夏だからといって調子に乗ってアイスやらかき氷やらを食い過ぎたせいなのか、歯が抜けた。
「肉体年齢9歳の身にして差し歯とは……あんまりだ」
「ん? お前、それ乳歯じゃねーのか?」
しかし、ヴィータに言われてハッとした。確かにそうだ。今は子供なんだって。
「舌で触ってみたらちゃんと生えてきてる。よかった」
「どこが抜けたん?」
「上の。ほらここ」
「なるほどー。上の歯は、地面に埋めるんやったっけ?」
「ん」
そういやそんなおまじないもあったなと思いながら、ちょっくら外に出て埋めてくる。
「てっきり虫歯でお亡くなりになったかと」
「アイスばっかり食べてるからですよー」
シャマル先生にクスクスと笑われた。やかまし。
「というわけで、しばらく甘いものは控えます。新しい歯のためにも」
「目の前でダッツ食べたろ!」
「いい性格してやがる。そんなんだからちび狸言われるんだ」
「ちび狸?」
「そんな愛称で呼ばれる未来があって。例の、頭のネジが2、3本抜けちゃった未来」
「なら、もう未来とか変わったから大丈夫やろ」
「BUT... THE FUTURE REFUSED TO CHANGE」
とか言ってると、ホントに冷凍庫から持ってきやがった。クッキー&クリームだし。好物だし。
「ギギギ」
「んー! うまうま!」
「一目見ただけで遊ばれていると分かった。このはやては間違いなくドS」
「うめー! はやて、これすっげーうまい!」
「やろ? シグナムも、どう? その抹茶味」
「美味しいです、とても」
おのれこいつら。
「アイスを食う奴が相手なら、こちらも冷たいものを食わざるを得ない」
「甘いもの禁止はどーしたん?」
「甘くなければ問題なし。ということで、氷を食う」
「残念でしたー。氷はいま作っとるとこや」
「…………あむ」
「にゃああああっ!?」
悔しかったので手に持ったアイスのカップにかじりついた。すると、その近くにあったはやての
手まで口に入った。
「ヴィータ」
「おう」
瞬時に縛られた。
「ある朝オリーシュ・ヴィ・ブリタニアが、なにか気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の
中で一匹の巨大な虫に変わっているのに気付いた」
「ザムザ乙」
縛られて芋虫のように床に横たえられた俺のからだを、寝っ転がったはやてが横合いからつんつ
んとつついてくる。
「流石は文学少女。ごめんなさいほどいて」
「却下。夕飯までそのまんまや」
「ぬぬぬ。ニャッキになってしまった。このまま車に轢かれて、ぺったんこになる運命なのか」
「あれは子供向けなのにブラックすぎる」
「そしてはやては胸ぺったんこすぎる」
「まだ小学生やもん」
だらだらと脈絡の無い会話をしつていると、はやてがダッツの残りを持ってきてくれた。誘惑に
は勝てないので、そのまま食べさせてもらう。うめぇ。
「だがもうすぐ夕飯なので、このくらいにしておこう」
「芋虫の夕飯……キャベツ?」
「キャベツと聞くと、某アニメで片手で真っ二つにしてたのを思い出す」
「……どういう腕力してんだよそれ」
ヴィータがぼそっと言った。アニメキャラに突っ込まれるアニメって何なんだろうか。
「宿題やろ。手だけほどいて」
「しゃーねえな。あ、筆箱持ってくるか?」
「お願い。あとそこのノート取って」
「夕飯は今ので決めたけど、ロールキャベツやからなー」
夕飯まで普通に勉強してました。
「ヴィータとシャマル先生がポケモン追いつくまで、スターフォックス64のハイスコアでも更新しよう」
「お前って結構日常的に不毛なことするよな」
「失礼な」
というのは嘘で、ずっとゲームしてました。