= 拍手お礼不定期連載 =
なのはのテスト勉強奮闘記 5:社会編
古典と現代文のレクチャーは大まかに終了。暗記以外の記述問題について、
解法をいろいろ教えておいた。どうやらためになったらしく、なのはも
本格的にやる気と自信を取り戻してきたらしい。次はそろそろ社会に
入ろうというところなのだが、むんっ、と意欲に満ちた表情をしている。
「だが間違えた場合、まつ毛に一本ずつ洗濯バサミつけてくからそのつもりで」
「最近、けーとくんの発想に磨きがかかりすぎてると思うんだけど」
「褒めるなよ」
「照れないでよ」
その後なのはとはやての二人がかりで当然のように却下されてから、勉強開始。
「と言っても知識の確認くらいやな。期末はどうしてダメやったん?」
「う……え、えっとね、思い出せなかったの。自分ではやったつもりだったのに」
「勉強が足りなかったのか、それとも頭が足りなかったのか」
「失礼だなぁもう。見ててよっ、わたしなりに頑張ったんだから!」
「がんばった結果がこれだよ!」
期末の答案をひらひらさせる。慌てて取り戻そうとするのだが、頭上に掲げると
ジャンプ力不足で届かず、俺の胸の前を一生懸命にぴょんこぴょんこ飛ぶばかり。
「かっ、かえして! かーえーしーてーっ!」
「なのはの はねる! しかしなにもおこらない」
「は、はかいこうせん使うからってギャラドス扱いしないで!」
そこでコイキングではなくギャラを指摘するあたり、だんだん
俺の思考を理解しつつあるのではなかろうかと最近思う。
「余計なことしとらんと。さっさとはじめさせんか」
とかやっていたら答案がひとりでに俺の手を離れ、はやてのもとに飛んでった。
指先をこちらに向けているところを見ると、どうやら魔法を使ったらしい。一点
集中したバギのようだった。相変わらずいいコントロールしていやがると感心し
つつ、はやてによしよしされるなのはを見ながら、それはそれとして勉強だ。
「じゃあ第一問。『縄文土器』を漢字で書きなさい」
「国語の問題になっちゃってるよそれ」
「さもありなん。歴史の最初は年代暗記モノが少なく、問題にしにくいのだ」
「ならあれやろ。『縄文土器と弥生土器の違いを述べよ』でええんちゃう?」
こういうときのはやての機転はよく回るなぁ、と素直に感心する。ものを
教えるのに向いてるんじゃなかろうか、と思ったり思わなかったり。
「っていうかその問題、女子の期末で出てたやつ? 家で見た気が」
「同じやないけど、まぁ類題やな。なのはちゃんのは……空欄になっとる」
「う、うぅ……作られた年代しか覚えてなくて……」
「じゃあその年代書けばよかったんじゃね?」
「…………あっ、ああっ!!」
どうやら盲点だったらしいが、それにしてもなのはの頭の弱さが
相変わらずすぎる。俺としてはもう安心したような気分になる。
「安心したような気分になる」
「思ってることをそのまま口にするのってどうかと思うよ!」
ついつい口から思考がだだこぼれになり、聞いたなのはが憤慨した。
「まぁ期末の記述やったら、覚えてることをひたすら書くってのもアリやなぁ」
「んー……そっかぁ。先生にアピールもできるし、書いた方がよかったんだ」
「何かしら書くといい。俺も授業の感想書く欄があったら、先生の似顔絵か教室のスケッチ描いてる」
「それでこの間のテストの答案が101点やったんか」
「101点オリーシュです」
その数字を聞いてくらりとした様子のなのはだったが、しかしすぐに立ち直り、
こっそり対抗意識を燃やすのだった。表情から丸分かりだったけど。
「約1点なのちゃん」
「1点じゃないし……けーとくんが近年輪をかけて失礼になってってる」
中学にいる間に絶対ぎゃふんと言わせるんだから、とやる気を見せるなのは。主に
はやての指導の下、歴史のポイントをおさらいするのだった。
「じゃあ、正解したらオリーシュのまつ毛に一個ずつ洗濯バサミで!」
「やめてください」
こういう機転は回さないでほしいと願ってやまない俺だった。
(続く)