家族が増えたのは大変嬉しいことなのだが、そのうちシグナムとヴィータには露骨に避けられて
いる気がする。
「ロッコツロッココロコロコロロ!」
「ロッコロッコツコロコロコロ!」
「ロッコツ!」
「ロッコツ!」
はやてがノってくれるのは嬉しいけれど、残念ながら遊んでいる場合ではない。
「すごい警戒されてる気がするんですが。シャマル先生どうすれば」
「えっと……謝ったんですか? ココアとチャーハンの件は」
「バリバリ謝りました。これでもかと」
「でしたら、もう仕方ないかもしれませんね……」
「プレゼントにシュークリーム投げつけたら喜んでくれるだろうか」
「……反省する気あるん?」
はやてが般若みたいな顔で怖いので、雪合戦ならぬシュークリーム合戦は諦めよう。
「そういや話変わるけど、その本って未完成なんじゃなかった? 何か集めなきゃいけないとか」
「蒐集の話? 止めとくって事にしたわ。魔力吸われるのは誰だってイヤやと思うし」
「そう? 俺にコアがあったら協力するのに。シャマル先生の鬼の手見たかったなぁ」
「……あ、あなたは何処まで知ってるんですかっ」
吃驚した様子のシャマルさんだった。
「ふっふふ。恐れをなしたかシャマル先生。やった! やったぞ! フラグ立ったかも!」
「フラグ(笑)」
せっかく喜んでみたのに、鼻で笑われて悲しかった。
「で、フラグまで行かなくていいからこう、侍さんとハンマー子さんとは仲良くしたいんですよ」
「んー。食べ物は逆に疑われるから、やめた方がええかもしれんなぁ」
「となると……一緒に行動するのが第一歩、でしょうか」
「はやて」
「何や」
「夕食食材メモ準備」
「承知」
「という訳でお買い物です」
「何なんだこれ! どうしてあたしが車椅子なんだよッ!」
せっかく押してあげてるというのに、車椅子の上に縛り付けられたヴィータが五月蝿い。
「は、はやてっ、助けて!」
「まぁまぁ。本人反省してるんやし、少し付き合ってやってな?」
ヴィータが助けを求めるはやては車椅子でなくて、ザフィーラの背中の上である。いいなあ。
「……本当に反省していたら、ヴィータを縄でがんじがらめにはしないと思います」
「抵抗してくれてもよかったのに」
「おっ、お前が言ったんだろッ! はやてがやれって言ったんじゃなかったのか!」
「幻聴?」
「ううううああああああっ!」
やかましいなぁ。
「ともあれ、シグナムもヴィータも、すみませんでした。いろんなものぶつけて」
「……いや、私も大人気なかった。もう気にしていないぞ。熱かったが」
「……火傷とか大丈夫?」
「大丈夫だ。そも、魔力で保護するのが遅れた私が悪い」
故意にチャーハンぶっかけた訳ではなかったからか、シグナムは割りとあっさり許してくれた。
「家でも避けたりしなかったら嬉しいです」
「お前がキッチンにいるとき以外なら善処する」
「済まないでござる」
「あ、あたしは許さないからなッ! 絶対!」
なのにヴィータが強情で困る。
「許してくれるまで謝り倒すでござる」
「フン! 何されたって……」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴ
メンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメン
ナサイゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメ」
「うううううわぁぁああッ!」
「わ、耳元でささやいとる。身動き出来んのに鬼畜やなぁ」
新ジャンル「ヤンゴメ」に挑戦したところ、ヴィータはきっかり5分後に許してくれたのだった。