なのはの家に遊びに行こうと思った。しかし思ったはいいが、ただ行くだけではつまらぬ。

「私、メリーさん」

 ということで、電話をかけて悪戯をしてみることにした。メリーさんっぽく携帯から。

『けーとくん、携帯の番号見えてるよ……声も男の子だし』

 容易に看破された。思慮が足りなかったのかもしれない。

「じゃあ新妖怪、メリーくんとして再デビューする。かけ直すからちょっと待ってれ」
『通話料金使いすぎると、はやてちゃんに怒られちゃうよ?』

 なのはのくせに真っ当な指摘で閉口する。

「アホの子なのにこういうことには頭が回りやがる」
『あっ、アホの子じゃないよ! 冬休みでもちゃんと勉強してるんだからっ!』
「平仮名の書き取りを?」

 なのはが激しく抗議してきた。

「間違えた。漢数字の練習か」

 電話の向こうがにゃーにゃーうるさくなった。

「なのははうるさいなあ。まあいい、お医者さんごっこで鬱憤を晴らす」
『嫌な予感しかしないんだけど……』
「針と糸で口を閉じるだけだから大丈夫」
『ぜっ、ぜんぜん大丈夫じゃないよう!?』
「糸はたこ糸だから丈夫だよ?」
『聞いてないよ! より痛そうだしっ!』

 Mの素質があると思うなのはだが、どうやら痛いのは好きではないらしかった。

「なのははわがままだなあ」
「わがままじゃないよ……痛くない遊びにしようよ……」
「仕方ない。じゃあ、レベル上げでもしようか」
「あ、いいよ。ポケモンの?」
「いや、なのはのレベルをドラクエ世界で上げる」

 はぐれメタルには勝てないよう、と遠慮された。

「まぁいいや、遊びに行くけどいいですか」
「あ、いいよ。今どこ?」
「あなたの後ろにいるの」
「またそんなこと……ひゃああぁぁぁああっ!?!?」

 もう既に部屋に入っている俺だった。首筋に冷たい氷を押し当ててやると、期待以上に驚いたら
しく反応が面白かった。





 プレゼントの知恵の輪を渡して必死こいて解くなのはを観察したり、ゲームしたり本読んだりし
て帰ってきてみると、夕食当番のシャマル先生がキッチンで作業をしていた。
 どうやらグラタンを作っているらしい。確かヴィータのリクエストだったな、と思い出す。

「あ、おかえりなさい。新しいミトン、後でさっそく使いますねっ」

 とか言って下ごしらえをしていた。練習していたとか言っていたので、たぶん食わせるのが楽し
みなんだろうと思う。

「俺も年貢の納め時か」
「安心しろ。今回は一応、主はやてのお墨付きだ」
「消し炭付きと申したか」
「割と洒落にならねーんだけど」

 これ以上やるとシャマル先生がしょぼーんな感じになるので止める。シャマル先生が拗ねるタイ
ミングは、日々のシャマルいじりの結果みんな習得済みである。

「……だめだ落ち着かない」
「不安で不安で仕方がないな」
「思い起こされるは今までの悪行の数々……!」
「前回のグラタンは何故か色が赤かったんだっけ……」

 聞こえないように言いたい放題。
 しかしながら出来上がってみると、何か知らないけど普通に美味しかった。上にチーズをのっけ
て焼いてあって、ばっちり満腹になれるおいしいグラタン。

「……おいしかった」

 皿洗いを手伝うリインが言うあたり、間違いではないのだろう。事実明らかな上達がうかがえた。
失敗なら「【真っ赤なマカロニ】シャマルの飯がマズい【摩訶不思議】」スレを立てようとしてい
たのだが、どうやら延期することになりそうだ。

「しかし代わりに、戦闘能力が落ちるなんてことは」
「ない。クロノに適度に任務を振ってもらって……そういえば、コアの調査はどうなった?」
「ワケわからないって。魔力流すとある程度吸うらしいけど」

 という感じな話になって、食後はソファでまったりしながら、あのコアの正体をいろいろ想像した。

「謎を解く前に撃ってしまったからな……」
「シャマルのバグも取ってったんだっけ。そーいえば」
「えっ……ええっ! そうだったんですかっ!?」
「らしい。しょこたん情報によるとですが」

 つい懐かしい名前で呼んでしまったところ、リインにじーっと視線で責められた。

「命名ははやてなんだけど」

 それでも責められ続けた。不公平だ。



(続く)

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考えてたスレタイがどこかに消えててかなり涙目。



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