遅れてアルフに連れられて、ユーノがやって来た。

「ハイパーユーノタイムはじまるよー!」
「ぼ、僕は一体何をすれば……」

 いきなり困惑気味のユーノだったが、取り敢えず先にみんなと挨拶して回る。地球暮らしのなのは
とは久しぶりみたいで、お互いすっごく嬉しそうに笑ってた。

「アルフいなかったのは迎えだったのか……あれ。そういや、エイミィさんって今日は」
「来られなかったの。残念だけど」
「そゆこと。あ、美味しそうだねー。ひとつおくれよ」

 話し込んでいるユーノとなのはを見ながら、机の上にあったビスケットをひょいとつまんでテーブ
ルにつくアルフ。席はフェイトの隣である。
 逆にシャマル先生が席を立って、ぱたぱたとキッチンに向かった。コーヒーが切れていたので、そ
の準備をするのだろう。

「じゃあこっちはブラック!」
「むしろ紅茶で」
「バニラアイスのせてな!」
「……コーラ、飲んでみたい」
「あ、え? あ、あう……」

 それを見ていたヴォルケンズとはやて+リインから矢継ぎ早に注文が飛び出し、あうあう言って混
乱した様子のシャマル先生だった。

「でもって主人の責任として、全部混ざった失敗作をはやてが一気飲みするようです」
「堪忍許して」

 はやてが許しを乞うたため、ドリンクの融合事故は未然に防がれた。その結果ちゃんとしたコーヒ
ーが出来上がり、テーブルにやって来たユーノとアルフが一服する。

「ようやく男性陣は揃ったか」

 クロノがそんなことを言う。ザフィーラがぴくりと反応したが、とくに何も言いだすことはなかっ
た。本当はまだグレアムのおっちゃんが来るのだが、サプライズということにして伏せてあるのだ。

「アリサちゃんとすずかちゃん、翠屋から参加やて。今ので全員そろったことになるなー」
「じゃあそろそろいいかな。なのはもフェイトも、ちょっとおいで」

 ちょうどいいので、プレゼントを渡すことにする。ちょいちょいと手招きをすると、二人とも何だ
ろうといった様子で歩いてくる。

「お手」

 二人ともわんこ扱いしてみたところ、アルフから強烈なお手を腹部にいただいて悶絶する。

「おかわりならもう一回やってあげるけど」

 顔の形がお変わりになりそうなので遠慮する。
 そそくさとカーテンの裏に隠してあった紙袋を取って来て、袋分けしてあったプレゼントを取り出
して渡した。中身は水彩で描いてみたそれぞれの似顔絵と、ちっちゃな箱がひとつずつ。

「わぁ……すごい、そっくり……」
「あっ、ありがとう……!」
「聞いてはいたけど……本当に上手いねぇ。そっくりだよ」
「僕のはフェレットモードのも描いてある……」

 ユーノのフェレットは見たことないので、なのはの部屋で写真見せてもらって描いたんだけど。
まぁ好評みたいで、よかったよかった。

「これは……指輪?」

 でもって箱の方を開いたクロノが、中身を確認して言葉をこぼした。
 手の中に持っていたのは、銀色の石が埋め込まれた指輪だった。子供が気軽に着けられる軽いやつ
だ。以前行ってたドラクエ世界にエルフっぽいのがいて、仲良くなったため売ってもらえたのだ。

「ほっ、ホントだ……!」
「……あれ? これって……」
「マジックアイテム?」

 他の面々もそれに続く。中から出てきたのは同じ品物だった。フェイトが何やら気づいた様子で首
をかしげ、アルフがこちらを見て確認を求めた。勘のいい人たちだなぁ。

「いのりの指輪っていうんだけど。その銀色のは俺のコアの欠片埋め込んだ。綺麗でしょ」

 なのはが驚いた顔になって、クロノとリンディさんがすんごいむせた。このアイテム知ってそうな
のは確かにこの三人なのだが、ハラオウン親子の反応がちょっと予想外。

「超壊れにくくなったのでびっくりしました」
「最初に作ったのが50回超えとったからなぁ。指輪壊れてもコアの破片残るし……」
「回復魔法とか修復とかには適性あったのかもな。もー粉々だけど」
「まっ……ま、待て! 最初から話を聞かせてくれ、最初からだ!」

 はやてやヴォルケンズと制作秘話を語っていると、何やら大変慌てた様子になるクロノだった。な
んだろう。





 クロノに話を求められたので、いろいろとお話することに。
 粉々にだけどコアが残ってて、リインが集めていてくれたこと。とりあえず思い出の品ということ
で、ビン詰めにして保管してあること。何か銀色でキラキラしてるので、プレゼントに使ってみた今
回の件。

「そういやクロノたちには、コア残ったこと報告して無かったね。ごめんね」
「いや、まぁ、僕たちは……いいんだが」

 これがどうしたの、と聞いてみると、リンディさんが話してくれる。

「レアスキルの調査……バグ取りのですか」
「そうなのよ。研究できれば、大きな発見があるかもしれないっていう見解があって……」

 どうも闇の書のバグって、通常の魔法程度では除去できないほどになっていたらしい。これを俺の
コアが完全な形で修復したとなると、生半可な魔法ではない。おそらく何らかのレアスキルで、医療
や治療関係のものである可能性大。
 そんな推測に至るまでは簡単だった。ではそれは一体何だったんだ、という疑問の声が、管理局の
上の方から出ていたそうな。
 あの日、無人の平原で最終決戦を繰り広げた時、バグを修復した後のコアは、役目を終えて書の中
に帰って行った。その映像が残っていたらしく、書を調べれば何か出てくるんじゃないかという話が
持ち上がっていたらしい。まぁ実際そうだったわけだが。

「それでだ。ひとつ、聞いてもらいたいことがあるんだが……それを、だな」
「ああ、そっか。持ってく? ビン詰めとかにするけど」

 クロノとリンディさんが驚いた顔になった。でも俺はまぁ使えないし、クロノたちならあげちゃっ
ていいや。リインとかシグナムたちも横で聞いていて何も言わないあたり、とくに問題ある行動って
わけでもなさそうだし。きっと渡しちゃっても問題ないでしょう。

「完全に機能停止してるけど……でも指輪は壊れにくくなったし。何かあるのかも」
「……いいのか? 本当に?」
「いいよー。しかし飾っときたいので、三分の一くらいは残して欲しいんですが」
「い、いや、そんなには。このくらいで大丈夫だ。ビンも必要ない」

 クロノは五、六個の欠片を手に取って、俺にもう一度確認した後、リンディさんに手渡した。自分
の体の中にあったものがこういう貴重品扱いされるのは、なんというかちょっと不思議な感じ。

「最初クロノがなにか話そうとしてたのって、もしかしてこれのこと?」
「いや、これもあるんだが……また後にしよう。とにかく、ありがとう」
「ありがとうね、玉坂くん」
「その名前はこそばゆいのでオリーシュでいいんだぜ!」
「ねぇねぇけーとくん、見て! ほらほら!」

 クロノとリンディさんの話がそうやって一段落するや否や、横合いからなのはの嬉しそうな声が届
いた。
 何ぞと思って目を向けると、そこにはプレゼントを既に装備してはにかむなのはの姿が。喜んでく
れたみたいでよかったよかった。ジャケットに比べれば微々たるものだけど、守備力もちょっとだけ
上がるみたいだし。

「残念だ。なのはなら鼻につけてくれると信じてたのに」
「自分でやってよ……」

 想像してしまったのか、なのははちょっと痛そうな顔をした。

「でも、ありがとう! 大事にするね!」
「ところで私らのは? まだくれへんの?」
「あたしはちゃんとかっこよく描いたんだろーな」
「いやまぁ描いたけど。後で渡すからちょい待ってて」

 最後のお楽しみがあるので、今はまだ教えてあげないことにする。

「僕たちからもプレゼントがあるんだが……」
「僕からもおみやげがあるんだけど。はい、女の子はこっち」
「わ、ヘアバンドだぁ……ユーノくん、ありがとう! ちょっと着けてみる!」
「実はわたしからもあるんよー! 手作りのストラップ!」
「ストリップ?」
「ストラップ」

 なし崩し的に、賑やかなプレゼント交換会になりました。



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