〜A's編のあらすじ〜

「さあ来て、けーと君! 私は実はあと一回ニコってされたら惚れちゃうの!」
「くらえなのは! 新必殺音速笑々拳!」
「にゃあぁぁぁぁん!」

「なのは、負けちゃったみたいだね……」
「ど、どうしようどうしましょう! はわわ! はわわ!」
「オリーシュに負けるとか。魔法使いの面汚しだな」
「くらええええ!」
「ひゃあぁぁぁぁん!」

「よく来たなオリーシュ……後は私を倒すだけやなクックック……」
「上等だ。このオレに生き別れた幼女がいるような気がしていたが既にニコポ済みだったぜ!」
「そうか……さあ来るんやオリーシュ!」
「ウオオオ行くぞオオオ! オリーシュの勇気にはやてが惚れると信じて!」

 ご愛読ありがとうございました!





「だいたいこんな感じだったよね」
「フェイトちゃんまで被害者になっとる件について」
「ていうかリインがどこにも登場してねーだろそれじゃ」
「わっ、私、はわわーだなんて言いませんよっ!」

 あれから一週間。つまりまだ冬。こたつに入りつつ、色々あって疲れたねー、などと話し合う。
はぐりんたちも机の上で、ぺたーっとなって遊んでる。
 事件の事情聴取もようやく一通り終わって、とりあえずヴォルケンリッターは特にお咎めなしと
いうことになった。大きな罪に問えることがなかったのだとか。
 それでも過去、管理局に散々迷惑をかけたことは事実(自分の意志でないにしろ)だし、今も生
きている被害者の人もたくさんいる。ということなので、たまにそちらのお手伝いをすることが決
定。しかし丸く収まりはしたので、まぁ良かった良かった。

「そういや、グレアムのおっちゃんが遊びに来たいって言ってたっけ」
「ホンマ!? な、な! それっていつの話!?」

 がばっ、とはやては立ち上がった。と思ったらぐらりと倒れそうになり、慌ててシグナムが支え
にかかる。神経は治っても筋肉が足りないので、ちゃんと歩けるようになるにはもうちょいかかる。

「温泉行って湯治した方がいいかもね」
「せやなー……じゃなくて! お、おじさん、遊びに来るん?」
「テロか? 事故か? 旅客機は謎の空中爆発を遂げた」

 はやてが俺のほっぺたをぐいぐい引っ張った。こんなギャグにマジになっちゃってどうするの。

「アースラでちょっと前に会って、近々来るって。そのうち手紙が届くと思うけど」
「ホンマやな!? たのしみやー!」
「あと、ぬこ二匹も来るって言ってた。皆からごはん強奪してやるって張り切ってたよ」
「……それは、極めて許し難い」

 リインが怖い顔をした。
 でもあんまり表情を変えるのに慣れていないので、そんなに怖いとは思えなかった。

「でも、皆がはやての手料理食べてるのが羨ましくて、そのあまりあんなコトしちゃった人ですし」
「ん? あんなこと?」

 リインは慌てて俺の口をふさいだ。あんなことっていうのははやての味覚のことで、要するにみ
んな美味しいものばっか食べやがってというささやかな仕返しだったらしい。
 以前そんな予想をしたわけだが、まったくそのとおりだった訳である。リインが秘密にしてくれ
と必死に頼み込んでいるのだが、まぁ俺は知ってるわけだ。夢の中とかで聞いたので。

「残る課題はフェイトそんの編入試験か」
「へんにゅーしけん?」
「ひんにゅーしけん!」
「貧乳試験……なんと甘美なる響き……!」
「うちのはやては頭大丈夫だろうか」

 ノってきたのははやてだというのに、両側から耳たぶ引っ張られた。千切れそうなくらいに痛か
ったので、必死に謝って勘弁してもらうことにする。

「それにしても、休日はヒマやなー……」
「麻雀でもするか! 鷲巣牌でコンビ戦やんね?」
「血液の代わりにプリンが動くわけだな」
「打てっ……あたしのプリンっ……! 垂涎のプリンっ……!」
「……何してるの?」

 そんな折だが、いつの間にかなのはが遊びにきていた。その背後にはフェイトの姿もある。リン
ディさんに無事引き取られたものの、なのはの通う聖祥大附小への編入を視野に入れているため、
地球に馴れるためにもちょくちょく遊びに来るのだ。

「ネタ振りして適当に遊んでた。あれ、ユーノは何処」
「クリスマスの日には来るけど、今日は無理だったの。忙しくて」
「むぅ。探検できる古代遺跡を紹介してもらう予定だったというのに」
「またそこらをほっつき歩くつもりなんか」

 しばらく家から出るんじゃないと、はやては俺の腕を雑巾絞りした。超痛かった。

「クリスマス?」

 聞きなれない単語に、リインが不思議そうに首を傾げた。

「お祝いの日。日本中でしっとマスクが燃えに燃える一日でもある」
「プレゼント交換もあるよー。ちょっと豪勢に、お肉やケーキでパーティーしたりとか」
「パーティー……」

 リインはちょっとうれしそうな顔をした。口の端っこがちょこっと上がってる。

「そして九月のある日に生まれた子の、第二の誕生日でもある」
「逆算すな」

 この話題にさえ食いついてくるはやてって一体何なんだろう。

「そう考えるとグレアムのおっちゃん、プレゼント渡しに来るんじゃなかろうか」
「おー、なるほど。なら、それまで入念に準備せな!」
「さて、フェイトはもう準備したんだが、なのはへのプレゼント何にしよう」
「え……よ、用意してくれたんだ……?」

 この習慣を知らなかったフェイトは、驚いたように言った。
 そりゃまぁ、だって。家の中では散々ネタにして楽しませていただきましたし。

「わ、私も……?」

 なのはもそんなことを言う。

「その辺の草と石で構わないなら、それでもいいけど」
「よくないよ! ……え、えと、えっと……た、楽しみなんかじゃないよ? ホントだよ?」

 なのはは誤魔化し誤魔化し言った。何だろう、尻尾つけたらぶんぶん振ってそうな雰囲気。

「楽しみじゃないとは残念。ドラクエ世界行って光魔の杖拾ってきてやろうと思ってたのだが」

 どうせそーだと思ったよう! とか言いながら、なのはがシャマル先生に慰められていた。遊び
に来たときはヴィータともよく話すみたいだけど、シャマル先生とも結構仲いいな。

「プレゼント代わりに音速でなでこなでこしてやる案もあるけど。音速で」
「なのはちゃんがオリーシュにナデボされるようです」
「最近、けーとくんに完全におもちゃにされてる気がするよう……」

 ぺたぺたと動いてるはぐりんを手であやしながら、なのはが諦観じみた声で言うのだった。



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