「はやての足が回復してきたので復学するよー」の旨をとりあえず手当たり次第にメールしたと
ころ、まずなのはとフェイトが30分と経たずすっ飛んできた。

「はっ、はやて、足がなおっ、治ったって……!」
「いらっしゃい。リハビリうまくいってな、ここまで戻ってん」
「あ……ほっ、ホントだ。ホントだっ」

 はやてが玄関に現れると、二人とも感極まったような表情になった。そのままどちらからともな
く近づいて、三人でむぎゅーときつく抱きあう。

「ヴォルケンズとリインたちが泣きそうだ」
「う、うるせえ。誰がっ……お前、どーして背中向けてんだよ」
「……人が幸せそうにしているところを見ると、全身にじんましんが出て寒気がするんだ」
「声が震えてるぞ」
「天の邪鬼め」

 やかましいので退散する。それにしてもはやてが立った瞬間じゃなく、今になってこんな状態に
なるのはなんでだろう。もらい泣きとかいうアレなのか。

「……ま、まぁ、良かったんじゃない。お前も、魔法捨てた甲斐があって」
「へ、変な顔しないの。ほら、ティッシュ」

 とか言ってくれる、先に戻ってたぬこ姉妹(滞在中)。ヴォルケンズ嫌いって公言してたりする
けれど、実は根はいい人なんじゃないかと思います。

「この俺にティッシュを食えと申すか……これだからリア充は。落下しろ」
「リア……? わ、私はアリアだって何度も!」
「モハメドアリア?」
「リーゼアリア!」
「リーゼントとな。名前と髪が一致しないからセットしてやんよ。『グレートだぜ』とか言え」

 怒られた。

「まぁはやての足は俺のコアとは直接関係ないんだけどね。ところでグレアムじいちゃんは?」
「あ、そうだったっけ……父様なら、さっき一人で、その……」
「……そか。まぁ一人にしておくわ」
「お、お前が空気を読むなんて……!」
「やっぱチャーハン持って様子見に行ってくる」

 止められた。

「ドドリア、離して」
「アリアだよ!」

 責められた。





 でもってその後しばらくして、なのはたちも玄関から上がって落ち着いたところでグレアムじい
ちゃん再登場。よく見なきゃわからん程度に目が赤かったけどそれはそれ。

「何でしょうか。ついに俺に遺跡探索の依頼が来たとか」
「いや。実は……はやてが望むなら、の話だが」
「私たちが魔法の指導してあげようか、ってことなんだけど」
「リーゼさんたちが?」

 みんなの前で話しだしたのは、そんな提案だった。いわく、ぬこ姉妹がついて来たのはじいちゃ
んの護衛のほかに、そんな意味があったのだとか。

「やる」

 即答だった。少しは悩め。

「独学はどうした」
「んー、自分でやってみたんやけど……初歩のマスターまでは教わった方が早いって思ってん」
「そうでもない気が。マホトーン修得したら終了なんだし」
「犯罪者相手ならそーやねんけど。でも他にも、空飛んだりもしたいしなぁ」

 あとは物を運んだり、壁作ったりとか、と挙げていく。ベギラゴンやらイオナズンやらを自力で
覚えるのもいいけど、やっぱりそういった応用力のあるものも勉強したいのだとか。なるほど。

「教本読むだけじゃ限界あるしなぁ」
「把握。じいちゃんどうですか。これを機に八神家に長期滞在とか」
「あー! それ、ええな! ええかも!」
「む……む?」

 戸惑うグレアムじいちゃん。満更でもないようだ。
 よく考えると向こうの家に管理局員が出入りしてるかもしれないから、難しいかもわからんけど。
まぁ今後はしがらみもなく、本当の親子みたいになってほしいなぁと思ったり。

「あ、あのっ。わたしも、一緒に教わることってできますか?」

 しかしふと気づくと、なのはが声をあげていた。見てみると、表情は真剣だ。
 意外そうな表情をするぬこ姉妹だが、そのまま話すのを聞くとどうやら乗り気らしい。そういや
なのははユーノに教わってたんだっけか。ユーノにはなかなか会えないから、教えてくる人がいな
くて困ってたのかも。

「原作やとどないやったん?」
「空白期はあまり記憶がないのでわからん。何か事件があったようには思うんだが、なのは絡みで」
「使えへんなぁ」
「お役に立てず」

 はやてからの質問には答えられんかった。中途半端な知識は今さらなのでどうとでも。

「ま、誰かさんのぶんまで頑張って来たるから。期待して待っとってなー」

 とか言って、にかにかしながら肩を組んできた。口にはしないけどやっぱこいつ優しい。

「気持ちは嬉しいが無茶はすんな。車イスを押す作業お断りします」
「む、心配された……ふふー。怪我なんてせーへんから、安心しとれ」
「暮らし安心」
「クラシアン」
「水道トラブル5000円」
「家庭のトラブルお断りします」

 家庭の問題は裁判所へどうぞ。

「あとできれば、ソニックとサマソを会得して欲しい。『待ちガイル式訓練法』とかやろうぜ」
「残念やけどリュウ使いなので却下」

 却下された。他の人に頼もう。

「なのは」
「お断りだよーだっ!」
「フェイト」
「わ、わたしも、ちょっと……」

 スト2でいじめられた記憶しかないためか、次々にお断りされる。こうなるとリインが頼みの綱。

「…………」

 両手でばってんを作られた。ちくしょう自力でサマソ会得してやる。



(続く)

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毎回毎回名前を間違えられるアリア。挨拶みたいなものです。

はやてはなのはやリインたちとは対照的に、オリーシュが払った犠牲についてはあまり触れません。
気を遣って態度を変えられるのはあんまり、と思っていることを感じているからです。オリーシュもそこらへんは察しているみたいな。



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