もうちょいでお昼なのに、シグナムたちが帰ってこないのでどうにも動けない。

「お腹すいたので、先に食べちゃおう。お二人もお弁当どぞ」
「っと、済まない。いただきます」
「い……いただきます」

 結構限界が近かったので、帰ってくる前だけどお昼ごはんを食べることにした。
 シャマル先生作のおいしいお弁当だ。お客さん2名の分も差し出して、生姜焼きかじったりおひ
たし食べたり。

「で、なんだっけ。この地域で暴れまわってるのがいて……生き物に被害?」
「はい。何か、妙な話を聞いていたら」
「妙な奴ならここに一人ほど居ますが」
「いや、それはもう明白なのでいいです」

 黒い子にあっけなく切り返されて、ちょっと寂しいような気がしなくもないです。

「んー、特にはなぁ……俺たちもちょっと追っかけ回してるけど、元気になるまでは面倒みてるし」
「ああ。それで懐かれてるのか」
「世話してたら頭やらに乗ってきて。ちょうどあんな感じに」
「あっ……ちょ、こっ、こらっ! ひゃっ」

 横を見てみると、髪の毛やら頭やらがはぐメタ塗れになってる女の子の姿が。
 はぐりんたちの警戒が解けたはいいものの、何か興味を覚えてしまったらしい。金髪が銀髪にな
ってたり、頭の上を占領されたり、服の下で動かれたりして大変そう。てか重そうだけど大丈夫か。

「おっ、重!」
「子供やってる間にちょっとした筋力が付きそうな、素敵な重量だったりします」

 大丈夫ではなさそうなので、パンパンと手を叩く。するすると降りて来て、お弁当の残りを食べ
始めた。

「すみませんです。うちの子が」
「あ……えと、ありがとう」
「出会って日が浅いのに、よく躾られている……鳥獣使役? いや……」
「ん?」
「あ、いや、すまない。独り言を」

 とまれ、楽しい楽しい昼食会は続く。はぐりんたちにちっちゃな火を出してもらって、ちょっと
した芸の発表会してみたり。この世界についていろいろと、情報交換してみたり。

「魔物が落とした珍しいアイテム持ってったら、道具屋のおっちゃんがお金をくれたもので」
「それで、いろいろと買ってみたのか。これが薬草、どくけし草……これは?」
「それ、すばやさの種。はぐりんたちが持ってた。炒って塩ふって皆で食べる。きっと美味い」
「……」
「道具屋のおっちゃんがジョークでくれたガーターベルトに興味津津の九歳児であった」
「……うええっ!? こっ、これはっ、こっちじゃなくて、そっちのビンの中身見ててっ!」
「将来が心配だ。昨今の性の乱れは深刻であるらしい」
「だっ、だからっ、そっちじゃなくてっ! ちっ、違うんですってば!」

 女の子はわたわたと手を振って弁解する。この子、リアクションおもしれー。ツンデレアリサと
はまた別方向の面白さ。
 と、そのうちお弁当を食べ終えたので、残ったコーヒーを皆で飲む。仲間のぶんがなくなるので
はと男の子は言ったが、予備の水筒にいっぱい入れてきたので問題なし。
 ごちそう様でした、すごい美味しかった、と口々に言うので、常時ポケットに忍ばせているレコ
ーダーでこっそり録音しておいた。八神家以外に食べてもらうのは初めてなので、シャマル先生が
聞いたらきっと飛び上がって喜ぶと思う。

「十四歳! はー。俺まだ九なのに」
「……とてもそうは見えないな」
「よく言われる。で、そっちの子が同い年……仲間もみんな同学年か。大変でしょう、お兄さん役」
「まったくだ。無茶が好きな子供ばかりで困る」
「いるよね。無鉄砲な子供って」
「ああ、いるな。無鉄砲な子供」
「あう……ご、ごめん、クロノ」

 何か、黒い髪の子(年上ってわかったけど、あちら側もあんまり気にしてないみたい)とちょっ
と意気投合した感じ。あったかいコーヒーを飲みながら、そんな風に話して笑い合った。横で肴に
された女の子は恥ずかしそうにしてたけど。
 とか思っていたのだが、今の台詞の中に、妙な単語が混じってたのに気付く。

「んー……ん? クロノ?」
「あ……済まない。名乗っていなかった。クロノ・ハラオウンだ」
「……えっと。オリーシュ・ヴィ・ブリタニアです」

 言いながら、考える。クロノって……あのクロノ君?

「……そっちの子は?」
「フェイト。フェイト・テスタロッサ、です」

 フェイト……ああ!
 脱ぎ魔じゃん! 魔法先生ヌギま!

「……じゃあ、後から来る子って。ひょっとして」

 あんまりにも虫が知らせまくるので、恐る恐る聞いてみる。
 果たして、答えは必要では無かった。俺の背後から、とある女の子の声がしたのである。

「クロノくーん、フェイトちゃーん! 遅れてごめーん!」







 /(^o^)\



(続く)


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