昔々あるところに、おじいさんとおばあさんは住んでおらず、大きな桃は今日も川をどんぶらこ
どんぶらこと流れ、ついに鬼ヶ島にまでたどり着きました。

「この大きな桃の外殻は鬼たちに食べられるために育ったんですものねオニ」
「へへへ。おい! 割れ目を攻めるんだ。中身を引きずり出してやるオニ」
「老夫婦さえいれば、こんなやつらにっ……!」
「良かったじゃないですか。おじいさんとおばあさんのせいにできてオニ」
「くやしいっ! でも……生まれちゃう!」

 鬼たちと寸劇「桃 ハード」を演じつつ、くやしいでもびくんびくんとやたら口走りつつ桃から
生まれた男の子は、「桃」の文字をとって桃太郎と名づけられ、鬼たちの手によりすくすくと育て
られました。
 ちなみに短く略すと文字通り、オリーシュと申します。

「鬼さん鬼さん、鬼ヶ島に豆まいていい? 豆まきのあれなんだけど。ていうかもうまいたけど」
「泣いたオニ」
「終わったオニ」
「外道の極みだオニ」

 鬼より鬼畜な発想で全鬼を号泣させつつも、あまりの泣きっぷりになんだか申し訳なくなってし
まった桃太郎。
 しかし掘り起こすのは面倒なので、そのまま島を飛び出し、豆をたくさん食べてくれそうな仲間
を探しに行くことにしました。
 芽が生えてから抜くという発想はありませんでした。

「もーもたろさん、ももたろさんっ」
「お腰につけた、吉備団子」
「ひっとつ、わたしにくださいなー」

 川をさかのぼっていると、なのは、アリサ、すずかの三匹が面倒なのでまとめて登場します。

「岡山出身ではないので吉備団子はないけど、代わりにシャマル先生作の当たり団子が」

 三匹は一斉に距離を置きました。
 どこからかしくしくと泣き声が聞こえましたが、能天気な桃太郎は空耳だろうと高をくくること
にします。

「冗談だ。しかし、なのはに犬はやはりハマり役だな。きゅいきゅいとか言え」
「犬の要素がひとつも見当たらないよ?」
「そうだった。危うくファーストキスから二人の愛のヒステリーが始まってしまうところだった」
「今日も絶好調で意味不明だよ……」
「『この馬鹿犬!』とかけた究極に上手い洒落のつもりだったのだが。まあよろしくね」

 馬鹿犬呼ばわりが気に入らなかったのか。なのはは仲間になりながらも、差し出した手にあぐあ
ぐと噛みつきます。

「アリサは豆とか出しても食べるのだろうか?」
「どんな偏見かッ! 豆なんて、いつも食べてるわよ」
「いやー。しかし、アリサが普段何食べてるかなんて知らんからな」
「あら。……そういえばアンタ、うちに来たことってそんなにないわね」
「俺ツンデレの家なら手足が生えて動き出してくれると信じてるから」
「そんな家に住むやつの気が知れないわよ……」
「バーン様に謝れ! ええいバーン様いねぇ! もう魔王つながりでなのはでいいから謝れ!」
「うっさい!」

 アリサは仲間になりつつも、桃太郎の顔をバリバリと引っかきました。あと魔王扱いが気にいら
ないのか、なのはは文句を言いながら桃太郎の背中をぺこぺこ叩きます。

「すずかまで怒らせると、俺の頭蓋骨がキツツキの的になるな」
「あ、怒らせてる自覚はあるんだ」
「考えるより早く口が動くので、後の祭になっていることが多いです」
「そこは踏み止まろうよ……」
「あ、最近どう? 忍さん元気にしてる? 今度『下の方が割れてないプリングルス』の作り方を相談したいんだけど」
「ふ、二人で何の話をしてるかと思ったら、そんな相談してたの!?」

 こうして最後の一人、すずかも仲間になりました。
 スルーされ続けてそのへんの隅っこでいじけていたなのはを引っ張り、いざ帰らん、故郷鬼ヶ島へ!





「ごめん間違えて仙豆植えてたわ。やっぱ俺すごくね?」

 絶望する鬼たちと、裸足で逃げ出す仲間たちでした。



(続かない)

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なんだこれ



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