昔々あるところに、一人の漁師がおりました。
その名を、浦島太郎。短く略して、オリーシュと申します。
「海に入ると魚がなついて寄ってくるので、可哀想だから海草でも取って食おう」
自給自足の生活を続けるオリーシュは、村でも「こいつは何を考えているか分からん」「魚群寄
せに重宝する」「でも魚群どころか鯨も寄ってくるから手に負えない」「むしろ徹頭徹尾手に負え
ない」などいう評価があり、そこそこ有名でありました。
「ワカメの髪型を再現するには色が……しかし乾燥させると艶が消えるし……」
そんなオリーシュが、今日も某ワカメ高校生の髪型について検証をしていると。
「ユーノくん、その、どうかな? 『こっち』用のクッキー、焼いてみたんだけど……」
「このサイズから人間にまで大きくなれるって、やっぱり信じられないわ……」
「うん。初めて聞いたときは、びっくりしたなぁ」
なのは、アリサ、すずかが、一匹のフェレットのようなものを可愛がっておりました。
「餌ヲ ヤラナイデ!」
オリーシュは子供たちを、意味不明な理由で追い散らしました。頭の上にワカメが乗っかってい
るため、ワカメなのかワカメでないのかワカらない感じでワケワカメです。
「死語だよそれ!」
「うるっそぉい!」
生意気にも突っ込んできたなのはに、頭を振ってワカメをべちゃりと投げつけます。頭の上にワ
カメが乗っかって省略。
「どっ、どうしてこんなことするのっ! ユーノくんにごはんあげてただけなのに!」
「そうなのか。いや、台本と違くね?」
「え、えっと……だ、だってイヤだもん、ユーノくんにディバインバスター五輪刺しなんて」
「今のなのはなら『ブ・レ・イ・カ・ー』のかけ声で五本くらいSLB撃てるかと」
「寿命が縮むよそれぇ……」
頭の上のワカメを取ろうともがきつつ、なのははうんざりした声をあげて去っていきました。
「はぁ。こんな時でもアンタは……えっと、なんだったかしら。この先って」
「ワカメを乗せた後はやっぱりコンブなんじゃあないか。食えよ」
「わっ! やややや、やめなさいそれ! 髪から生えてるみたいで気持ち悪い!」
「これが嫌なら物語の進行のため、ユーノがフェレットのまま泳げるような案を出してくれ」
「アンタが役割決めたんでしょうがッ!」
アリサは苦情を上げてから、ワカメ男から逃げて行きました。最後までデレとかなかった。
「そして常々思うのだが、何を食べたら紫の髪になるのだろう。ひじき?」
「食べ物とは関係ないと思うけど……」
「しかしリンディさんは、砂糖入り緑茶の飲みすぎで髪が緑色になった説があるのだが」
「すごい説明が……た、確かに緑色だけど、そういうことじゃないんじゃ」
「すずかは……さつまいもの皮か。ひもじいなぁ」
「そ、そんな目しないで、ひもじくない、ひもじくないから!」
しかしすずかの主張は聞き入れられず、しばらくすると何かを決意したような顔で、自分のお屋
敷に駆けて行き、そのまま戻りませんでした。
実はひもじくないことを示すため、家から輸血パックを持ち出そうとしていたのですが、家人た
ちに止められていたのは別のお話。
「すずかが文字通り血迷ったようです」
「誰がうまいこと言えと」
横合いから一匹の青い狼がふらり、人語で正鵠を射るのでした。
そしてその口元には、哀れフェレットのようなものが、牙の間に捕らわれているのでありました
とさ。
「こうして漁夫の利という故事が誕生したのである」
「なんですずかちゃんが輸血パックなん」
「吸血鬼か」
あれそういえば何でだろう。と首をかしげる俺だった。
(続かない)
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昔話シリーズ第一弾。
ザフィーラに全部持ってってもらったけど意外と面白いかもしれない
ヤツがすずかで血を連想してるのは天然ね。人外相手だと、気付いてなくてもカンが強い。