新しいデバイスとの初陣。エリオの危機、キャロの覚醒。
 新人たちの活躍により、列車を占拠していたガジェットは全滅。暴走していた車両は制御を回復
し、任務は完了する。
 はずだった。

『――車両最前部に生命反応! 制御室の奥に人がいます!』

 任務の終了を確信し、安堵しきっていた新人たちに伝えられた、そんな通達。
 新人たちは我が耳を疑った。しかし列車が止まる気配を見せない今、あり得ないはずのそれが異
様な真実味を帯びて聞こえても来る。
 ガジェットはフェイクなのか? この期に及んでどうして残っているのか? 何故?
 様々な疑問を胸に、新人たちは現場に向かうのだった――。





「ぬう、アクセルがわからない……スカさんの説明書読めないわ、余計な文章書きすぎだって」

 すると制御室の奥には、何やらぶつくさ文句を言っている男の姿が!

「……何をしているんですか?」
「いやさぁ、スカさんに『電車でGOやろうず』って言ったらこうなって……ん? あれ。誰?」
「あっ、あの……それは、こちらの台詞ですっ」

 振り返る俺をツインテの子が警戒しつつ、帽子の子が前衛からじりじりと後退する。全部で四人
の八つの瞳が、不審物発見の雰囲気で俺を見る。
 見覚えのある顔だなぁ、と思っていると気づく。アニメで確か出てきたぞ! 白い悪魔に仕え、
訓練を受けて強化されていく四天王的なキャラクターじゃなかったっけ。

「えっと、ティアナと……ズバット、ギャロップ、サンダースだな?」

 ティアナがますます警戒したようだが、他は戸惑いがちに顔を見合わせた。ティアナは撃墜イベ
ントの記憶が鮮明なので覚えていたのだが、その他3人はハズレみたい。

「いずれにせよ、一緒に来てもらいましょう。事情を聞かせてもらわないと」
「えー……チャーハンやるから勘弁してよ」
「応答願います。不審人物一名、現在四人で包囲中です。これより列車の停止を試みます」

 ガン無視。
 とか思っていたのだが、そのティアナっぽい人から出た言葉にふと気付く。

「なに? この列車止めるの?」
「え? あ、はい。そうですけど……」
「止めないとマズい感じ? この路線ってスカさんの私物じゃないのか」
「……スカさんが誰か知りませんが、この列車は私物ではなく、かつ止めないと危険です」

 はじめて聞く事実に驚愕しつつ、スカさんの悪戯だったことにようやく気付いた。
 電車でGOできると喜んでいたのだが、現実はそううまくいかなかったらしい。残念だ。

「なっ、何を……!」

 しかたがないので、手近なボタンをぽちっとな。

「いや、止めないといかんと聞いて、自動運転に切り替えた。ブレーキかかってるでしょ」
「ああっ、本当です! 減速してます!」

 ギャロップが驚いた感じに言う。

「……ますます不審ね。それで、同行してもらえるのかしら」
「俺のチャーハンを失った数の子の一部が悲嘆にくれそうだが、天地魔闘の構えに興味があるので
 同行しましょうか」

 警戒しっぱなしのティアナと、首をかしげるサンダースだった。しかしアレだ、サンダースって
言うとケンタッキーっぽいな。

「誤ー射、誤ー射、ふしあわせー」

 ふと思いついたフレーズをCMソングに乗せてみたが、この意味を新人たちが知るのはまだ先の話
だった。

「……この人とは、長い付き合いになる気がするわ……」

 一連のやりとりを指令室から眺め、予感めいたものを感じるはやてだった。





「もしトリップ先を間違えても、こんな感じに六課には遊びに行けたと思います」

 もちろんそんなことはなく、今のは単なる未来想像図でした。原作第三部についてはやてに話し
ていたところ、「もしオリーシュが敵サイドに行っちゃっていたら」みたいな流れになったのだ。

「題して『オリー・ポッターと謎のオリーシュ』」
「主人公が二回繰り返されとるな」
「ぬ……じゃあ、『オリー・ポッターとナノハサンの新人』で」

 どうやら二回目でツボに入ったらしく、治った足をばたばたさせてひぃひぃ笑いをこらえるはや
てだった。面白いので観察しつつ、こたつでおしるこを食べるお昼時でした。



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