学校から帰ってくると、ヴォルケンリッターの姿が無い。
 訊いてみると、リインの社会科見学を兼ねて、みんなで買い物に行くことにしたのだとか。
 はやてはちょっとお菓子を作っていたので、行かずに帰りを待つことにしたと聞いた。はぐりん
たちもくーくー寝ているので、はやてと二人きりである。
 ちなみにはやての学校なんだが、もうちょい足が治ってからということにしたらしい。
 しかし回復は順調。ここのところ具合がよくなってきているみたいで、松葉杖を使うとなんとか
歩けるくらいにはなっていた。次の定期健診が楽しみである。

「にゃwwwwwはwははwwwwwwやっめwwwwひゃwwwwwwwめwwwwww」

 とりあえずすることがないので、感覚のチェックを兼ねてうつぶせになったはやての足をくすぐ
った。抑え込みもかけているので逃げることができず、はやてはバンバンと床を叩いた。

「目標をセンターに入れてスイッチ……目標をセンターに入れてスイッチ……」

 解放されて息を整えてから逆に抑え込まれ、続けざまにボディーブローを入れられた。セコンド
が見ていたら即刻タオルを入れていたであろう、強烈な連続攻撃だった。はきそう。

「暇になったら悪戯する癖はどうにもならへんのか」
「人生楽しくがモットーですので」

 とか言ってる間も、暇で暇で仕方がない。なのはいじりに出かけるっていう案もあるけど、寒い
のであんま外に出たくない。こたつでじっとしてるのが正着手。
 テレビ見ながらぽへーっとしていると、はやてが近くに置いてあった車輪つきの箱を引っ張って
きた。トランプやら麻雀牌やら将棋セットやら、いろんな遊び道具が入っているのだ。

「ナインの全引き分けならこの前やったじゃないですか」
「赤木と曽我の手順ぜんぶ覚えとるとは予想外やったわ……」
「お互い様やがな」

 知らない人は本当に知らないと思うので、くだらねーことして遊んでんだなって感じに脳内変換
を推奨します。
 はやてが取り出したのは碁盤だった。神の一手を極めたくなったのかもしれない。昔ちょっとや
ったことあるので、お相手つかまつる。こっちが先攻。

「じゃあここ」
「なら私もここで」
「いやいや俺がここだから」
「残念でした。ここはもう予約済み」

 石がどんどん高く積まれていった。確かに神の一手かもしれない。方向が違うけど。

「これで七段目」
「次で八段……あっ、ああっ! しもーた!」

 石のタワーががらがらと崩れ去った。ゲームの趣旨がいつのまにか変わっていた。

「ひまー」
「ひまー」

 こたつの中で足で突っつきあいしながらテレビ観てました。





「そういえば昨日、どやったの? 管理局のお手伝い」

 向かい合ってみかんをむきむきしつつ、白い筋はどうするかについて軽く舌戦を繰り広げている
と、はやてが訊いてきた。

「ヴィータから話は聞いたと思いますが、ロストロギアってのはガセでした」
「そうやなくて。あそこで働きたいーとか思ったりした?」
「はぐりんたちは乗り気だったけど俺はちょっと。働くなら翠屋のお手伝いがいいや」
「そっかー。ま、おもちゃ役のなのはちゃんもおるしなー」

 はやては茶を啜って、からからと笑った。もう何か完全になのはいじりが浸透している八神家で
ある。当初は魔物か何かのようになのはを恐れていたヴィータも、最近では友達感覚で話したりし
ているみたいだし。

「魔王もへなちょこになったものである」
「豪鬼がベガになったよーな感じやな」
「いや別にやられ役という訳では」
「一回ヴィータが負かしたんとちゃうん?」

 そういえばそうだった。プリン食われたと勘違いして、ヴィータのやつ無謀にも挑みかかってい
ったんだっけ。結果的に勝ったけど。

「……天地魔闘の構え、ティアナに悪いけどちょっと見たかった」
「カラミティエンドがただのぽこぽこパンチに……」

 少々もったいないというか残念な気がして、しょぼーんな感じになる俺とはやてだった。

「で、第二期終わったらどうなるんやっけ。次が十年後ってことは聞いとるけど」

 自分の出てるアニメの先の展開聞いてくるアニメキャラって一体何なんだろう。

「すくすくとアホの子に成長したはやてが、変態博士スカトロッティを相手に戦うお話」

 割と間違ってないことを言ったはずなのに、こたつの中のはやての足がぺけぺけと俺を蹴る。

「キャッチ」

 その足首を捕まえて引っ張る。

「むあー! はーなーせー!」
「はやてがこたつと合体してしまったようです」
「まさかの炬燵プレイ……こんなのが横行する日本恐るべし。日本青少年の明日はどっちだ」
「こっちだ」

 ずるりずるりと引きずり込む。と、俺の方から顔だけ出してきた。

「……もう何か、このまま十九歳になりたい」

 はやてがしみじみとそんなことを言う。

「しかし十九になったら、ちょっとこたつが小さいんじゃなかろうか」
「あ。そっか、せやな。その時には買い替えが必要かー」

 ふむむ。とはやては唸った。先の話なので、気にする必要はないと思うけど。

「というかそのころ、俺は精神年齢二十九ということか」
「しかし一生変わらないような気がするのは気のせいなんやろか」

 はやての顔の上に剥いたみかんを落としてやっていると、そんなことを言い出す。たぶん間違い
じゃないような気がするけど、でもまぁいいや。変わんなくて。

「十年後の俺って何やってんのかね」
「例の博士に捕まって悪の改造人間になっとったりとか」
「しかしそうなった場合、どう考えてもモブ扱いになりそうな気がします」
「イー!」
「イー!」

 十年後とかわかんないので、ヴォルケンズが帰ってくるまでずっと雑談してました。



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