そのまま時間稼ぎと戦闘行為を繰り返し、結局なんとかなりました。
 シャマル先生がコアを引っ張り出してくれて、ただ今攻撃組が全員で魔力チャージ中。様々な色
の光が集束していく様は、まさに圧巻の一言である。

「この光景は第3期で観たような気がするんだが……微妙に違ったっけ……?」
「オリーシュが3期ラスボスと申したか」

 そんなはずはない。と思う。
 というかそれはすなわち、某博士に人体実験とかされてしまうフラグ。ナノマシン突っ込まれた
り特に味覚が駄目になったりするのはイヤなので、正直勘弁してほしい。

「じゃあみんな、チャージ終わり次第やって下さい。容量あるみたいだし、思いきり」

 話題を切り替え、皆に通達。砲撃の準備が徐々に整いつつあった。
 魔力使いまくりで疲労の色が見えていた闇の書の中の人は、シャマル先生がオリーシュコアを抜
いてから気を失ってしまっていた。ので、はやての座る隣に寝かせてある。メタル化は解けていて、
見ていると綺麗な女の人だった。

「……いいの? いらないの? 本当に」

 というわけでふよふよ単独で浮かんでいる、輝きを放つ小さな球体。それに杖を向けながら、な
のはがそっと訊いてきた。後押しするように頷いてやる。

「嫌な役目だったかね。ごめん」
「……ううん、任せてくれてありがとう。信じてくれたんだよね?」

 と言って、なのはは笑ってみせるのだ。おふざけ大好きな自分としてはこういう真面目な雰囲気
に馴れてないので、何か恥ずかしい気がする。顔を背けた。

「……あ、照れてる? ねぇねぇ、照れてる?」

 にこにこしてるなのはが生意気なので、ツインテールになった髪の房をかた結びにしてやった。
その上で口の中に指を突っ込み、外側に向けてぐいぐい引いてやる。

「学級文庫って言ったら許してやる」
「ふゅーっ! ひはふぅぅう!!」

 砲撃チャージ中なのをいいことに遊びまくってやったが、クロノに見つかって怒られた。残念な
がら作戦失敗はイヤなので、しぶしぶ解放することにした。

「もっ、もう! もう! さっきは助けてくれたのにっ! お礼言ってあげないよっ、もぉ!」
「救い料百億万円。ローンも可」
「あげないよ! ブタにコバンだよ!」
「猫に真珠と申したか」

 間違いに気付いたらしく、なのはが真っ赤っ赤になった。

「うー…………うぅ……」
「オリーシュがなのはちゃんを首まで真っ赤にさせとる件」

 書の中の人の面倒を見ていたはやてが、横からそんな風に口をはさんだ。言葉通りにとらえると
フラグの香りがするのだが、事実に即すると色気なんぞ欠片もない。

「作戦終了までやっている気か」

 いつの間にか飛んで来ていたクロノにがみがみ叱られた。





 コアがぶっこあれた。

「欠片みたいな光が書の中に入っていったが……」
「あ。それ、白抜けのところ。バグ直して帰ってった」
「白抜けってバグ部分だったんですか……」
「ホントだ。今は全部黒文字になってら」

 ヴィータがぱらぱらと書のページをめくった。抜けていた文字は全部埋まっていて、本来あるべ
き状態になっていた。文字の中身は相変わらず読めないけど。

「……君のコアは一体何だったんだ……」

 一体どんなレアスキルが、とクロノは言った。俺の推測だと、治療関係だったんじゃなかろうか。
あるいは魔人ブウ見たいに、他のものを吸収して強くなったり。

「…………」

 コア捨てて良かったかもしれん。特に後者。下手するとえらいことになった気がする。

「あっ、ああー――っ! 全員でやっちまった! 一番最初に撃ったら料理だったのに!」

 ヴィータが思い出したように言って、ものすっごく悔しそうにした。あんまりにも悔しそうなの
で、仕方ないから週末に作ってやろうと言ってやる。

『あ。それなら、私もそのとき……』
「いいでござる。今度遊びに来てください」

 クロノと通信していたリンディさんが、また食いついてきた。この人にはクロノのためにも、砂
糖と塩を入れ間違えたプリンを作って差し上げようと思う。

「……茶碗蒸し?」

 はやてが言ったけど、そんなに美味しいモノにはどうやってもならないと思うんだ。

「お疲れ様でした。作戦成功、皆ありがと」
「……頭を下げるな。何かを失ったのは君だけだ」

 お礼を言って回る。クロノは止めたけど、けじめはけじめ。

「……なっ、何?」
「いや、結局悪魔モードが見れなかったと思って」
「そっ、そうだよ。悪魔なんかじゃないよ? 分かったでしょ?」
「ドラクエ世界から悪魔の尻尾を持ってこようと誓うオリーシュだった」
「逆に弱体化するんとちゃう? ここは般若の面の方が……あ、同じやった」

 なのはがシャマル先生に泣きついた。何故シャマルと思ったが、よく考えると類友でした。

「原作通りになったのは脱ぎ魔だけか……」
「ん? しょこたんは?」
「……助からなかったみたい。今思い出したけど、お別れイベント、確かあった」

 横になった中の人の髪を撫でながら、そか、とはやては言った。

「帰ったら美味いもの食わせてやろう。はやての手料理食べたい食べたい言ってた……し……」

 そういや忘れてた。
 はやての舌、これで戻ったんだっけ。あと足も完治するような気が。

「まぁその前に、目を覚ましたら名前決めないと」
「しょこたん違うん?」
「割と本気で嫌がってたから変えてあげて」
「えー……」

 はやては残念そうにした。

「事情聴取、早く終わるといいですね」
「まぁ終わらんかったら、アースラでお疲れ会すればええか!」
「早く帰りたい……こたつに入りたい……」

 鑑識の魔導師さんたちがやってくるのをみて、俺はぽつんと呟くのだった。



(続く)


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