ようやくパーティーはじまるよー!
ということでまずはじめに、翠屋特製のケーキを食べつつ皆で雑談する。
管理局での話、地球の話からはじまり、それはもう色々なことを。フェイトの試験勉強が順調だと
か、最近八神家であったこととか。
滅多にない機会だったからか、あんまり喋るイメージのないクロノやフェイトも、積極的に話に加
わってくれてにぎやかになった。でもって時間も流れていき、そのうちゲームをしようということに
なる。
「あ。そういえば、ユーノいないね」
ふと気がついてみると、約一名足りない人員が。なのはは知っていたみたいだが、八神家の面子は
そうではなかった。もちろん俺も聞いていない。
「遺跡の土産話を楽しみにしてるんだが。遅刻?」
「う……うん。外せない用事があるみたいで……でも、遅れて来るから」
フェイトが答え、リンディさんが頷く。途中参加も退出もバリバリ自由なパーティーなので、あん
まり気にしていなかったらしい。
「宴会には間に合うのか。じゃあケーキ残しておかないと」
「お前たち。そういうことでストップだ。食べたいのはわかるが」
メタル軍団が物欲しそうな目でケーキの箱を見ている!
「……代わりに、こっちを」
「昨日気絶したシャマル先生の気付けに使った当たりクッキーじゃないですか」
リインがなかなかえげつないことを言う。あまりにもユーノが可哀想だったので、それは却下する
ことにする。
しかし取ろうとすると、泣きそうな顔のシャマル先生が横からかすめ取って行った。そのままキッ
チンに向かったのを見ると、処分しに行っているのだろう。お疲れ様な話である。
「……黒くてごつごつしていたが、あれは一体何だったんだ」
クッキーの外見はそんなクロノのコメントから察してください。
「け……け?」
でもってそうこうしているうちに、クロノの隣にいたなのはが、何かを考えるそぶりを見せた。
「け……け、けっ、けーとくん、あああのねっ」
「文頭に人名はダメだって最初に言ったじゃないですか」
「ケーキで始めとったらよかったのに」
がたりと椅子を動かして、ほぼ全員が立ち上がる。不穏な気配を察知して、なのはが脱兎のごと
く逃げ出した。
「こら待て。逃げんな」
「ザフィーラ追っかけて! 逃がさんといて!」
「シグナムそっち行った。そうそう、ドアの向こう」
「じっ、人名言ってる! 言ってるよぉっ!」
あまりにも多勢に無勢だったため、あっという間に捕獲される。そのまま床にホールドして、罰ゲ
ームを敢行。
「にゃあぁっ! やっ、やめ、や……ひっ、ふひゃぁぁぁああっ!!」
総員で全身くすぐられて、妙な悲鳴を上げるなのはだった。
そのうち雑談も一段落し、別な遊びへと変化。
「ビンゴ! ビンゴしよ!」
「わしのフリーポケットは25式まであるぞ」
「ダメに決まってんだろ」
「失格だな」
いきなりハブにされそうになった。それは勘弁願いたいので、チート技は無しということになる。
「ビンゴまであったか。何でもありますなぁ八神家」
「プレゼント用意しとったん! 文房具とか小物とか、変なのとか!」
「変なの……」
「……変なのって」
はやてが何を用意したのか気になりつつも、ビンゴ用紙を受け取る。もちろんフリーポケットは真
ん中の一個だけなので、とりあえずそこをぽこっと開ける。
「クロノ、ビンゴわかる?」
「ん? ああ、さっき聞いたよ。一直線に並ぶといいんだったな」
カードを配りつつ、クロノと話す。こたつは女性メンバーに占領されてしまっているので、手近な
ソファに腰掛ける。
「……ユーノおせぇ」
「まったくだ」
現在パーティー参加メンバーは女性がほとんどなため、少数派な男性陣はちょっと勢いが無い。ザ
フィーラはシャマル先生のビンゴの手伝いをしてしまっているから、話そうにも相手が少なすぎる。
「ミッドではこういうのってないの?」
「あるぞ。魔法は使っているが。色々な世界から、様々な文化が持ち込まれているからな」
「地球からもってことか。旅行に行ったりしてみたいですなぁ」
「みたいですなぁ」
横からはやてが現れた。
「むぎゅー」
松葉杖で歩いてきたのをぱっと手放し、そのままソファに押しつぶしてくる。
「なーなー。クロノくん、ミッドってどんなとこ? びゅんびゅん人が飛んどるの?」
「いや、そうでもないよ。市街地は飛行が禁止されているんだ。緊急時は別だが」
「何と……ほんなら、移動手段って何やの? やっぱり車?」
「ああ。道路も通っていて……それはそうと、ぴくりとも動いていないが」
酸欠で死にそうなところを、クロノのコメントによって救われる。
「陸上で窒息死とか勘弁してほしいでござる」
「窒息は苦しそうやからなー……私もちょっと勘弁やな」
「じゃあ理想の死に方は?」
「腹じょ……悶死」
お前今何言おうとした。
「ん? 悶死ってなんやろ?」
「悶々としながら死ぬ。つまり、エロいこと考えながら死ぬんじゃなかろうか」
「死ぬ直前にえっちなこと考えたらあかんってことになるけど」
「……君たちは一体何を話しているんだ」
クロノに何とも言えない視線を向けられた。