「いつの間にか大晦日が近づいて参りました」

 遊びに来たなのはも交えて、はやてとこたつやソファでまったりしていると、ふと気付いたので
言ってみる。

「せやなぁ、大掃除はじめんと。なのはちゃん家は、お正月は海鳴やの?」

 最近だと自宅じゃなくてホテルとかでお正月を過ごす人も多いらしい。それを思い出したのか、
はやてがそんなことをなのはに尋ねた。

「うん。家にいるよっ!」
「そっか! なら、落ち着いたらまた遊ぼうな!」
「うんっ!」

 女子の付き合いは広く浅くと聞くけれど、こいつら見てるとそうは思えんなぁとしみじみ思う。

「ってか、俺の担当栗きんとんだった。試作するから、うまくいったら明日持ってくわ」

 正月のお節料理を作ることになったのだが、俺とシャマル先生とはやての分担制に決まったので
ある。甘いものについては舌が肥えているなのはなので、ぜひ味見をお願いしたいのだ。お節は買
うばかりで作るのは初めてなので。

「えっ、ほ、ほんとう? けーとくんが作るんだ……絵の具とか混ぜたりしないよね?」
「チャーハンばっかだったオリーシュも流石にクチナシの実くらいは知っとるわい」

 なのはの場合はいい加減慣れてきたのか、それとも単に無意識なのかわからんかった。たぶん両
方だと思う。仕返しに眉間をぐりぐりしてやったところ、あうあう言って眉毛が困ったハの字にな
った。

「なのはが構わないなら栗きんとんに加え、クリントン氏やクリリンさんもプレゼント」
「それは明らかに栗きんとんよりすごいやろ……」
「作れるものなら作ってみてよ……」

 でも昔は本当にクリントンさんって栗きんとんの一種かと思ってた。とか。わたしは筋斗雲って
聞くと栗きんとん連想するわぁ。とか。

「クリキントン大統領やな」
「元をつけるべし。そういえば、八神家のお雑煮はどんな感じ? 餅は入れるとして」

 ふと気になったので尋ねてみる。雑煮ははやて担当なのだが、地方や家によって随分食べ方が違
うそうで。

「味噌でござるか」
「醤油やよー。なのはちゃん家は?」
「うちもお醤油!」

 味噌派のマイノリティが確定した。

「何と……味噌は少数派と申すか」
「肩身が狭いオリーシュでござるなぁ」
「少々切ないでござるよ」

 はやてとござるござる言いつつ、皆でお節料理の話題で盛り上がっていると、リインが急須と湯
呑をお盆に載せて持ってきた。どうやら仲がいいらしく、お茶菓子の皿を持った(乗せた?)はぐ
りんたちがちょこちょこと着いてくる。

「よう。食べる人」

 この呼称は不服であるらしく、リインは反応せずに澄ましてお茶を飲みはじめた。

「しかし実際、今年は面子がえらい沢山おるからなぁ。賑やかなお正月は楽しみや」
「おおう……しまった。クロノたちも誘いたかった。コア調査の結果聞いた時に言えばよかった」
「でも忙しいって言ってたから……また来年になるのかな。会いたいねー」

 なのはには、フェイト経由で結構情報が来るらしいのである。しかし次はいつか空いてるか知っ
ているかと聞いてみたが、それもまだわからないとのこと。やっぱり管理局は忙しいらしい。ユー
ノはなのはですら連絡取りにくいらしいし。

「バイト情報もらう時、ついでに訊いてみるか……」
「クロノ君がハロワになっとる件について」

 近いうちにフェイトが勉強の経過確認ということで訪問する予定になっているので、その時にク
ロノからシグナムたちのお仕事をもらうのと同時に、お休みがいつになるかも聞いてみようと思う。

「仕方ないでありまするか。まぁパーティーしたばっかだし、ちょうどいいかもわからんけど」

 次は春までに会えるだろうか。管理局のお手伝いに着いてったらええんちゃう。などと話をして、
持ってきてもらったカステラを切り分ける。皿にのせてそれぞれ配り、もくもくもくと皆で食べた。

「年越し蕎麦はえび天で」
「えー。かき揚げがええんやけど」
「……とろろ蕎麦、食べてみたい」

 意見が真っ向から対立してにらみ合う。

「じゃあなのはに決めてもらおう。どれがよろしいか」
「えっ、え。ええっ? え、えと、えと……」

 三人で視線で圧力をかけてみたところ、あうあう言って困惑しはじめるなのはだった。あんまり
困らせてもあれなので、じゃあ天ぷらも芋擦りもやってお好みで作ろうかということに落ち着くの
だった。

「……けーとくんも困っちゃえ」

 お返しだと言って、眉毛引っ張って無理やりハの字にしてくるなのはだった。脱出しようとして
みたが、リインとはやてが腕を固めてくるので無理でした。屈辱。



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