やがて夏が終わる。
と同時に、宿題の提出期日も迫っているわけで。
何とかかんとか鉛筆を動かし続けて完成にこぎつこた訳だが、これでいいのかなぁ。
「はやてのペーパークラフト良くできてるね」
「こっちの似顔絵もなー。ザフィーラとか、毛並みまで迫力満点やし」
「本当、意外にも良く描けてやがんな。アイゼンとか難しいと思うけど」
本来守護騎士の皆にあげるために描いた絵なのだが、宿題で提出したいと言ったら貸してくれた
のだ。返却されたらまた返す予定。
「セミヌードktkr」
いつの間にか、はやてがぱらぱらとめくりはじめた。手元の画用紙にはセミの姿が。
「あ、こっちはなのはちゃんやな。いつの間に描いとったん?」
「昨日遊びに行ったとき、ちょちょいと」
「てか、これが未来の大魔王になるんだよな」
「見たところ、主と年も変わらぬただの少女なのだがな……」
「とんでもない。白い悪魔様には、数々の伝説が語り継がれているのだ」
「たとえば?」
「たとえば……」
全盛期のなのはさん伝説
・3砲撃5カートリッジは当たり前、3砲撃8カートリッジも
・兵力差100倍、班員全員負傷の状況から1人で勝利
・眼前に立つだけで犯罪者が泣いて謝った、心臓発作を起こす者も
・見事なディバインバスターで敵を倒しても納得いかなければその上にSLB撃ち込んだ
・任務の無い休養日でも砲撃
・デバイス使わずに手で撃ってたことも
(略)
「勝てる訳がない」
「敵うはずがない」
ですよね。自分でも言ってて、どうやったら倒せるのかわからなくなってきた。
「敵対しないのが一番だな」
「次元犯罪者に明日はなさそうだ」
「いいこと思いついた。シャマル先生の料理ならなんとか勝てるかもしれない」
「……ぐすん」
そんな感じのお昼過ぎ。
「髪伸びたなぁ」
「そっちこそ」
気づいて、お互いに指を通してわしゃわしゃと弄る。
「割と癖っ毛やね」
「くりんくりんなので、鉛筆とか簡単に巻きつきます」
「というか、八神家はみんなサラサラやな。一人仲間外れ?」
「みたいだ。こうなったら、ザッフィーだけでもパーマかけて仲間にする」
「遠慮する」
という訳で癖っ毛同盟ただ今ひとりぼっち。
「というよりも、犬のパーマは聞いたことが無いが」
「そう? でも、今ペットブームやからなぁ。どっかしらでやってるかもしれんよー」
「犬と言えば……最近白い犬のCMを見たんですけど。あれは犬用の携帯電話なんですか?」
「あれは創作なので気にせず、シュールさを楽しむものです」
なるほど、とシャマル先生は頷いた。
「いずれにせよ、そろそろ切ろう。鏡はあったし、そのうちやろう」
「自分で切るん? 床屋行かんの?」
「てきとーに軽くするだけだし。はやては?」
「んー……伸ばすかこのままか、どっちがええと思う?」
「あえて言うなら五分刈り」
「アホ」
本日二回目のグリグリがとても痛い。
「このままにしとこっかなー……あ、原作やとどんな感じやった?」
「ん? んー、セミロング? 肩のちょっと上くらいの」
「なら、そろそろ先っぽだけ切らんとな」
「切る?」
「丸刈りにされそうなので遠慮しとくわ」
「そいつは残念。バリカン取ってくるのに」
「……本当にする気やったんか」
軽い冗談だったというのに、今日のはやては容赦がない。拳的な意味で。
「さらにくりんくりんにしたるわー」
とか言っていつの間にか頭をくしゃくしゃにされるから困る。
「癖っ毛が強化されすぎて、そのうち頭の形がパフェになるかも」
「むしろ、とんでもない数の螺髪ができたりするかもなー」
「……想像したら楽しいような気がしてきた。はやて、はやて、やっていいか?」
「はやての許可以前に、拒否権を発動する」
「八神家常任理事国ではないので、拒否権は無効やな」
「なんてこった」
俺の髪はおもちゃではないのだが、どうにも止められずされるがままでした。