教会に行く前日。支度も終了してやることがないので、はやてと何かして遊ぼうと思う。ヴォルケンズは
ヴォルケンズでボードゲームやらに熱中しているので、あんま邪魔しない方がいいだろう。

「暇なので、二人で『くぁwせdrftgyふじこ』の発音を検討しようか」
「いま自分でゆーたやろ」

 いきなり終了した。あとはやてなのに指摘が真っ当すぎて、やるせない気分になる。

「子音ばっかなのによー言えるなぁ」
「いっつも舌ばっか回してるからだ。ついでに言えば頭も回るぜ」
「悪い方向にか」
「良い方向だろ」

 良い悪いで小競り合う。なかなか決着がつかないでいると、姉妹でお風呂に入っていたリインたちが
上がってきたので聞く。妹の方に。

「むー、む、難しいですっ。二つの逆回転の渦により、リインの頭が2つに裂けてしまいます!」
「プラナリア?」
「さ、再生はできません! トムさんはたまに凄く鬼畜です!」
「ドSだもの みつを」
「だ、断言しました! 戦慄を禁じ得ません! 痛くするのは好きですか? 我慢するリインにグッときますか?」
「グッとくるかはわからないが、グッとガッツポーズして応援してあげよう。がんばれ」
「応援されてしまいました……もうこれは、日常的に『ひぎぃ』を言うところから慣れていくしか!」

 調子に乗り続けていると、はやてに肘の出っ張ってるところをたたかれた。無言のまま「ひぎぃ」の顔になり、
リイン姉妹にとても怖がられる。

「化け物の顔やな。プレデター?」
「一気に人間の範囲を通り越した気がするんですがその表現」
「コア摘出してあったりする時点でがけっぷちだと思うんやけど」
「……いや、まだだ。まだなんとか、指一本引っ掛かってるはず」
「それ体は崖から落ちとるよな」

 墓穴を掘った。がっかりする。

「おお、がっかりしとる。陰気がうつるから止めれ」
「がっかり星人なので止めるとか不可能」
「うっかり星人?」
「ちょっくらうっかり星まで行ってくる」
「今度はちょっくら星人か」

 俺の出身が定まらないどころか、進化の方向がダメダメな気がする。

「うっかり風呂に入り損ねていたので、ちょっくら行ってくる」
「うっかりのぼせやんよーに」
「気をつけてくださいっ。うっかり足を滑らせないように!」

 ちょっくら風呂に向かう俺だった。

「さささささささむい! シャワーの給湯電源切れてんぞこれ!」
「あ……わっ、わたし、最後だと思って……!」

 リインが本日のうっかり星人でした。





 凍えるような寒さにびっくりしつつも、浴槽のお湯で事なきを得て上がる。
 上がると、テーブルでリインが待っていた。ヴォルケンズはもう寝たそうな。はやてとちっちゃいリインはまだ
寝ておらず、その手元を凝視している。

「手、ここに」
「ん? ……おお、メラじゃないか。これはいい」

 両の手の間で、小さな火がゆらゆらと揺れていた。お詫びのようなので、向かいに座ってありがたく
温まらせてもらう。

「いいな。メラいいな。旅行のときに役立ちそうだ」
「メラの必要な旅行って……あ、冒険?」
「そそ。はぐりんたちのギラはビームみたいだから、使い勝手がいまいちなのですよ」

 ちなみにはぐりんたちはもう寝てます。確かこたつの近くに置いた座布団の下で、越冬する虫みたいになってるはず。

「リイン2はヒャドが得意だから、年中いつでもかき氷が食えるな」
「そっ、その発想は……! シロップを、シロップと練乳を用意しないと!」
「搾ってみよか! ちょうど搾りがいのありそうな方がおるし!」
「今ここでとな。望むところだっぜ!」

 大きなリインを凝視しつつ、はやてと俺が口々に言う。
 しかしシャマル先生ならおもしろいリアクションが見られるはずだったのが、リインは不思議そうに
こちらを見て首をかしげるばかりだ。俺もはやても、なんだかとても悪いことをした気分になる。

「こっ、困りました。リインをいくら雑巾しぼりしても、多量の水分とタンパク質しか……」
「……なにやら勘違いしているリイン2だが、そのおかげで助けられた気がしなくもない」
「あれ? か、感謝されたのは嬉しいですが……わわわわっ、頭を撫でられています! なんということでしょう!」
「匠の技で一時間撫で上げた結果、劇的に頭蓋骨が陥没する予定です」
「なんということでしょう!」

 匠の技を見せつける前に、ちっちゃいリインが姉の胸の中に逃げ込んだ。

「嘘ですよ」
「安心しました!」

 安心されたので、しばらくまったり温まった。それから会話がないため、かち、かち、と時計の針の音だけが聞こえる。
 手元にはあたたかい炎。物語で出てくる感じの家の、暖炉みたいでいいなぁとぼんやり思った。

「教会もこんな感じなんだろうか。こう、おとぎ話の中の建物のような」
「ステンドグラスとかあるんやろなー……こう、東京タワーくらいのパイプオルガンがあったりとか!」
「甘いな。古今東西から取り寄せたステンドグラスで、壁面が全部透明になっているにちがいない!」
「地震来たら崩れるやろ」
「そこはほら。魔法でなんとか……リイン、できる?」
「できない」

 その後も教会ってどんなとこなんだろうとあれこれ議論してから、居間に敷いた布団でみんなひっついて眠りました。






「お近づきのしるしにチャーハンお届けにあがりました!」
「え? えっと……ど、どうしてフライパンごと……?」
「*おおっと バナナのかわ*」
「っきゃぁああああっ!?」

 別にどんな建物でも、やることは変わらなかった。後ではやてにすっごい怒られて、防御が間に合わなかった
教会の金髪の人(名前忘れた)は苦手意識をもたれて、付き人には追いかけまわされた。



(続く)

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書くキャラをはじめから絞ってみた。
作者の事情により更新遅いですごめんよ



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