例の事件の後もちょくちょく八神家に遊びに来るようになった、某高町さん家のなのはさん。
 休日になるたびゲームしたり魔法の訓練を鑑賞したり、いろいろやって仲良く過ごしてます。
 でもこのなのはさん、一年に何回か、ある時期が来るとちょっと変化が訪れたりもする。

「いっ、いくよっ……せーの、はい!」
「はい」
「それ、見せてないよっ! 点数のところにシール貼っちゃダメ!」

 ある時期とは、つまり学期末のこと。この時期が来ると学校では当然テストラッシュがあるのだ
が、この点数で一対一の対決を所望してくるようになったのだ。はやてのいないときに個人的にや
ってきて、見せ合いっこをしては帰っていく。今日がその三回目である。

「ひゃっ……ひゃくてん……」
「こっちは95。吹き出しにセリフを入れる問題で遊んでしまいまして候」

 社会と国語の点数を見て、呆然とするなのはだった。行ってる学校違うからとは言ったのだが、
それでもと言うので。結果こうなる。
 言っとくけどオリーシュも一度は大学行っていたので、小中高までなら大体覚えてる。完全に暗
記してないとはいえ、そこらの小学生には負けないのです。
 普段の言動とかから信用されないかもしれねーけどな!

「そう言う高町なのは嬢、79と81。上々じゃあないか。ミス差し引けば5点くらい上がるし」

 めっちゃ努力したのだろう、なのはの点数も前回よりかなり伸びていた。前は70前半くらいだ
ったのだ。伸び方がイイ感じ。

「えっ、本当?」
「本当。こことここ、漢字と語彙で引かれてるだけ。よかったよかった」
「うん! もうすぐ九十……よっ、良くないよ! わたし、これで三連敗だよう!」

 一瞬ほころんだような笑顔を見せたのだが、すぐ消えた。それを上回る悔しさがあったらしい。

「お、やってるやってる。どーだった?」

 すると部屋に、ヴィータが入ってきた。闇の書事件以来、守護騎士たちの中でもなのはと割と仲
がいい。なのはがちょっと秘密にしたいこういう場にも、「はやてに言わないなら」という条件
でなら許してくれたりもする。

「……うー……うぅぅ……ずるいよぉ……」

 打ちひしがつつ、恨めしそうにこちらを見ているなのは。これはもう一目瞭然であった。

「こうして、世の理不尽をまたひとつ知るなのはであったとさ」
「一歩大人に近づいたのだった。どんとはれ」
「どんとはれ……?」
「おしまい、の意味。東北の方言。昔話の語り手の人が使ってたって以前どこかで……どうしたの」

 どういう訳かはわからないが、なのははショックを受けてさらに硬直した。

「それにしても、どうして俺と競うのか。アリサはともかく、すずかやフェイトそんでいいんじゃ」
「けーとくんじゃないとダメなのっ! わたしはっ、きみにっ! 勝ちたいんだってばっ!」

 問いかけてみると復活し、語気を強めて言う。いつの間にやらライバルフラグが立っていたらし
く、何かしたっけと首をひねる。心当たりはこれといってないんだけど。

「確かに、こいつに負けてるのは納得いかないっていうのは分かる。勉強だと特に」
「でっ、でしょう! そういうことなのっ!」

 なのははそういう気はないんだろうけど、ヴィータからは間違いなく鼻で笑ってるような気配が
ある。何てやつだ。

「というわけだから、来学期こそ勝つからねっ! ぜったい勝つから!」
「そうして再び、『一矢報いる』を『ひとやむくいる』と読んでしまうなのはさんでした」
「どんとはれ」

 めでたしでは終わらず、ぷんすか怒ったなのはさんにヴィータと二人で追いかけまわされました。



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