はやてにお小遣いを貰った。
金額は野口さんが一枚と、五百円玉が一つ。
「あ……ええの? 嫌がるかもって思ってたんやけど」
「気持ちの問題だから。無下にしたら相手に失礼だし。複雑だけど」
「小学生に養われとる。やーい」
「黙らっしゃい」
とか言いながら、余り物のビンにお金を入れる。そんなに使う機会がある訳でもないので、丸ご
とはやてに預けておいた。
「でも割としっかりしてるね。渡す額もそうだし……あ、生活費握ってるから当然か」
「浪費したらお仕舞いやからなー。お金は大事にせんと」
「ほうら明るくなつたらう」
「論外やな。使い方を知らん人間が金を持ったらあかん! っつーいい例や」
お前小学生かホントに。
「もしここに百万円あったら?」
「貯金する」
「ですよね」
「でも今は車椅子押してくれる人おるし。旅行もいーかもしれへんなぁ」
「休学中だから暇だしね。でも小学生二人だと、宿に拒否られるやも」
「あー……なら、日帰りでいろんなとこ行ってみる。とか」
「舞空術か瞬間移動欲しい」
「どっかに筋斗雲落ちてへんかなぁ」
などなどとりとめもなく話していると、電子ジャーから緑の大魔王が……
ではなく。
炊飯完了の電子音が響いたので、夕飯のカレーにありついた。
「結果まだ聞いてなかったけど、検診どうだった?」
「むぐむぐ。ん? ……むー。悪くなってへんけど、良くもならんなぁ」
「医療費も馬鹿にならんだろに」
「いつか無料にならへんかなー……」
「初の女性総理になって医療費無しにしようぜ」
「秘書として仕事全部やってくれるなら考えてもええよ」
「やっぱ撤回」
働きたくないでござる。
「かくして女性総理の誕生は先のばしにされたのであった。どないしてくれる」
「カマがやればいいんじゃね」
「それ男性」
「じゃあ男女両方混ぜた新人類を総理大臣に」
「節子それ人間やないカタツムリや」
「エスカルゴって美味いのかな」
「茹で卵みたいって怪談で聞いた気がするわぁ」
あんまり想像したくなかったので、ふたりしてカレーを口一杯に頬張った。
「あちぃ」
「あっつ」
一緒に牛乳を一気飲みした。
「食事中に変な想像させんといて。はむはむ」
「正直反省してます。もぐもぐ」
翠屋で買って帰ってきたシュークリームを味わいながら今日の反省会。
と言いながらも、基本的に反省するのは俺である。
「どうしていつも考え無しなんやろ」
「考えるな。感じるんだ」
「何も感じんわ」
「不感症?」
「……意味は知らんけど何となくわかる。撤回した方が身のためと思うよ?」
ものすごく怖いので、平伏して撤回する。
「今後、発言には気を付けるように」
「可能なら」
「何か不可能があるんか」
「俺が気を付けていても、俺の中の人が勝手に話すことがある」
「ほう」
はやてが両手をパキパキと鳴らしはじめたので慌てて撤回すると、呆れたように息を吐いた。
「ったくもぉ……」
「とにかく。お小遣いありがとう。大事にします」
「無駄遣いせんように。大丈夫やと思うけど」
「全部チョコボールの購入に使う計画がある。金銀クチバシの検証動画作ってつべにうpする」
「そんな計画はせんでええ」
はやてのグリグリはとても痛かった。