試験勉強をはじめてからというものの、聖祥に通ってる皆が様子を見に来るようになった。なの
はとかフェイトとか。

「な、なんで話しながら勉強できるんだろう?」
「どうしてこれで成績上がるのよ……」

 でもってなのはから様子を聞いて来たすずかやアリサなんかは、ぐだぐだ話しながら算数を解く
俺たちを見て特に納得いかないといった表情である。

「文系の時間はもっと楽しいぞ。童話や歴史をいろいろ改造したりとかで」
「昨日の国語の『はだかの王様?ぱんつじゃないから恥ずかしくないもん!?』は傑作やったな」
「いつのまにか大作が出来てるんだよね。歴史の『牛若の拳 十二世紀末亡命者伝説』とか」
「……今度、私も来ていいかな。勉強しに、道具持って」
「……そうね。たまには基本をやり直すのも、わ、悪くないかもしれないわね」

 と何やら期待するような表情になり、勉強会の約束を取り付けてきたのが先週の話。
 でもって一週間後、すなわち今日。確か来るとか言っていたので、先に勉強を始めつつ待つ。

「図鑑完成したし、ちょうどいいから見せてやるか」
「お。ついに完成したん。……残り3ページになってから、ずいぶんかかったなぁ」
「最後はレアなモンスターを厳選した。ヒトカゲがいるっていうから見に行ったりもした」
「何と! で、で? おったん!!」
「ただのサラマンダーだった」

 はぁ。とふたりしてため息を吐く。

「ポケモンマスターへの道は険しそうやな」
「まぁぼちぼちやるさ。あとクロノから、なんかミッドの学会に誘われた」
「おお。発表とかするん?」
「パネル作れないから発表はしない。でもいろんな人が、なんか動物について聞きたいらしい」

 はやてはほほう。と興味深そうな声を出した。

「オリーシュも偉くなったもんやなぁ」
「タンポポで空腹を凌いだあの日が懐かしいわ」
「全くや……あ、でも、説明できるん? 動物についての、その感覚的なものとか」
「それだ。『動物の言うことが分かるのはどういうことか』とか聞かれても、正直困る」
「客観性ゼロやからな」
「『あっ、それははぐりんがうにゅーんってなって、ぐにゃぐにゃぽちゃんだから、シーザーサラダを食べたい気分なんですよ』」
「日本語でおk」

 オリーシュはサイエンスに向いていないのかも知れなかった。

「将来どうするん? 冒険家?」
「冒険家になるかはわからんが、暴言家にはなっているかもしれない」
「儲からなそうな職業やな」
「むしろお金減ってくよね」
「損害賠償とかでね」
「日清戦争の賠償額は?」
「ラ王二億食」
「食べ飽きて燃やされるよ。『ほうら明るくなったろう』ってされるよ」
「ならラオウ二億人やな」
「中国半端ないな」
「二億人のケンシロウとユリア用意せんと」
「もういいから天に還れよ」

 とかぐだぐだ言ってる間に、チャイムが鳴った。
 玄関まで迎えに行くと、アリサとすずかだ。ようやく来たか。

「遅かったな。『毛利元就「そこに3本の矢があろう。アロー。わし今うまいこと言った」』の時間はもう終わったぞ」

 不意をつかれたのか、アリサもすずかも吹き出した。

「そのあと息子たちが黙って矢を弓につがえてジ・エンドやなそれ」
「さすがの俺も『この親父死ねばいいのに』って思うわ」
「お宅もやりよるな」
「照れるね」
「アンタの頭の中、脳みそ以外のものが入ってんじゃないわよね……」

 アリサの疑問に、失礼にもこくこく頷くすずかだった。



(続く)



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