ザフィーラにアマテラス様の筆しらべを覚えさせようと画策したのはオリーシュである。八神家にホワイト学割を導入させようとし
たのは外堀を埋め、ザフィーラにカラーチェンジを余儀なくさせるためだった。
 しかしザフィーラ本人の抵抗と、実はお父さん犬よりドコモダケ派を宣言したシャマルとシグナムの反対により、今のところ実現は
していない。ちなみにリイン姉妹は豆しばファンであり、そしてヴィータは今さらNOVAウサギに夢中だ。そのヴィータがとある有
名RPGをプレイ中に「J‐E‐N‐O‐V‐Aウサギか……」という謎の呟きをこぼして、ギャラリーを総毛立たせたのは記憶に新
しい話だ。

「そして私はHOKUTOのエリンギさんが好きやった」
『俺の中で今エリンギが岩山両斬破で真っ二つになった』
「そのホクトとちゃうから」
『何と。飛翔白麗でズタズタにされると申すか』
「今自分で南斗ってゆーた」
『今の聞いて一瞬で南斗ってわかるとかもう惚れるわ』
「惚れられた。困る」
『そこは『愛など要らぬ!』って言えよ』
「何その無茶振り」

 またぞろポケギアからオリーシュの声が聞こえてきて、夜勤中で書類を片づけていたはやてはその相手をすることになる。
 夜勤というのは出動要請さえなければ案外ヒマなもので、自分の仕事を終えていれば基本的に宿直のみだ。なので自然と、
こうなることが多い。

『あとキノコついでに、きの山さんはどうですか。八神家にはたけのこファンが多くて、俺とシャマル先生の肩身が狭くてですねもう』
「……いやまぁ、最近はきのこの山しか食べとらんけど」
『マジですか』
「子供のころはたけのこ派と思ってたけど。でも実はそんなことはなかった」
『むしろたけのこなどなかった』
「存在から抹消するとは」

 子供(?)のころから根っからのきの山フリークで知られるオリーシュもこれにはニッコリ。早くシャマル先生(きのこ派)に教え
てやろうと心に決めるのだった。

『きのこの山のおかげで残機が増えました!』
「随分安上がりな」
『マリオ世界の100コインは、現在の貨幣価値に換算して1きのこの山になります』

 さっそくこれからの八神家をきのこの山派が席巻するべく、ポケギアの向こうで宣伝文句を考えはじめたらしい。はやてがそれを聞
き、相槌を打つ。

『きのこの山のおかげで……エルメス、行こうか』
「キノ違いや」
『ヒャッハー! きのこの山だー!』
「何その可愛らしいモヒカン」
『きのこの山のおかげでこの俺も哀しみを背負うことが出来たわ……!』
「出よったな。ええと、そう、ペヤング!」
『ラ王です。世紀末覇者、麺王です』
「ありのまま昨日起こったことを話すぜ……『かやくを取り出して開けようと思ったらいつのまにか開いていた』」
『最近のは親切だから』

 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものじゃあない、もっと恐ろしい「サービス精神」の片鱗を味わったはやてだった。

「ふたり揃ってかやくを取り出し忘れとった頃が懐かしいわ……」
『そういえばはやては何度言ってもかやく麺の下に挟むよね』
「お宅は上に乗せるのをやめへんな。何度も下の方がうまいとゆーとるのに」
『最近はそういう争いを防ぐため、むしろ入れないといいんじゃないかと思い始めた』
「もったいない。捨てると申すか」
『いや集めるよ。大量に集めてお湯をかけると。あっという間に温野菜。全国の主婦の皆さんもニッコリ』
「キャベツだけとか。漫画家か」
『だよねぇ』

 キャベツどころかタンポポで飢えくらい余裕で凌げると言いたいところだが、全国の一般の主婦の皆さまはどうやらそうでもないらしい。

『ところでですが。明後日帰りますよ』
「ほほう?」

 唐突に話題が変わり、うんうん、とはやてが身を乗り出すように聞く。

「……ん? それだけ?」
『それだけですけど。ああ、じいちゃん経由でもう聞いてますか』
「直接はフェイトちゃんからやけどな。念話なめんな」
『まぁそろそろオークションとかあったと思うし。結果としてはいいタイミングだったかもわからんね』
「いいタイミングというか、明後日ならそこの警備依頼とだだ被りなんやけど」
『えええ被ったのか。帰るの夕方だからたぶん競りは見れないか……まーいいやなんでも』
「適当すぎわろた」
『ところでオークションってどのホテルだっけ? アグモンだったか、スタスタだったか』
「スタスタちゃう。アグスタや」
『さっきスタスタがそれ聞いて喜んでたんだけどなぁ。とりあえずふしぎなアメあげて慰めとくわ』
「……私も食べたい。レベルとかどうでもええから、食べてみたい」
『落ちてた飴をか』
「……売っとらんの?」
『売ってなかった。売ってても金ないけど』

 そういえばそうだ。やっぱりやめよう、とはやては思い直す。

『今では、私がおじいさん。孫にあげるキャンディーは、もちろんサクマ式ドロップス』
「じいちゃん……それヴェルタースちゃう。ドロップスや』
『とある爺の』
「超咽喉飴(あさだあめ)」
『そこは超電磁鼠(ぴっぴかちゅう!)とお答えいただきたかった』
「オーキド博士に何をさせる気や……ちょー待て。そっちでオーキドさんに何もしとらんやろな」
『※スタッフがおいしく』
「頂くな。おいこら」

 まだ何もしてないそうです。



(続く)



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