どうやらスカさんも、リインのメタル化とガジェット討伐隊にたまに参加していたはぐりんたち
の姿から、ドラクエ世界に強化のヒントを見出だしていたようだ。
 インテリメガネ装備のスタスタを見ながら、そんな推理をはやてに話してみる。

「また拐いに来るかもしれないので、警備をお願いしてみることにしました」
「ほほう。誰に?」
「そこらへんでメガンテしたそうにしていた、ばくだんいわの皆さんです。これで安心」

 ぐっとガッツポーズしながら答えた。

「クアなんたらさん逃げて。超逃げて」

 はやては真剣な顔で祈りを捧げる。

「にしても、機人の皆さまはこんな時期から動き出してたんだな。びっくりした」
「びっくりするのはあちら側や……えげつないトラップ使いよってからに」
「基本的に横着者だから二の矢とか用意したくないんだ。大丈夫だよね!」
「これでダメなら諦めていいレベルやろ」

 はやてからのお墨付きを得た。まぁこれ以上の護衛はいなさそうなので良しとしよう。

「あと、そろそろアリサちゃんたち来るって、さっき電話が」
「そうか。眠いけどなあ」
「自分で呼んだんやろ……コーヒーのむ?」
「のむ」

 とりあえずスカさん関連の話は切り上げて、はやてはコーヒーなんかを淹れに台所へ向かった。
と同時に、玄関のチャイムが鳴った。メガネからグラサンに換装した三倍早いクワトロさんを楽し
みにすることにして、今は少し忘れてしまおう。
 アリサやすずかとは今もちょくちょく会っている。そこそこ仲もいいと思う。
 いろんな次元世界でみつけた面白いものを見せたり、特に用もなく呼んでは茶を飲んだり、春休
みに作ってみた鈴鹿サーキットの模型を披露してみたりといった感じ。

「ミニミニサイズのゴーカートをつくるのが大変でした。泣いて喜べよ」
「どこからどう見ても出落ちじゃない……」
「あ、明らかな名前ネタなのに……どうしてここまで頑張れるんだろう?」

 やってきたアリサたちには、驚きや不思議や呆れが混ざった目で見られた。俺が精魂込めて作っ
たものには、よくこういう反応が返ってくるのでもう慣れっこである。

「見えてる地雷もトリプルトゥループで踏みに行く主義なんだ。ただ労力がかかったというか、疲れたというか、お休み」
「人を呼びつけといて寝るなっ!」
「昨日夜の3時まで作業してたんだ。その後ドラクエ3を発掘しちゃったんで、ついつい縛りプレイしてたんだ」
「飽きないなぁ……今度は、何ではじめたの?」
「リュウ、ケン、ゴウキ、ブランカで武道家素手縛り」
「文字通り毛色の違う人がいるけど……」
「一昨日見た夢にブランカが登場したので、もうこれは何かのお告げだと思って」
「一体どんな夢だったのよ……」
「『彼女こそスターの座を駆け上がっている、超時空シンデレラ・ブランカちゃんです!』って」

 盛大に噴かれた。
 ちょうどいいので、その隙をついてさっさと寝ることに。

「ザメハザメハザメハザメハザメハ」
「うるせぇ」

 だがソファーでうとうとし始めたところで、ひょっこり出てきたはやてが安眠妨害も甚だしい。

「寝るのです。カビゴンもかくやとばかりに、深い眠りにつくのです」
「人を呼んどいて寝るとか。アリサちゃんたち、コーヒーでええ?」
「いいと言わなければ、お前たちの飲み物はにんべんつゆの素になる」
「黙らんか」
「ブランカだと? 今日は大人気ですね!」
「お黙り」
「はい」

 今日も言いなりにされてばかりだ。

「アンタはいつまでも変わらないわね……」

 アリサはそんな俺をため息混じりに見ている。

「二年前に多少毛が生えた程度だな。いま俺うまいこと言った! ていうか超嬉しかったんだぞ、超!」

 どうやらセクハラだったらしく、すずかは赤くなりながら困った顔をし、はやては後ろからほっ
ぺたを引っ張ってきた。バイキルトでもかけたのか、超いてぇ。

「んーっ、やりにくい。背ばっか伸びよってからに」
「やりにくいとは思えんばかりに力が入っているのですが」
「体重かけとるから、その感覚は正解やな」
「ありがとうございます。そろそろ頬が伸びてしまいます」
「ついにオリーシュもゴム人間やな……」

 頑張って抵抗する俺だった。

「アリサにすずかよ。ダルシムな俺とブランカちゃんな俺とだったらどっちがいい?」
「どっちも島流しにしてやるわよ」
「りょ、両方ダメかな……」

 悲しさと切なさと心細さを感じる俺だった。



(続く)

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だってほら…ふたりとも緑っぽいし…



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