろうけど、今のオリーシュは
肉体の若返りとともに常時ハイパー賢者タイム発動中。この程度はどってことなし。





 しかしまぁ、魔法少女ヌギま! がはぐメタ塗れになってくれたおかげで、何とか話題を変える
ことに成功。

「アルフ……だっけ? これ食べる?」
「おおっ、それ……クッキーみたいだけど。いいの?」
「うん。ちょっと食べてみて。感想聞きたい」
「ん……ん! おいしい! おいしいよっ、焼き加減もいい感じ!」
(シャマル先生製のアヤシイやつだったんだけど。大丈夫だったのか)

 そんな感じにアルフを実験台にして、食べても大丈夫と証明されたものを皆にもお薦めしていく。
 話して食べて飲んで、時折クロノにはぐメタについて質問されたり。

「これ……珍しい靴ですね。触っても?」
「あ、うん。ちょっと貴重なので。はぐりんたちがくれたんだけど、しあわせの靴って言うみたい」
「しあわせの……はいてたら、何かいいことがあったりするのかな?」
「わからない。とりあえずはいてみて悪いことがあったら、ふしあわせの靴と改名する予定」
「……呪いの装備みたいですね」
「呪いだろうが毒だろうが解除してくれるここらへんの教会すごいです」

 ユーノはどうやら、そこいらに置いてあるアイテムに興味津津の様子だった。
 確か考古学の人だったっけ。そういえば第三期でもなんか、マイク持って喋ってたような。色々
聞いてくるので、知ってる範囲で答えてあげた。初めて見るアイテムだったらしく、ふんふんとし
きりに頷いていた。
 そんな風にしていると、時間の経つのは早いもので。
 すごろく場とかがあるという話をしてあげると、ちょっと町の方にでも行ってみようという流れ
になった。これはフラグ回避来たかもわからんね。

「ごちそうさまでした……でも、よかったんですか? 僕たちだけ食べて……」
「いや特には。こっちの連れも帰ってきてないので、ちょうど話し相手によかった感じ」
「あ……そうだ。ここで少し待ってもらえれば、何かお返しのものを持ってくるが」

 クロノはそんな風に申し入れてきたが、いやいやそこはと丁重に辞退しておいた。ヴォルケンが
戻ってくるタイミングとかち合ってしまえば、それこそはいお終い、である。

「急いだ方がいいかも。すごろく場終わるの早いから」
「うぅ……スライムに遊ばれた記憶しかないよぅ……」
「その……フェイト、大丈夫だったかい?」

 フェイトはしょんぼりしてるけど。ともあれこれで一件落着っぽい。
 何か片付けとか、出立の支度とかしてるし! これはもう危機回避とみていいだろう、うん!

「じゃあ……お互い気のせいの知人に会えたのに、名残惜しくはあるが」
「や、ホントに、どこで会ったのやら。縁があったら、いずれまた」

 本当にどこかで会った気がするので、クロノとはそんな感じに会話。
 実際、何処で会ったんだろうかね。海鳴近辺に住んでるわけでもないし、こっちはこっちで全く
記憶にないし。
 とにかくそんな感じで、お別れの挨拶。一緒に来ないかという申し出も連れがいるからと断って、
完全にもうさようならの雰囲気。
 やった! やったぞ! これで勝った! ヴォルケン帰還と同時に、速攻で家帰って今日はもう
蒐集おしまい! 第三部完!
 と俺は思った。
 思ったんだよ。
 思ったんだけどね。



 油断しちゃって。



「本当にごちそうさま、楽しかったですっ! 今度来たら、うちのお菓子も持ってくるねっ!」
「カスタードは食べ飽きた! 今度はシューアイスがいいかもって桃子さんに言っといて!」
「うん、わかった! じゃあまた……ん?」

 やっちゃったわけですよ。

「あの……ちょっとこのお面、失礼します……」

 ってなるわけで。





「(´・ω・`)やぁ」
「あ、あれ? ……ええっ? ええええっ!?」
「なのは? 知りあいなの?」
「だだだだってだってそのあのえっと!」
「ようこそバーボンハウスへ。このコーヒーはサービスだから、まず飲んで頭冷やそうか」
「冷えないよっ!」

 ですよね。



前へ 目次へ 次へ