朝起きたらでっかい隕石が落ちてきて命中して、全身バラバラのスプラッタになっちまった。
のを上から見ている、死んだはずの当の本人。
「惜しかった。もうちょっと石のサイズが小さかったら、頭に突き刺さってスーパー地球人になれたか
も知れないのに」
「……生き返れると分かった途端、この余裕。地球人恐るべし」
「や。調査によると、こいつはいつもこうらしい」
昔読んだ読み切り漫画を思い出していると、後ろから声をかけられた。感心してるようでバカに
してるのが天使な女の人で、明らかに呆れてるのが悪魔な男。
「いやいや、まさか生き返れるなんて! しかも何だか特典付きらしいし! ねぇねぇ、特典!
特典って何? ていうか早くくれよ」
「……即死にしなけりゃ良かった」
天使っぽいのから不穏な言葉が聞こえたような。天使なのにおかしいね。
と思っていると、悪魔な人がポケットから手帳みたいな何か取り出した。
「天使の白はイメージ合うけど、悪魔さんが黒スーツ、ていうのは新鮮です」
「昨今は死人もグローバル化したからな。いつまでもボロ布一枚じゃ死人たちに示しがつかん」
納得です。
「念のためもう一度確認するぞ。氏名・玉坂恵人、男。享年19。親無し子無し度胸無し、序でに言えば金も無し」
「わー……無し無しですか。ナシナシだー、ナシナシだー」
「ふ、ふふwww俺自重www俺自重しろwwwwww」
「や、お前はむしろ自嘲した方がいい。思う存分」
振ってきたから乗ってやったというのに、この汚い物を見る視線はどういうことだろうね。
「えー、貴君はこの度、我々の手違いによって小隕石が直撃、誤って死亡させてしまいましたほん
とうにごめんなさい」
「ついては謝罪を兼ねて、蘇生します…………特典付きで」
天使の人はすごい嫌そうだった。
「で、何くれんの。早くくれよ」
「二者択一、選択権がある。超能力っぽいのを得て現世に留まるか、何も得ずに家族も友達もいな
い今の世界にサヨナラするか」
「前者は、ワンダフォー。後者は、平穏無事」
「……後者って、それ以外に何かメリットあんの?」
「若返れるぞ。十年くらいだが」
じゃあ超能力に決まってるだろJK。今さら子供とかやりたくないし。
と言おうとしたんだけど、その前に黒い人が口を挟んだ。
「但し前者には、少々代償が必要でな。強い力を渡す以上は当然だが」
「ですよね」
「まぁ、安心しろ。人間だったら些細なコトだから」
「ならいいけど。で、何?」
と聞くと、答えは早かった。
「チン毛だ」
「そか。なら確かに簡単――」
なん……だと……?
「? どうした。たかが毛だぞ? ちなみに永久脱毛だからな」
「……『黒』は『穢れ』に繋がります。特に死の穢れの濃い、そこの毛を落とすのが条件です」
「それ以外の選択は無いからな。ナシナシだ。毛を落として現世か、異世界にサヨナラか」
無毛……だと……?
「……何を……迷ってるの?」
「我々にも時間は惜しい。とっとと答えるんだ」
「ヌ……ヌゥゥ……」
永久パイ○ン……だと……!?
「さぁ言え。ステイか! トリップか! はっきり声に出してもらうぞ」
「ヌゥゥゥ…………ウヌウウウゥゥ……!!」
「ということがあったんですよ」
「…………あ……アカン……アホすぎる……ハラ、よじれっ…………!」
爆笑して息も絶え絶えになる、異世界の関西弁車椅子少女八神はやてさん。屈辱を感じざるを得ない。