ぬこ姉妹による訓練が終わったので、ちょうどいいからはやてと一緒に、なのはとフェイトを軽
くお祝いしよう。
 もてなしてやろう、ということになったのでメールで呼ぶと、まずなのはがものすごい速さです
っ飛んできた。

「けっ、けーとくんけーとくんっ! スタミナの種大量に拾ったってホント!?」

 この人は釣られるときまで全力全開だから油断ならない。

「はいこれ」
「こ、これが……あれ? これひまわりの種だよ? これじゃなくて、スタミナの種だってば」
「似たようなものだ。ささ、ぐいっと」
「ぐいっと、じゃなくて! だから……ああ! け、けーとくんまた嘘吐いたでしょ、その顔!」
「この顔は生まれつきです」
「表情のことだよぉ!」

 なのははよほど期待していたのか、むきゅむきゅ言いながら俺の胸をぺけぽこ叩いた。

「所要時間5分を切るとかさすが。一本釣りしたのは悪かったが、祝ってやるからチャラな」
「むうぅ……え、お祝い? どうして?」
「ぬこ姉妹の基礎訓練修了祝いだ。ケーキも焼いたし、フェイトも呼んだ」
「……フェイトちゃんには、何て嘘吐いたの」
「いや普通に呼んだだけで、嘘は吐きませんでしたが」

 ずるいずるいと文句を言いはじめたので、てきとーにあやす。
 そのうちフェイトとアルフが到着した。さてお祝いだ。食い物を出す。

「アルフはこれな」
「……なにこれ」
「見ての通り、ひまわりの種です」

 同じネタを使い回してみたのだが、アルフに人が死ぬレベルの眼光を向けられたので中止。とてつもない恐怖に身を震わせながら、素直にケーキを取り出して切りはじめる。

「またやってるし…… 怒られるの分かってて何でやるんだろ……」
「オリーシュは誰に対しても公平なんだ。公正なんだ。平等院鳳凰堂ってどこなんだ?」
「じゅ、十円玉の? ……えっと、京都かな……?」
「まじめに答えてあげるフェイトちゃんの優しさに感謝せえ」
「答えていただけるとか想定外でした。まあ切れたから、とりあえずフォークをだな」

 切り分けて食わせる。ちょっと甘味が強いかも、となのはからコメントをもらったものの、基本
的にけっこう評価は高かった。だがまだまだ道のりは険しい。

「暇にあかせて練習しまくってたのだが……ぬぬぬ、まだ桃子さんの背中さえも見えん」
「休みの間、頻繁に焼いとったのは練習やったんか……で、当座の目的は?」
「ここだけの話、前人未到の新領域、『甘いチャーハン』が最終目標だったりする」

 口が滑って、偉大なる目標がこぼれてしまった。

「前人未到の恐ろしいこと計画してるよこの人! ……で、でも、甘さはちょうどいい……」
「完成品ができあがったら試食をお願いします。さもなくばぶつける」
「いずれにせよ食べさせるつもりなんだ……」
「自分で食べればいいだろ」

 フェイトとアルフの反応の落差に泣きそう。

「それはともかく、三人ともお疲れさん。もう管理局入れんの?」
「えっ……ううん。まだ資格を取ったり、正規の訓練を受けたりしないと」
「わたしも、まだまだ考え中だし」
「魔法社会って世知辛いんだな。就職活動みてえ」
「就職って……確かに、局員に採用されるならそうなるけど……」

 苦笑いされた。しかし甘いものを食べて幸せそうにしているのを見ると、こいつらがビーム撃ち
まくりの戦闘集団とかにわかには信じられんのだがなあ。

「見た感じはこんな弱そうなのに」
「よ、弱そうって……そんなかな……?」
「アルフを狼とするとチワワくらいにしか見えん。チワワが目からビーム撃つの想像してみろよ」

 全員コーヒーむせた。何やらツボにはまったらしい。

「分かっていただけたようで何よりだ。ともあれ強くなるのはいいが、怪我などしないようにな」
「すでに苦しいんやけど」
「けほっ……も、もー! それだけ言えばいいのにぃ!」

 咳き込みながら言われたので、やれやれとお茶をくみに行く俺だった。



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