とりあえずティアナは普通にいい子のようなので、あんな善良そうな子に直で砲撃かましちゃうなのははいったいなに考えてたんだ。という気分になる。おのれ!
でもよくよく考えたらそれは今のなのはの話じゃないし、でもなのはの話であることは間違いないし、俺はいったいどうすればいいんだろう?
「まず箱の中に、なのはとティアナを入れて封をします」
「うんうん。それで?」
「すると箱の中には腕を残して粉みじんになったティアナと、米をぶつけられて昏倒したティアナが同時に存在することに」
「ティアナがスタンド攻撃受けてるし、外からけーとくんが紛れ込んでるし、そもそも私たち猫じゃないし、よくこんなに突っ込みどころを用意したねって褒めてあげたいレベルだよ……!」
と亜空の瘴気ナノハ・アイスさんを前に思考実験を繰り返すも、結局どうすればいいのかさっぱりだ。
しょうがないから夜の宿直室にお邪魔して、はやてに相談することに。
「ちう会話をですね。今日のお昼に、かつてぶるああああ!っぽくなるはずだったあの人と」
「遠い話やな……声変わりがいつ来るかいつ来るかとドキドキワクワクしとったのは……」
「もうティアナの心配しなくていいのかなこれ。まあ前から思ってたけど」
「既にいろいろ変わっとるみたいやしなー。なのはちゃんなんてもう完璧普通の女の子やしな!」
「鶴屋さんとちゅるやさんくらいの違いがあるよね」
「ワドルドゥとワドルディくらいの違いがあるわ」
「的確さで負けた……あとワドルがゲシュタルト崩壊した」
「早すぎやろ」
吸い込まれ役の風船型生物はともかく、違いが分からなかった俺はネスカフェ香味焙煎を淹れることにする。結局なのはの方もまあ、多分大丈夫なのだろうということで落ち着いた。
宿直室には基本的になんでも揃っている。基本的にこれらは家から持ってきたものだ。マグカップとか飲み物とか、そういうものはこっちで買ったけど。
「ポットとかはこっちのを使わないと規格が合わないからなあ。仕方なし」
「で。こんな時間に来てしもーて、明日はどうするつもりなん」
「明日は1限ないから。目覚ましもつけずここで好きなだけ寝てく。猫姉妹が送り返してくれる手筈になってる」
基本的に俺はこの建物内にいてくれた方がいろいろと楽らしく、割と直前になってもじいちゃんに伝えておけば問題なく出入りできることになっていた。
「悪い奴やな」
「どうも、悪代官です」
「絶対にお目にかかれん自己紹介を……」
「好物は山吹色のお菓子です」
「静まれい! この紋所が目に入らぬかー!」
「インパクトが足りない。『この印篭を相手の眼窩にシュウウウウ!!!』くらいやってもらわないと」
「静めようとする本人に話を聞く気がちっとも窺えない件について」
「懲☆役サイティン!」
「何を上手い事言った顔しとるか」
「あと思ったが、黄門様ってバーローやケンシロウ並みのハイペースで行く先々に死体量産してるよね。切腹とかで」
「そこにオリ主が紛れこむと申したか。オリ主がタイムスリップして悪代官になるようです」
絶対にイヤだ。
「そういう歴史ものはやる夫とかそういう手の方の仕事だと思います! 2次創作じゃないと出番ねーから!」
「ところがどっこい。この世には『悪代官』というゲームがあるんや! 残念やったな!」
「そんな世界に放り込まれた日には、もう即刻隠居して余生を楽しみにかかるしか」
「余生ええなぁ余生」
「余生恋しいよ余生」
「何の話をしている……」
はやてと幸せな余生について議論していると、ザッフィーが湧いた。
「『人生ロスタイム』を座右の銘にしたいんだ」
「『人生タイムロス』の間違いじゃないか」
「タイムロスではなく、ロスタイムです。どこぞの吉良さんのように、植物のような余生に憧れているんです」
「私はLではない」
「そのキラじゃないから」
「しかし余生、余生な。余計な人生と書いて余生とは、まさに言い得て妙ではないか」
「全国の御高齢の皆さまに謝れ!」
「安心しろ。お前にしか言わん」
「ならいいんだ」
「いいのか」
ザフィーラは釈然としない様子だった。
「あれ? 背中におるの、リイン妹とヴィータ? 寝とるのか」
「訓練後の報告書をまとめ終わったところで二人とも力尽きたようです。このままここで寝かせてやりましょう」
「ヴィータの口が半開きになってるから、リイン妹の寝床はそこに……ん?」
「……んぁ?」
「あああ何やっとるの。起きてしもーたやん」
「リイン妹、おはよう」
「……いたらかれます! ……んんぅ」
「あれ。また寝ちゃった」
「寝ぼけとったんやろか」
「今のは寝ぼけていただけなのでしょうか……?」
すやすや眠るリイン妹の前で、皆でしきりに首をひねるのだった。
(続く)
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なのはさん:ワドルドゥ(ビーム)
紐糸なのは:ワドルディ (スカ)