「発布やっ‥‥即日施行っ‥‥福本口調条例‥‥発令っ‥‥!」
「朝食‥‥美味い朝食っ‥‥それは至福っ‥‥得難い幸福っ‥‥!」
こんな感じで‥‥また一日が始まるっ‥‥!
「湧き上がる疑問っ‥‥朝食は何‥‥」
「今日は寝坊っ‥‥時間が足らへんっ‥‥よって朝食はコーンフレークっ‥‥」
「ボクの朝はいつも‥‥ケロッグコーンフロスティからっ‥‥グゥレイトォッ‥‥!」
「疲れるんでやめとこ」
「御意」
条例は一分と経たず廃止された。
でもって着替えた後、しゃくしゃくと朝食を食す。
「あ、ちょいと」
「んー?」
「後で時間ちょうだい。誕生日プレゼント作る」
「……ほほう」
誕生日明日やけど何作る気やの。
や、絵を描こうかなと。
「似顔絵?」
「鉛筆でね」
「主人公が前衛芸術に挑戦するようです」
「失礼な。こう見えても高校生の頃、美術と保健体育だけは5以外取ったことがありません」
「十段階評価やけどな!」
五段階だよバーロー。
「お小遣い全部で何か買ってもいいんだけどね。それは貯めてまた来年にでも」
と言って甘くなった牛乳を一気に飲む。うめぇ。
「前ばらしも甚だしいですが、モノがモノなので諦めて下さい」
「ん……ありがと。嬉しいわぁ」
「あと昨日翠屋行ったら、長めのロールケーキがあったから頼んできた」
「わたしらって最近、あそこの売上にずいぶん貢献しとるなぁ」
同感です。
とはいえ、人はプレゼントのみに生きるに在らず。
手早く下書きだけ済ませてしまい、二人で洗濯物とか食器とかを片付けていく。
それが済んだ後で線を入れ陰影の輪郭を描いて、そこら辺で小休止することに。
今日も今日とて、二人でゲーム。
「膝太郎やな」
「なぜか扱いが不遇な主人公。でもちゃんと火力あるよ」
「じゃあ鳥にもきっと勝てるな! うん!」
「ちょっと待て」
分かる人にしか分からない会話をしながら遊ぶ。毎日がこんな感じである。
学校無いっていいね。
良くないけど。
「俺、守護騎士来たら……学校行くよ……昔を懐かしみながら通うのも悪くないかもな……給食のコーヒー牛乳も飲みてぇ!」
「まだ来ーへんなぁ。誕生日明日やのに、残念や」
「まぁ、もし来なかったら……僕がずっと一緒にいてあげる(キリッ)」
「だっておwwwwwwwwwwww」
はやてはバンバンと机を叩いた。コントローラー投げんな。
「というか、生活費を出世払いで返すまでは出られない。出る気もないけど」
「とりあえず利子は年50%で」
「どう考えても人生オワタ。会社再生法の適用を申請する」
「でも毎年誕生日プレゼントくれるんなら、特別に年0%のサービス制度や」
「ここはもう一声。せめてマイナス100%に」
「鳥に三連勝できたらええよ」
徳政令への道は遠く険しかった。
「冗談抜きにして、別にええんよ? 返さんでも。毎日家事手伝ってもらっとるし」
「や、何というか。それでも一応、どうしてもけじめは付けたいので」
「そこまで言うなら止めへんけど……なら、待っとるわ」
「最悪、完全にはやてに身売りする可能性が無きにしもあらず」
「超戦闘力の借金執事がついにうちにも……!」
どれほどの苦行を重ねても、そのレベルには絶対に達せる気がしない。
「ところで絵って、あれで完成やの?」
「や。もっと線足して影つける。背景もちょろっと描きたいし。夕方やるからまた時間ちょうだい」
「うん。ほんなら、楽しみにしとくわ……あー、楽しみ!」
満面の笑みで、はやては言った。
「大事なことなので二回言いました」
「楽しみ! 楽しみ楽しみ楽しみー! たーのーしーみー!」
「とても大事なことなので連呼しました」
喜んでもらえるっていいなぁと思いながら、また二人でコントローラーと格闘するのでした。