グレアムのおっちゃんから手紙が来た。
 なんでもクリスマス前後に時間がとれたので、都合がいい日に遊びに来たいとか。わかってたこ
とだけど、はやてのはしゃぎっぷりがハンパない。

「あわわ、ど、どないしよどないしよ! ケーキ作ってお料理出してそれからそれから……」
「まず手紙返信するのが先じゃなかろうか」
「クリスマス本番は来週だと思う」

 慌てて準備しようとするはやてに対し、俺とヴィータの突っ込みが入るという珍事。はやてはは
っと気付いたようになって、咳を払い平静をよそおう。

「はやて、ニヤけてるニヤけてる」
「えっ? う、嘘っ」

 はやての顔が自然とニコニコしはじめたので、その試みは失敗に終わったと考えられる。

「どうする? こうなったらパーティーの日に合わせよっか」
「もちろん! ……あ、でも、ええんかな。みんなと一緒で」
「確認すればいいじゃない。メルアド書いてあるよ」

 シグナムに抱っこされたはやてが、パソコン目がけてすっ飛んでった。よっぽど懐いてるんだな
と思いながら、協力してくれもしたおっちゃんとぬこたちに思いを馳せる。

「そういやお前、面識あったんだっけ」

 すると、ヴィータが思い出したように言う。直接それと説明したことはなかったかもしれないけ
ど、最終決戦の時にぬこ姉妹はモニターに映してたような気がする。多分それだろう。

「万が一に備えて、あのとき凍結処分の準備してくれてたので。みんなも感謝するように」
「お前は時々、さらっと凄いことを口にするな」

 ザッフィーが言うのに皆頷いた。感心されているのか呆れられているのか。

「管理局のお偉いさんだったんだっけ?」
「そうそう。でもって使い魔が食いっぱぐれの猫さんたちで、ご飯作ってあげたりした」
「この人たちにも、一度会って謝らないと……」

 うつむき加減のリインが口にする。自力ではどうしようもなかったみたいだけど、悲しい思いを
させてしまったことに責任を感じているらしかった。

「じゃあ夕飯全部プレゼントする?」
「そっ、それは……」

 リインは葛藤しているような表情になった。はやての手作りごはんが大好きな子なので、それは
決して許せないのだろう。

「……は……はんぶんなら……」

 ようやくそれだけ絞り出した。苦渋の決断だったらしい。

「この人たちからは話を聞きたいって言われてたので、まぁいい機会っちゃいい機会だわさ」
「ん? 今回の事件、まだ何か残ってたのか」
「そうなんだけど、そうじゃないって言うか。個人的に知りたいことがあったらしい」
「しょこたんって誰か、とかか」

 リインがちょっと暗い顔をした。しょこたん呼ばわりは本気でイヤだったようで、その単語が話
に出てくると今でもこんな感じである。

「まぁいいや、とりあえずご飯作りましょうか。シャマル先生、今日何にする?」
「そうですね……パンとシチューと、お魚のホイル焼き、とかどうでしょうか」
「いいな。あたしも手伝うよ」
「シチュー……?」

 リインは楽しみそうな顔をした。これは頑張らなきゃ。と、シャマル先生が張り切った様子でキ
ッチンに向かう。

「ヴィータちゃん、万能ネギお願いしますっ」
「煩悩ネギ」
「万能ヌギ」

 最近のシャマル先生は意外と頼りになったりするので、横からまったりお手伝いしてました。





 うまかっ です。

「そういや、お前のコア残ってんだって? 今聞いたんだけどさ」

 こたつでくてーっとしていると、ヴィータがそんなふうに聞いてきた。後ろに座ったリインの足
の間に、すっぽりと収まった格好だ。サイズ的にぴったりらしく、リインも結構気に入ってるらし
い。

「そういや、ヴィータたちには言ってなかったか。ほらこれ」

 戸棚からビンを取り出して、こたつの上にトンと置く。全員がそれをじっと見つめた。中に入っ
たコアの破片は、キラキラと綺麗にひかり輝いている。やったことないけど、ビー玉砕いたらこう
なるんだろうか。

「……色一緒じゃなくてよかった」
「確かに。そうなったらちょっと複雑だったかも」

 ちなみに俺のコアは綺麗な銀色だった。はぐれメタルから集中的に魔力集めてたので、きっとそ
の影響なのだろうと個人的には思っている。

「ていうかこれ、体の中に入るんだろうか。ガラスっぽくてそうは見えないんだけど」
「体外に出ている時点で、普通のリンカーコアとは一線を画しているのかもしれんな」
「RPGのラスボスみてーだな。人型のと本当のコアが別になってるっていう」
「オリーシュがラヴォス第三形態に変身するようです」

 とか言っているとゲームがやりたくなってきたので、有志を募って遊びに入る。
 八神家も七名からなる大家族になったので、やることもまちまちだ。ゲームする俺達、見物する
リイン、お菓子作りに挑戦するシャマル先生、それを物欲しそうに見てるはぐりんたち、将棋の駒
を並べてるシグナム、フツーに寝てるザフィーラ。

「じゃあこれに勝ったら、リインに手作りアップルパイを御馳走しよう」

 そう言ってやるとリインがスマブラで頑張って挑んできたのだが、メタル化能力もゲームの前で
は張り子の虎。投げられまくった後吹っ飛ばされて敗北した。クールっぽく締まってた真剣な顔が、
ふにゃりと崩れて涙目になる。

「ちゃんと手加減せんか」

 その直後、はやてのサムス砲にぬっ殺された。そうしてからリインを慰めるのを見ると、母子の
背丈が逆になったように見える。

「それはそうと、おっちゃんの来る日取りはどうなったんでしょう」
「あ、そうそう! パーティーの日に合わせて来るんやて!」

 たぶんぬこたちの差し金だと思う。グレアムのおっちゃんはともかくあの食いっぱぐれのぬこた
ち、ヴォルケンズの分のパーティー料理食いつくすのが主な目的みたいだし。

「となるとゲーム本体が足りないような」
「コントローラーもだいぶ不足すんな」
「なのはちゃんに当日持って来てもらおっかー」
「じゃあ明日頼みに行ってみる。パイも明日多めに焼いて、持ってってやるか」
「ついでに桃子さんに味見してもらって、習ってきたらええんちゃう?」

 そんな風にクリスマスの計画を練りつつ、皆で夜まで遊ぶのでした。

「将棋の相手をしてほしいのだが」
「こっちのクッキー作りも手伝ってほしいですっ」

 割と忙しかった。



前へ 目次へ 次へ