勝手知ったるドラクエ世界がちょうどいいので、図鑑のページを集めに遊びに行くことにした。

「地球の生き物が書き込まれてないけど」

 とか言いながら、ヴィータが白紙の図鑑をパラパラとめくる。今のところ登録されているモンス
ターははぐれメタルだけで、他のページは全部まっさらだ。

「俺がモンスター認定して、図鑑を起動すると登録されるから。人間とか書き込んでも不毛だし」
「思ったより高性能だな……で、これ、完成したら何かあるのか? 景品とか」
「特に何も」

 拍子抜けした顔になる。

「こういうのは集める過程が楽しいんだって。景品目的は無粋かと」
「……なるほど。言われてみっと、確かにそうだ」
「ポケモンも本当の目的は図鑑完成のはずなんだが」
「途中からポケモンリーグ制覇にすり換わってるよな」

 ぱたんと図鑑を閉じた。よっし、と立ち上がり、真っ青な空に向かって伸びをするヴィータ。

「最初はレア度に関係なく埋めていこう。慣れるまでは強いモンスターに来られても困るし」
「こいつら連れてるんだから困らないと思うけど」

 振り返るとそこには、うにうにと背伸びをするはぐりんたち。
 「襲われてもジゴスパーク3連発で蹴散らしてやんよ」と言っているらしい。そこらのモンスタ
ーに対しては明らかにオーバーキルだが、久々の運動のため気合いが入っているようだ。

「じゃあ行こうぜ。はやてたち、まだすごろくするみたいだし」
「通信便利だな」
「便利だろ」

 ということで出発。ヴィータとはぐりんズしか面子がいないのは、他の皆がすごろく場に遊びに
行っているからなのだ。
 おっきな方のリインはかなり心配そうにしていたが、人数が多いと魔物が逃げる可能性があるの
で、たまの遠出を楽しんでもらうことになった。ヴィータが同伴と聞いて安心していたし。

「どうしてヴィータなのかというと、以前すごろくやりすぎて飽きたからなのです」
「う、うるっさいな!」

 ぐだぐだと話をしながら、てけてけ歩きだす。辺り一帯は心地よい風の吹く大草原なので、モン
スターのいそうな山岳地帯や森のある方へ移動することになる。

「ヴィータ。ヴィータ。こんなん見つけた」

 と、角の生えたウサギが近くに寄って来たので、首の後ろを捕まえてみた。ぷらんぷらーんと大
人しく吊られているのがなんともシュール。

「おお、ちゃんと『いっかくうさぎ』でなく、『アルミラージ』と出た。レア度は下から2番目か」
「う、ウサギじゃん! あたし、本物初めて見た!」
「本物? ああ、帽子にぬいぐるみつけてたか。はやて作の」
「そうそう! こいつが……モンスターだからか、ぬいぐるみのウサギよりちょっとでかいな」
「その人形、切り離して爆弾に使えるのかと思ってた」

 気にくわなかったらしく、ヴィータは首をくいくいひねり、編んだ髪をべしべしぶつけてきた。
鼻に当たってけっこう痛い。

「いたいです」
「あたしがはやてのプレゼントをそんな風に使う訳ないだろっ」
「はやてが仕込んでいた可能性は否定できまい」
「一年間爆発しない爆弾って何なんだよ」
「負けた」
「へへ、勝った」

 屁理屈マンなのに、屁理屈勝負に負けてしまった。あと全く関係ないのだが、屁と屈って漢字似
てるよね。

「で、こいつはなんで大人しくしてるんだ? モンスターは人間を襲うんじゃないのか?」
「確かに。その辺どうでしょう、うさぎさん」

 地面に下ろしてやって訪ねてみるも、角の生えたうさぎさんはきょとんと首をかしげるばかり。
わからないようです。

「こ、こいつ、連れて帰りたいっ……」
「強制連行は却下。俺らが去ってもついてくる場合のみ」

 そんな仕草が琴線に触れたらしいヴィータ。
 とりあえず宥めて、その場を立ち去ってみた。しかしうさぎさんは動かず、その場に立ち
尽くして、こちらをじっと見つめるのみ。

「……」
「俺たちの匂い覚えてるので、見かけたらぴょんぴょん寄ってくるから。また今度な」
「…………うん」

 珍しく落ち込んでるヴィータが見れました。超名残惜しそうにしてて、気の毒なので慰めた。





「実はモンスター3匹連れて歩いてるから、許容オーバーだっただけなんじゃ」
「さ、最初に気付けよっ! この馬鹿この馬鹿この馬鹿っ!」

 馬鹿呼ばわりしつつ、はぐりんたちを投げつけられた。べちべち当たった。いたいです。



(続く)



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