そろそろいのりの指輪のストックが足りなくなってきたので、久し振りにエルフの隠れ里なんか
へ買い出しに来てみたり。

「懐かしい。ぬこ姉妹が眠らされて身動き取れなくなって、起こしてもらいに来たあの時のままだなあ」
「い、嫌なこと思い出させんなっ、ばか!」
「あれは、ちょっと油断してただけで……!」
「おもいっきり油断してた俺が眠らなかった件について一言」
「そ、それは……とっ、とにかく黙るっ!」

 抗議するはぬこ姉妹。行くと言うとついて来た。八神家にはいつからか常駐しなくなったけれど
も、じいちゃんともども事あるごとに遊びに来るのであんまり以前と変わらなかったりする。
 とまあそれはともかく、久し振りなのでエルフの女王様に謁見してご挨拶をば。

「こんにちは、女王様」
「あら。お久しぶりですね、亜人族の方」
「何度か申しましたが、人間です」
「……ふふ、相変わらず冗談がお上手ですね。お元気そうで何より」

 この方は基本的に優しいのだが、何度言っても俺を人外と思ったままなので油断ならない。

「ここまで人間扱いされないと自分が本当に人外な気がしてきたぜ……!」
「猫の方々も、お久しぶりですね。……リーゼさんと、ロッテリアさん」
「違います! どうしてそこで間違えるんですか!」
「えっ……し、失礼を。しかしその方がほら、そのように書かれた紙を……」
「カンペ☆モッテリアです。よろしく」

 リーゼロッテリアが怒った。
 あと略称のつもりだったんだけど、リーゼロッテリアってなんか言いにくいな。

「そんなに怒らないで。今度すずかに頼んで、リーゼのためにを弾いてもらってやるから」

 腕をかじられて痛いのでお土産だけ渡して、ほどほどにしてお店へ向かうことにする。

「らっしゃい。ずいぶん久し振りじゃな、亜人の……ん? お前、猫人間じゃったのか」

 猫たちに頭をかじられながらお店へ向かうと、髭もじゃドワーフのおやっさんに大変驚かれた。

「全員まとめて、オリーゼロッテリアです」
「やっと改名したか。ついでに踊り子にでもなってくれば良かったのに」

 道具屋のおっちゃんは得心した顔をした。この方といい女王様といい、どうも俺の扱い方を心得
ているような気がしてならない。

「踊り子は考えとく。お店繁盛してる?」
「ぼちぼちじゃ。おっと、いつかの猫もいるな。まーた怒らせとるのか」
「俺が心のままに行動するとこうなるんだ。いのりの指輪ください」
「あいよ。誰が持つんだい」
「こいつらの穴という穴に、入るだけ入れていただきたい」

 腕から伝わる痛みが3倍くらいに。

「……ふくろくらい使った方がいいのう。ほれ、ひとつやろう」

 しかしながら、なんだかいいものを貰えたのでよしとしよう。

「そういえば、あいつらはどうしたんじゃ。銀色でぺたぺたの」
「久し振りに故郷に行って散歩するって。たまには遊ばせないと」
「そうかい。あいつらとは、もう年単位の付き合いか」
「今度、長期のバイトするとか言ってたなあ。何もかも懐かしい」
「懐かしいのう。女王の呪いに巻き込まれて、その猫たちが眠らされて持ってきたんじゃったな」
「アニマルゾンビに追い回されて、半泣きになって逃げ回ったりもしてたなあ」

 ふたりで思い出を語らっていたのに、何故か俺だけ噛まれる不公平を味わいつつ店を後にした。
 フコウヘイヘーイ!

「この馬鹿この馬鹿この馬鹿! どうして人の恥ばっかさらすのよぉお!」
「いくら俺でも、ぬこたちの恥部をいきなりくぱぁしようとはしないよ?」

 たくさん引っかかれた。

「あっ、亜人の踊り子さん。今まで何処に……き、傷だらけだけど、海賊に転職したの?」
「阿呆色の覇気を修得したんだ。目指せグランドライン」

 よくわからない顔をするエルフの村人さんだった。




「え、なに? 知らない人が仲間を連れて行こうとしてたと。透明になったから、直後にジェットストリームベギラゴンぶっぱでやっつけた……メタルゴーレムの女の子を?」

 その後、自慢げにうにうに伸びをして報告するはぐりん軍団。

「スタスタそれゴーレムちゃう。戦闘機人や……メガネ落として逃げてった? まあ、取り合いにならないようにね」

 嬉しそうにするはぐりんたちと、4番の子が欠番にならないか心配する俺だった。



(続く)

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クワトロバジーナさんとの因縁はここから始まるのです。



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