協力してくれたおどるほうせきたちに礼を言って回り、お菓子をあげると喜んでくれた。こんな
もので手懐けるとは、とクロノがやるせなさそうにしていたが、なつくものはなつくので仕方なし。
お疲れ様をして、しばしの別れ。
 その後魔力切れの魔導師とはぐメタたち(巻き添え)、そして魔法使えないでござるなオリーシ
ュ(元から)は、近くの町へと足を運んだ。
 この町は一応下見が済んでいる。一行を引き連れて、真っ直ぐ酒場へと向かうのだった。本来大
人しか入れないんだけど(クロノの年齢でもギリギリ駄目らしい)そこは交渉段階で押し通してあ
る。取ってあった広い部屋に皆を通す。

「……け、けーとくん。大丈夫? わたしたち、ここのお金持ってないけど……」

 なのはが心配そうに言った。こういうところに気が回るのは、さすが商売人の娘さんである。

「こまけぇこたぁいいんだよ!」
「よっ、よくない! 細かくもないよっ!」
「いやまぁ、お金なら結構貯まってるから。前持ってきた食材、こっちの店が買ってくれて」
「具体的には?」
「カップヌードルが評判だった」

 お湯を注ぐと食えるようになる、という発想がウケたらしい。作り方を聞かれたのだが、既製品
なので何とも答えようがなかったのが残念。

「まさにフリーダム……」

 ヴィータが割と上手いこと言った気がする。

「あれ? フェイトちゃんは?」
「店の人に頼んで、別室に寝かせてあるよ。アルフが一緒だから心配ない」
「これが噂の別室行きか! 確かにあそこは衣服が禁止!」

 吹き出しそうになったのはヴィータのみ。ネタがマイナーだったかもわからんね。
 という感じに席へ案内して、取りあえずみんな座ってもらう。テーブルが円卓だったので、ヴォ
ルケンサイドと管理局サイドで半分ずつに配置した。俺はちょうど片側の境界に座して、話し合い
を開始する。

「闇の書を起動!?」

 切り出すと、クロノからやっぱりな反応が帰ってきた。

「そう。そうそう。ページ埋めて、完成させて」
「危険性を知って言ってるのか!? 起動すれば所持者が……そういえば、所持者は誰なんだ?」
「実はそこのなのはさん。さすが我らの大魔王、闇のアイテムとか似合いすぎだぜ!」

 所有者をなすりつけようとしたところ、怒りのばってんマーク付きのなのはにほっぺた両方つね
られた。口がスライムの口みたくなって、しゃべりにくくて仕方ない。

「まぁとにかく、所有者さんには悪影響ないので。裏道あるから、融合事故はご心配なさらず」
「…………そこまで知っているのか。一体どうやって……」
「ちょっと前に、闇の書子さんと話したことがあるんだ」

 守護騎士全員がむせた。

「おっ……おっ、おま、おまっ」
「後で話すから、今はちょっと」

 と言うと、仕方なしに口をつぐんでくれた。怪しいものを見る視線に貫かれて、大変居心地がよ
ろしくない。

「闇の書の悪い部分だけ、切り離して壊せばいいと思って。それがちょっと大変でして」
「…………それで、協力か」
「話が早くて助かるでござる。俺がやりたいけど、砲撃とか使えないし」

 クロノは複雑そうな顔をした。仕方ない話である。ぬこたちから聞いた話によると、闇の書とは
浅からぬ縁があるらしいし。

「……やはり、どこか変になっていたのか。ページの白抜けはそのせいか?」
「いや、それとは別のところ。白抜けは逆に、治療に欠かせないと言うかなんと言うか」

 シグナムが問いかけてくる。説明が苦しくて大変そうにしていると、そうか、と引き下がってく
れた。また今度聞き出すことにしたらしい。

「協力してくれた場合、今ならはぐりんたちが管理局で、短期のアルバイトしてくれるそうです。
 魔法犯罪者もお手の物! 白い悪魔の砲撃も効かないっぜ!」
「〜〜〜〜……っ」
「あれ、なのはが怒らない。どうしたの」
「お……おっ、怒らないよ? わたし、怒ったりしないもん」

 なのはは我慢している。方針を少し変えてみたらしい。「大人のよゆー」を見せつけようとして
いるのかも。

「わ……わたし、大人だもん。そんな、いちいち怒ったりなんか」
「ことわざ忘れた。案ずるより、何だっけ。案ずるより、うーとえーと」

 なのはは真っ赤になって、両手でぎうぎう頬っぺたをつねった。計画はあっという間に瓦解した
らしい。ついでに言うと握力鍛えてないらしく、頑張ってるのは分かるんだけどそれほど痛くはな
かったりする。

「……物証が何もない現状、回答はできない。艦長も同じ答えを出すだろう」

 やや空気が和んだようで、クロノが水の入ったグラスに手を伸ばしながら言う。

「が、嘘を吐くメリットもないか。単純に逃げたいなら、書の魔法でさっさと逃げるんだろう?」

 すげぇ洞察。決裂したらそのつもりだったし。

「ページを増やすのはどうするつもりだ? 一時的とはいえ、蒐集は他の生物に害だ」
「蒐集以外に手がありまして。それも含めて、またの機会に。土日は家か翠屋かなのは部屋に入り
 浸るつもりなので、そこでまた話し合えれば」
「逃げはしない、と」
「こちとら消化器系の平和がかかっているので」

 クロノは首をかしげたが、騎士たちはうんうんとうなずくのだった。

「翠屋か……懐かしいな。あの面白い客と注文が被って以来、足を運んでいなかったが」
「そうそう。俺が確か、グーで負けたんだよね」
「ああ、そうだった。それでちょうどお終いだったんだな」
「うん。まあ、次行ったとき買ったからいいけど……ん?」
「え?」

 あれ。

「………………あっ」
「………………ああ。あの時の」
「き、君だったのか……いや、その、あの時は済まなかった」
「いや、その、ジャンケンで決まったことですし」

 二人して思い出しました。妙な巡り合わせだと思います。



(続く)

############

奇妙な再会でした。何があったかはその4参照。
その4とか懐かしすぎて思わずじんと来てしまいました。



オリーシュが何やら企んでたり暗躍してたり誘導してたりしてますが、次以降でちょっとずつ
明らかにできるかなと考えてます。今回も色々言ってはいますが、それもその時にじわじわと。

前へ 目次へ 次へ