『けーとくん顔文字使える?』
なのはからは割とよくメールが来るが、大抵はこんな感じである。
他愛もない雑談だったり、変わったことの報告だったりする。今回は前者みたいだ。とりあえず
使える顔文字を送ってやる。
『 <●> <●> 』
こんな顔文字を披露したところ、返事が全然来なくなった。怖かったようだ。なんてこったい。
『<●>ナンテコッタイ』
仕方がないので伏線を消費してみたところ、なのはからやっと返事が返ってきた。びっくりさせ
ないでよとのことだった。確かにあの目玉だけだと、さぞ驚いたにちがいない。
『(「 ・ω・)「』
『かわいい! (「 ・ω・)「 がおー』
『(´・ω・`)』
『(`・ω・´)』
しばらく顔文字だらけのメールが続きます。10分ほどお待ちください。
『ところで今さらだが突然何』
顔文字ラッシュが一通り落ち着いたので、ようやく根本的な疑問を投げかけてみた。
『フェイトちゃんが顔文字を覚えたいって言ってたの。まず何がいいかなって』
状況を把握した。やっと事情が呑み込めた。
『話は聞かせてもらった。取っておきのを直伝してやる』
『嫌な予感しかしないよ』
『⌒*(゚∀゚)*⌒ これ教えるだけ』
『それわたし!?そんなかおしてなう!そんなかおしつなあ!』
『なのはがバグった』
『けーとくんのせいだよ!!!!』
打ち間違えたメールをそのまま送信しちゃうくらいびっくりしたらしい。
『⌒*( <〇> <〇> )*⌒ こうですか!わかりません!><』
『怖すぎ!なお悪いよ!』
『⌒*(´・ω・`)*⌒ じゃあこうですか!わかりません!><』
少し遅めの福笑いを楽しむ。
『そんな情けない顔してないし』
『そんな情けない顔してなのは?』
『そんなこと言ってない!』
『そんなのは。言わなのは。』
そうこうしているうちに、直接電話がかかってきたので応対する。
『ひっ、ひとの名前で遊んじゃダメなんだよっ! そういうの、やっちゃいけな……』
「おかけになった電話番号は現在使われてオリーシュです。何?」
ひとの名前で遊んではならないとのことなので、とっさに自分の名前で遊んでみた。電話の向こ
うが静かになった。
「ウケてたでしょ」
『ちっ、ち、違うよっ。笑ってなんかっ』
「声が笑ってますけど」
『わわわ笑ってないもん! 笑ってないもん!!!』
意地を張るなのはだった。