何かマズい気がする。
 でも特に問題ない。
 問題ないのにマズい気がする。

「はやて。アホがうなってる」
「朝っぱらから何やっとんの」

 妙な胸騒ぎを感じて布団の上でうんうん言ってると、起こしにきたはやてとヴィータが変なもの
を見る目を投げかけていた。

「あれはやて。もう風邪いいの?」
「おかげさまでな。今日は快気祝いで、夕飯豪勢にするよー」
「で。お前、何考えてたんだ?」
「えと、何かあれ。うんこついてないのにうんこくさい的な感じ」

 二人してじりじりと距離を取った。

「いや別にうんこは比喩で。何かこう、虫の知らせ的な」
「馬鹿言ってないで着替えろって。朝ご飯できてるぞ」
「朝ご飯……ザッフィー用の煮干しか!」
「それでええなら、一人だけ煮干しにしよか」

 朝食が貧弱すぎてかなり悲惨なことになりそうなので、止めてもらう。
 着替えて出てってテーブルにつき、皆そろっていただきます。

「……どうした? 考えごとか?」

 ぽけーっとご飯を食べていると、向い側のシグナムに話しかけられた。怪訝そうな視線でこっち
を見ている。

「何かマズい気がする」
「? 何がだ」
「んー……や、わかんないけど。なけなしの原作知識を鑑みるに」
「当てにならん知識なんやし、そんなに重要視してもしょうがないと思うけどなー」

 はやての言ってることは分かるんだけど、感じてしまうものは仕方ないのである。必死こいて思
い出そうとするんだけど、どうにもこうにもいかないというか。

「……気になったのだが。ひとついいか?」
「シグナムが俺に気があるという。唐突な愛の告白に困惑のオリーシュ。モテる男はつらいぜ!」

 冗談に対して割と殺気こめて殴りかかってくるのは止めてほしいと常々思う。

「知識、とは以前も聞いたが……予知ではないのか? 怪しいとは思っていたが」
「あー、うん。かいつまんで話すとですね」
「話すん?」
「ん。別に、家族に隠すことじゃないし」

 てな訳で、出身世界のことをかくかくしかじか。ここって実はアニメ世界だよーってことをまる
まるうまうま。

「はぁ……アニメですか」
「あんまし驚いた風じゃないね」
「証拠はないが、お前が嘘を吐くメリットも見当たらない。予知能力と見ても大差がない訳だ」
「てかその知識って、お前がここにいる時点で微妙に意味なくなってねーか?」
「確かに、そうなんだけど」

 ちょっと不安だったけど、守護騎士の皆はそんな感じに流してくれてよかった。ごめんね隠し事
とかしちゃってて。

「それでだ。お前の懸案事項と、その知識。一体どう関係があるんだ」
「何か、問題ないのにマズい気がする」
「……現状特に問題はないが、知識によるとそろそろ重大なイベントがある、ということか?」
「そう、それ。そんな感じ。それ起こってないとマズい気がして。エンディング来ないじゃん」
「エンディングまで、観るんじゃない」
「はやて。それキャッチになってない。名作保証しても誰も観てくれない」

 ちょっと真剣な話し合いをしていたつもりだったのに、いつの間にかgdgdになってる八神家
の面々が恐ろしすぎる。何か一気に雑談モードに入っていく。

「……おかしい。妙だぞ」

 ま、いっか。と思いはじめていたのを引きとめたのは、食事を終えていたザフィーラだった。

「以前、私と念話で話したことがあったな?」
「んー……ん?」
「買い物に行った時だ。背中に乗って走っただろう」

 言われて、はたと思いだす。
 そういえば、そんなこともあったような、町中でザッフィーが喋ってるの聞かれるとまずいから
って、確か念話で話してたっけ?

「予知関連の能力かと思っていたが……リンカーコアも無しに、どうやって念話をしたのだ?」

 ん?

「シグナム。リンカーコアないと、念話ってできないんやっけ?」
「……ええ、基本的には」
「じゃあ、異系統魔法のテレパシーとか」
「その能力に覚えがあるなら、そうかもしれんが。だが――違うのだろう?」

 ……んん?







「すなわちこれは! 『魔法が使えないフリして実は使える』というオリーシュ定番の覚醒フラg」
「それはねーよ」
「どう考えてもありえん」
「いずれにせよ、体内にコアはない。お前が魔法を使えないのだけは確実だ」
「覚醒(笑)」

 全俺が泣いた。神様訴えてやる。



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そろそろA’s入ります。導入編開始。

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