ガジェットの方は、クロノによると最近、出現がはたと止んでいるらしい。
 大方モデルチェンジの最中だろう、とのことだった。針団子バージョンをリインがぽきぽき折り
つつけちょんけちょんにしてから、確かにまだ日は浅い。
 図鑑の完成品を渡すついでにそんな現況を聞き、次はどんな奇想天外な機械になるのかわくわく
していると。
 クロノから不意に、何枚かの地図を渡された。

「申請の結果、新たにいくつかの管理・管理外世界の探検を許可された。その地図だ」
「テンションあがってきた」

 ただし危険なので、知り合いの魔導師から一人以上連れていくという条件つきらしい。パートナ
ーを選んで冒険する、というゲームみたいな展開に、ドキドキワクワクがおさえられない。

「できればリインを連れていって欲しい。近ごろ上から、彼女のデータをという要請が多いんだ」
「わかった。探検は少し軽めになるけど……あとあの人、本気出したら測定器爆発させるよ?」

 「ちっ、スカウターが爆発しやがった!」というやつである。耐えられるのを用意してある、と
準備のいいクロノは答えた。

「しっかし、楽しみだ。砂漠の世界に森林の星、常に夜の大草原ときたか」
「コア持ちの生物も多いから頑張ってくれ。報酬も上がるそうだ……あと、前回の礼金なのだが」
「報酬はいいから、今度はガセじゃないヒトカゲの情報をお願いします」
「……言っておくがあのサラマンダー、特級のレアモンスターだぞ」
「でも二足歩行してなかったし、進化もしないし、尻尾に火が燃えてなかったし」

 どんな化け物だ、とクロノは後ずさった。言われてみるとこの描写では、ただの怪物と受け取ら
れても不思議ではなかった。



 なんだか受験勉強を始めた俺たちに刺激されたらしく、なのはもフェイトも今度の夏休みで、管
理局の学校とか何だとかに魔法の勉強をしに行くことにしたのだという。

「8月31日の二人の様子が楽しみだぜ」

 なのはとフェイトは憂鬱そうな顔をした。

「あぅぅ……これさえなかったらなぁ……」
「夏の宿題、けっこう多いから……」
「管理局はそろそろ精神と時の部屋を作るべき」
「十年先まで予約でいっぱいになるやろ」

 さすがのはやてもピオリムあたりが限界で、世界の時間そのものを早くしたり遅くしたりするの
は無理とのこと。火を燃やしたり雷落としたり何でも魔法で出来そうなものだが、単独の時空操作
はレアスキルの域に入ってしまうのだとか。

「……フェイトは電気を細かく操作して、筋肉刺激して超運動できるようになると信じてる」

 フェイトの属性を考えるとかなり期待が持てると思ったのだが、本人はぶんぶんぶんと首を横に
振るばかり。

「まったく。どいつもこいつも期待外れだぜ」
「期待のレベルが高すぎるよ……」
「いやいや。俺はマックでモスバーガーを要求したりはしない主義だし」
「当たり前やろ」
「ぬこ姉妹は間違えてモスでマックシェイク頼んだことあるけどな!」

 うるさいうるさあい、と後ろが何やら騒がしいけど放置で。

「解けた」
「ああああ……負けてもーた……」
「この人、頭と手の動きが分離してるとしか思えないよ……」
「……受験も、絶対大丈夫だと思う」

 フェイトからお墨付きを頂いた。それはそれで嬉しいのだが、俺は今の発言から、ふとひらめく
ものがあった。

「ドクターとダイジョーブ博士って、どっちがすごいんだろう」

 なのはとフェイトは首を傾げ、はやてはキラキラした目でこちらを見る。

「将来この2人のサイボーグ対決になっても俺は驚かない」
「超人野球選手とガジェットの夢の対決か……胸が熱くなるわ……」
「2問目終わった」
「あっ……ああーっ! す、少しは手加減せぇ!」
「言いながら手が動いてる……」
「はやてちゃんも、十分すぎるくらい早いのに……」

 勉強はそんな感じで、今日も続いていく。



 そうして春が行き夏が過ぎ、秋が去り、冬が明ける。
 季節はくるりくるりと巡り続け、ゆったりとした時間が流れていった。



(続く)

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さてそろそろ。



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