本日はヴィータとシャマル先生で蒐集に行っているので、本日の八神家はNOTゲーム派の守護
騎士とゲーム派する子供たちという微妙な組み合わせだったりする。
「……てか、学校どうしたん」
「や、今日は開校記念日でして。お休みなの言ってなかったっけ」
「あ、そうやったん。てっきり、サボったりしとるのかと」
「人にお金出してもらってるのをサボる程落ちぶれちゃいませんぜ」
「落ちぶれていない割には、話によるとずっとヒモのようだが」
「黙らっしゃい」
とか言いながらやってるのは、4人でできるトランプだったり。他にもモノポリやら人生ゲーム
やら、ウノとか花札とかいろんなものがこたつの周りに散乱してたりする。シグナムたちもゲーム
はできるけど、どっちかというこっちの方が好きらしいので。
「イレブンバック」
「んー? それ、無し! ルール外!」
「なん……だと……じゃあ、階段革命とかエンペラーとかはどうすんだ」
「訳の分からんルールを持ち出さないで貰いたいものだな」
「まったくだな……さて、私の上がりだ。クイーンのペアだ」
ローカルルールの壁は厚かった。てか、世界が変わると大貧民のルールも変わるのか。
「ルールの違いに翻弄されまくりなんですが」
「10戦してまだ1位になっとらんってどんだけ」
「ビリが4回か。次の最下位でシャマルルーレット1回分になる訳だ」
「リアルに生命の危機を感じ始めた。ってか、今回シャマル先生に頼むおにぎりってなんだっけ」
「『ヘルシーおにぎり』やな」
どう考えてもヘルシーになれないのは気のせいではないと思う。
あれだ。「ビタミン豊富!」とか言って、梅干し入りのまわりにレモン汁たっぷりかかってそう
な気がする。想像しただけで口の中が酸っぱい。
「……モノポリに変更しよう」
「3人でカルテル組むけどええ?」
独占禁止法の適用を申請せざるを得ない。
「ぐっぐぐぐ。このままでは負ける。おいはやて、次ビリになれ。さもないと……」
「サモンナイト」
「アティ先生かわいいよね……あれ、違うぞ。何という言葉の罠。恐るべしはやての誘導尋問」
「勝手に嵌っただけだろうが」
「やな」
うるせぇ。シャマルおにぎりぶつけんぞ。
「ぬぬぬ。仕方ない。ここで5連勝とかするしかない! はやて、早くカード配って!」
「でも前回ビリやったから、1位にカード渡さなあかんけど」
「……何枚だっけ」
「強い方から2枚やな」
オリーシュは めのまえが まっくらになった!
で、夜。蒐集に出かけてたヴィータとシャマル先生が、夕飯時から時間をずらして帰ってきた。
しかし帰ってきたはいいのだが、二人ともなんだかちょっと浮かない顔。
「お帰りマイナスイオン。夕飯食べる? 娼婦風スパゲティー作るけど」
「誰がマイナス……って、お、お前! そんなもん作れんのか!?」
「自分で食いたかったので、トニオさんの真似して練習した。残念ながら虫歯は出てこないけど」
「た、食べる! 食べるって! すぐ手洗ってくるから!」
そんなわけで、ヴィータはすぐに元気になった。シャマル先生の方は誤魔化すのが割と上手なの
で、はやてがいる前では気取られずに済みました。
「で、どうしたの? マズいことあった?」
でもって、帰宅した二人だけ遅めの夕食時。ちなみに今日はオリーシュ製のスパゲッティなので、
一応舌にも胃袋にも安心の品となっております。
ヴィータはうまうま言ってて事情を聞ける状態じゃないので、はやてとザフィーラがこたつでゆ
っくりしてる隙に、シャマル先生に聞いてみた。
「すっごくすばしっこいのが居たんです。魔力も大きかったんですけど、取り逃がしちゃって」
「シャマル先生の鬼の手で取り逃がすってどんだけですか」
「一応、あたしも追い込んだんだけどな。素早すぎたんだ」
「口の周りがソースだらけ。前髪にもついてるよ」
「……うるせー」
ティッシュで拭いてやった。味は気に入ってくれたみたいでよかったけど。
「ってか、美味いな! こういう味なんだ」
「チャーハン専門で数年間来てたのに、最近いろんな料理するようになっててびっくりです」
「……今度、作り方教えてもらえませんか? 私もやってみたいですっ」
「食材の名前、ややこしいから頑張って覚えてね。ケッパーとかアンチョビとか」
「イタリアって国のなんだよな。初めて食べたけど、イタリア人は毎日こんなの食ってるのか」
「聞いたところによると、イタリア人は性欲よりパスタを選ぶとか」
ていうか、魔力補給に良かったりするんですよね、パスタ。イタリア人天才だよね。手間かかん
ないし安くて美味いし。
てな感じに話しているうちに、食の力は偉大というか何というか。帰ってきた時はちょっぴり浮
かない雰囲気だったのが、直ってきたみたいでよかったよかった。
「あれ? はやては?」
「風呂だ。シグナムと一緒に入りに行った」
というのはさっきまで横になってテレビを見ていたザフィーラ。のどが渇いたらしいので、お皿
に水と氷と入れてあげた。
「それにしても、逃げられるとはな。信じられん話だ」
「本当です。あとちょっとだったのに」
シャマル先生も心外だったらしく、ちょっと悔しそうだった。そんなに大物だったのか。
「どんな奴だった? まさかポケモンに出てくるやつ? ケーシィとか、すぐ逃げるけど」
「そうだったらはやても連れて見せに行ってるって」
「銀色の、小さくて平べったい魔法生物です。金属生命体みたいな」
ん?
「……それって、もしかしてこいつ?」
取り出したるはお馴染みゲームボーイ。ソフトはドラクエモンスターズ。
画面の中には高経験値のレアモンスター。確かにベギラゴンとかイオナズンとか使うし、MPは
ずば抜けて高いけど……?
「ど、どうして知ってるんですか? これ……えっと、名前……『はぐれメタル』?」
「そ、そう! こいつだ! 何なんだこいつ、火炎やら爆発やら使って……お、おい。どうした?」
「……」
はぐれメタルが あらわれた!
「シャマル先生ピオリム! シグナムは火炎で焼いて! 確かDQ3でドラゴラム効いたから!」
「あたしはどーする?」
「まじん斬r……じゃなく。避けられていいから会心の一撃だけ狙って、全力でぶっ叩いて!」
「おっしゃぁあ! 行くぜアイゼンッ!」
という訳で連れてきてもらって、ただ今はぐメタ狩りの陣頭指揮取ってます。経験値うめぇ。