俺のコアの加工を検討する人が撤退というか激減してしまったため、一部が返ってきた。
 もともと家にも残ってたけど、ちょうどいい機会である。ここは八神家でも、こいつを使って実
験やら考察やらをしてみようと思う。

「リイン的にはどう? 何かに使えるかわかる?」

 とはいうものの全く未知の材料なので、唯一体内に持っていたことがあるリインに聞いてみる。
いま案が出てくるとしたらここだ。むかしは体の一部だったらしいし、分かることは少なくともヴ
ォルケンズより多いはず。

「カートリッジとか」
「おー、なるほど。魔力吸うなら、確かにいいかも」
「……それより。クロノたち、指輪を」
「あ。一時期はめて使ったこともあるけど、大丈夫だったって。やっぱプレゼントしたからかな」

 これは本当に助かったというか、よかった。プレゼントしたものが呪いのアイテムだったら、さ
すがの俺も全力で土下座するしかない。別になのはあたりが「みかんの汁が目に入りやすくなる症
候群」にかかっても面白いだけだが、クロノが行く先々でタンスの角に足の小指をぶつけていたらと
想像すると、これは申し訳ないどころではすまされない。
 それにしても意味不明な俺のコア。なのはたちには一応「使わないで」と言ってあるが、このま
まではその制限も解除できん。そのうち危険物として、ロストロギアの仲間入りを果たしてしまっ
たらどうしよう。

「後のレリックならぬ、オリックである」

 勝手に命名してみたのだが、リインには伝わらず首を傾げていた。レリック云々は話してなかっ
たかもしれないし、もう忘れているのやも。

「ボルビックに聞こえた」

 惜しいけど微妙に間違っている。

「そういや喉乾いたね」
「うん」

 でもって水を連想して、欲しくなってきた。話を一時中断し、二人揃って台所に足を運ぶことに
する。

「とぉ」

 その途中、はやてが背後から襲撃してきた。腰のあたりに衝撃を受ける。

「どこ行くんどこ行くん」
「はやてがチープトリックになって俺を襲う。背中を見られたら皮が剥げる、かも」
「もうリインに背中見られとる件。なーなー、どこ行くん」
「振り返ってはいけない場所」
「連れてかれてしまい」

 しかしちゃんと冷蔵庫と答えたのに離れないので、そのままずるずると引きずって運んでいく。
どこか羨ましそうに俺を見ていたリインにはコップを取りに行かせ、作っておいたお茶を冷蔵庫か
ら取り出す。

「はやて……」
「ん? んー……、ん!」

 はやてがソファに座ったリインの膝の上でぬいぐるみみたくむぎゅーされているのを横目に、コ
ップに茶を注ぐ。

「なーなー、リイン。さっき何話しとったん?」
「返された、コアの話。加工できないかな、って」
「ついさっきオリックと名付けました」
「んー、加工なぁ」

 聞いちゃいねぇ。

「パニックがどうしたって?」
「確かに向こうお前のコアで相当なパニックになったそうだが」

 他の騎士たちもわらわらと集まってきたが、なにやら間違って伝わっている。

「ではなく、オリックと。将来危険物認定されるかもしれぬ、数々の魔術を秘めた素材であり」
「トリック?」
「マジック?」
「ミスターマリック?」

 上からザフィーラ、シャマル先生、でもってヴィータ。わざとやっているには違いないのだが、
よくもここまでマジック用語を揃えられたものだ。あとミスターマリック懐かしいな。

「冗談はともかく、いろいろ試してみたらどうだ? シンプルに冷やしたり、温めたりとか」
「雪で冷やしてみたけど、雪の方がすぐ融けた。リインが魔力流したからかな」
「ほう。炎の適性があるのか?」
「いや。お湯に突っ込んだら、すぐ常温にもどっちった」
「何のマジックですかそれ……」
「もうトリックに改名しろよ本当」

 せっかくの命名をキャンセルされそうで、どうしようかと思案に暮れる。

「しかしリインはこれが体の中にあったわけだから、リインのデータからデバイスの試験機がやな」
「リイン2号のことでござるか」

 だが思わぬタイミングで、はやてから名案浮かんだ。おおお、とどよめくヴォルケンズ。

「きっかけはそれか……それでいいのか?」
「いいのだ。シグナムも妹できたらうれしいでしょうに」

 リインがこくこくと頷き、シグナムもまんざらではないようだった。

「家族が増えるよ!」
「やったねたえちゃん!」

 ぶっとい死亡フラグを立ててみる俺とはやてだったけど、当たり前だが何も起こらなかった。



(続く)



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