春が過ぎ梅雨を越し、夏がやって参りました。

「1学期もあっという間やったなー」

 しみじみとはやては言うが、あっという間な割にイベント目白押しな1学期だったと俺は思う。
家ではヴォルケンズ生誕一周年パーティーもやったし、学校では毎日がクライマックスだったし。

「というわけで、あまりあっという間には感じないのですが」
「……あっという間! あっという間やったやろ!」

 机をばんばんと叩いて、何故かこだわりを見せるはやて。その机の上を見て、理由を察した。

「あっという間だったから、荷物を持って帰り忘れるのも仕方がない、と」
「んんうぅ……」

 机のうえに山と積まれた荷物に突っ伏して、はやては嘆きの声を上げた。学校にはよくある事。
可哀想なのでいくつか持ってやることにした。その上で促すと、なんとか再起動してのそりのそり
と動き出す。

「鍵盤ハーモニカにプール用具になわとび。あとこれはあれか、図工で作った貯金箱」
「早めに持って帰らんかったのは失敗やったわ。持たせてしもーてごめんな?」
「夕飯シチューで」
「よっしゃ」

 荷物係と引き換えに、夕食メニュー決定の優先権を発動することに成功。パンより和食派のシグ
ナムには悪いが、まぁ今日は勘弁してもらおう。朝が和食だったことだし。

「自由研究どないしよ」

 クラスメイトたちと学期末恒例の「じゃあな! しみったれたじいさん長生きしろよ! そして
そのケチな孫(ry」をやってから、がっちゃがっちゃと荷物を持った帰り道ではやてが言う。

「ミミック連れてきて『貯金箱』って言えばよくね」
「呪文唱えはじめたらどないするつもりなんか」
「あらかじめMP削ればいいんじゃね」
「『お、宝箱を作ったのか。中身はどうなって、えっ、あっ、痛い』」

 生徒の宝箱に手を噛まれる可哀想な先生の姿をまざまざと想起させられた。気の毒な気分になっ
たので、ミミックを使うのはやめておこう。

「なははー。なんやろ、この話題、去年もあったよーな気がするなぁ」
「あん時は、欠席のはやても課題出されて嘆いてたんだったか」
「あったあった。かき氷の食べ過ぎでおなか壊したりとか」
「今年はヴィータのに、イチゴ味と偽ってケチャップぶっかける計画がある」
「えらいことになりそうやし却下な」

 あいつ赤好きそうなのに。

「んお。セミや」

 ジジジッと掠れた声をあげながら、電柱からアブラゼミが飛んでいった。

「アブラゼミか」
「アブラゼミや」
「カナ……」
「カナ……」

 アブラゼミじゃなくなった。節足動物の進化についていけず、俺たちの頭がカンブリア爆発。

「思い出したけど、去年はセミもスケッチしとったっけ」
「そう。そうだった……今年はイラストつきモンスター図鑑にでもしようか」
「あ、えーかも。でも図鑑やと、データ集めるのが大変やったりせん? 身長とか」
「それについてなんだが、クロノのクリスマスプレゼントって説明したっけ」
「ん? ううん、聞いとらんけど?」
「闇の書サイズのポケモン図鑑」
「マジで!?」

 マジで。

「『ポケモン図鑑風モンスター図鑑』だった。ポケモン図鑑についてはちらっと話してたから」
「はー。クロノくんも、凄いものくれたんやなぁ」
「これで後でイラスト化するのも安心。『野生生物の調査に協力を云々』のメモもついてた」
「それは協力せな。――ポケモン図鑑風って、自動でデータが増えるやつ?」
「音声はアニメ版準拠でした」
「細かいんやな」

 ページは666なんか。甘いね容量777だわ。とか話しながら、てけてけ歩く俺たちだった。

「まずプールやな。ちょうど水着あるねんけど……」
「偶然なのだが俺も今日持ち帰りのため所持のうえ、そして今日は午後の買い物まで時間がある」
「プールが私らを呼んどるな」
「はやての集束ヒャダルコで一部水域だけ超快適にしようぜ」
「承知」

 寄り道しました。超気持ちいい!



(続く)

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夏までに中級魔法覚えました。あと飛んだりとかも>はやて
クロノのプレゼントはいろんな所で言われてましたがこれね。
「多分趣味で使うだろう」+「生態調査に使ってもらいたい」の意図。



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