ほぼ毎回はぐれメタルから蒐集してきたことが功を奏し、フェイトたちからまんまと逃げおおせ
たヴォルケンリッターご一行。
逃走計画発案者のシャマルをシグナムとヴィータで誉め称えつつ、さっさと海鳴へ帰還。無事に
八神家の敷居を跨ぐことができた。
「んー……あっ、おかえりー」
するとリビングでははやてが、丸くなったザフィーラに身を預けている。何やら思案に暮れてい
るようだ。
「シグナム、汗かいとるけど……どうしたの、何かあったん?」
「捜索中、管理局に感づかれまして……撒くのに少々手間取りました」
「例の、脱ぐって評判のフェイトってヤツ。脱がなかったけど」
ホンマに脱ぐ脱ぐ詐欺やったんか、とはやて。対してこくりと頷くヴィータである。
「いいなー、私も会ーてみたかった」
「それよりはやてちゃん、どうしたんですか? 何か困ったことが?」
「ん? あ。いや、ちょっと妙な夢を見てな。ザフィーラと話し合っとったん」
「ちょっくらゲンガー呼んでくる」
「私のHPを何だと思っているのか」
すぐ話がそれる仕様の八神家である。
「あのな。夢の中で、その……会ーてきたんよ。信じられやんかもしれんけど……」
「会ってとは、誰…………まさか」
「そのまさかや。雑談して終わったんやけど」
「あいつは本当に人間だろうかと、主と話していたところでな」
「人間っつーかなんつーか」
「あの子の行動だけは全く予測できないです……」
皆してはぁとため息を吐き出すのであった。無理もない話である。
「で、そん時な、『誘拐されてないけど動けない』ってゆーとったん」
「それだけだとやっぱり、ぜんぜん状況が掴めませんね……」
「しかし、安全は確認されたか」
とりあえず無事ということだし、全国探せばきっと見つかるだろう。管理局の捜索の手がゆるみ
次第また行くか、という結論に達する。
「じゃあとりあえず、シグナム、シャワー使う? もうすぐおやつの時間やし」
八神家では3時きっかりに総員でおやつを食すのが基本である(普段学校がある約一名はいつも
これを残念そうにしている)。その前にとはやてが勧めると、シグナムははいと頷いた。それを聞
いたはやては、それならば自分の着替えも頼むと言う。妙な夢だったせいか、少し寝汗をかいてい
たらしい。
「今日こそシグナムの背中を流して、八神家の面子はコンプリートや……!」
「しかし記憶によれば、約一名が未完了な件」
「あの子は別やよ。『一山いくらのオリ主用イベントなんていらねー!』って言うもんやから」
「妙なところでこだわりますね……」
だがアイツらしい、と言うザフィーラには皆頷いたのであった。
で、おやつ時。
「……」(微妙な感覚が顔に出るのを堪えている)
「は……はやてちゃん、テレビかえてもいいですか?」(別のことで気を紛らわせている)
「……」(絶対顔に出すまいと、ポケモンやりながらちょっとずつ食べている)
「がつがつがつがつ」(無言で市販の犬用ビスケットを貪っている)
そこには、はやて印のクッキーの微妙な味を堪えているヴォルケンリッターの姿が!
『……これってやっぱり、書の魔法を使ったから……でしょうか』
『もうページを消費したりしないよ』
『すっかり忘れていたが、これがあった……闇の書、さっさと完成させた方が得策かもしれんな……』
念話で緊急会議を開き、再び蒐集を考えはじめる守護騎士であった。
『うまいぞ。いるか?』
『いらんがな』
ザフィーラに冷静に切り返すヴィータだった。